3話 火を放つことが出来るようになった】
俺達は工業都市カシミア王国へ入国した。
この国でも入国審査は無く、すんなりと入ることが出来た。
しかし、すんなり入れる事は良い事ばかりではなかった……
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「おい! そこのあんた! アスラン王国で暴れてたオークをやっつけたんだろ? オイラと勝負するっす! 勿論、負けた方が下僕になるっす!」
背後から声を掛けられ振り返ると、謎の獣人が下僕を賭けた勝負を仕掛けてきた。
「あのなあ、お前一体何なんだよ。何でアスラン王国の話を知っている? そもそも俺はそんな勝負受けな……」
「この勝負、貰ったっす!!」
俺が喋っている間にも、謎の獣人は鋭い爪を振り翳してきた。なんて奴だ。
そして、頭に来たのでついやってしまったのである……
「お前は…… 人の話を…… 聞けぇ!!」
頭に来た俺は、手から30メートルも有ろうかという巨大な火柱を謎の獣人に向けて放った。
火柱は一瞬で消滅し、謎の獣人は地に頭を付け痙攣している。
気まずくなった俺達は逃げる様に踵を返すと……
「師匠! オイラを弟子にして欲しいっす!」
背後から声がする。
振り返ると、先程まで痙攣していた謎の獣人は、俺に向かって尻尾を振りながら何度も頭を下げている。
その様子にフォンとオルガは目を丸くする。
「よし、ではお前の名前は何だ?」
「はい! オイラは犬の獣人、ダルスというっす!」
「わかった、ダルス! 師匠からの命令だ! 金輪際俺達の前に現れるな! 良いな!」
「そんなのあんまりっす! 勝負に負けたのに、そのまま尻尾を巻いて帰るなんて、負け犬のすることっす! オイラは誇り高き犬の獣人っす! 弟子にしてくれるまで離さないっす!」
ダルスと名乗る19歳くらいの犬の獣人は、先程とは別人のような態度で俺の服を掴み、離そうとしない。
俺は困り果て、フォンやオルガに目線を向け助けを求める。
するとフォンが一歩進み、腰に手を当てた。
「ちょっとあんた! 一体なんなんだわさ! 黙って聞いてれば好き放題言って、トール様はあんたの師匠じゃないのよ! さっさとどこかに行きなさい!」
(良いぞフォン! もっと言ってやれ!)
俺は心の中でフォンを応援したのだが……
「師匠のお名前はトール様と言うんですね! トール様! オイラを弟子にしてくださいっす!」
だめだ、火に油を注いだだけだった。
そんな俺に更なる危機が差し迫る。
「おい、お前! ちょっと城まで来い!」
「えっ? おい、今度は何だよ!」
俺は数人の兵士に取り囲まれ、ダルスを引き剥がされると城へと連行されていく……
※ ※ ※
「ちょっと! あんたがバカな事を言い出すから、トール様が連れて行かれちゃったじゃない! どうしてくれるんだわさ!」
「オイラのせいかよ! 狐のくせに偉そうな事を言うんじゃないっす!」
「なんですって! これだから犬と話すのは嫌なんだわさ! 周りに迷惑ばかり掛けて!」
「なんだと! オイラは師匠へ弟子にしてくれと頼んだだけだぞ!」
フォンとダルスが言い争いを始めるが、オルガは冷静に提案した。
「とにかく城へ行こう! このままだとトール様はこの国から追放されてしまう! あるいは死刑かもしれん……」
オルガの提案に二人の口論は落ち着く。
「そうね! トール様に何かあったら大変よ! すぐに城に向かうんだわさ!」
「師匠はオイラが助けるっす!」
そして二人は顔を見合わせると
「「ふんっ!」」
と顔を背けた。
※ ※ ※
俺は兵士に連行され、城の中へ入った。
長い廊下を抜けた先に、小太りの色白な男が立っていた。
歳は35歳くらいだろうか。
「よく来たね! ぼくはカシミア・スコットン、この国の王様だよ!」
おっとりした口調で話すこの男は、この国の王様らしい。
というか、自分で王様って言っちゃってるし…… とても頼りなく感じる。
「あの…… 俺はどうなるんですか?」
「実はね! 君に頼みがあるからここに呼んだのだよ! さっき君は炎を操っていたね。その力を貸して欲しいんだ!」
あっ、この展開は何処かで見た事がある気がする。
あの女王様と同じ事を言い出すんじゃないだろうな?
「えーと、頼みというのは……」
恐る恐る聞いてみた。
いや、聞かなくてもわかるが……
「強化スライムの被害が多発していてね。君に強化スライムの討伐を依頼したいんだよ! 報酬は金貨100枚でどうだろう?」
うん、知ってた。
今回は魔王の討伐ではないだけマシだ。
しかし、強化スライムというのは本当に世界各地で害を齎しているようだな。
そして、報酬の金貨100枚は破格だろう。
魔王討伐と同額とは。
またフォンの奴が倒れそうだ。
「わかりました。その依頼引き受けましょう」
「受けてくれるんだね! じゃあ、討伐が出来たら報告に来てね!」
この依頼は美味しい。
俺はこの王様の金銭感覚がズレているのだと思った。
しかし、それは読み違いだということを、この時はまだ知る由も無い……
※ ※ ※
時間は少し巻き戻り、フォン、オルガ、ダルスは城へ潜入しようとしていた。
「ちょっとあんた! 押さないでよ! 見つかるんだわさ!」
「お前こそ押すなよ! 見つかったら師匠を助けられないっす!」
オルガはフォンとダルスを横目に見ながらも、トール救出の為に城内の兵士の様子を伺っている。
「よし、行ったぞ! 中へ入るぞ!」
オルガの言葉にフォンとダルスは互いに睨み合いながらも城内へと侵入した。
そして、長い廊下を抜けると……
「侵入者だ! 応援を呼べ! 逃すな!」
三人が辿り着いた部屋は、トールが連れられた部屋とは真逆に位置する。
そして、運悪く兵士と鉢合わせしてしまった。
「見つかったわさ!」
「まずいっす!」
「オレとしたことが!」
兵士達が集まり、三人を取り囲む。
そして、兵士の一人がフォンに向かって斬り掛かる。
「この獣人風情が!」
すると、兵士の言葉にダルスの目つきが変わり、爪を伸ばして兵士を抑え付けた。
「テメェ! もう一度言ってみろ! その腕切り落としてやろうか!」
「ああっ、ああああっ……」
あまりの迫力に兵士は失禁し、全員の動きが止まる。
フォンはダルスの反応に内心は感心しつつも、表には出さなかった。
「やめろ! そこまでだ!」
その声に全員が振り向くと、背後にはトールと国王カシミア・スコットンが立っていた。
※ ※ ※
時はトールが強化スライム討伐の依頼を受けた直後へ遡る。
「じゃあ、討伐が出来たら報告に来てね!」
「わかりました。仲間も心配していると思うので、俺はこの辺りで……」
俺が城を出ようとした時、兵士が慌ただしく叫んだ。
「侵入者です! 三匹の獣人が城内へ侵入しました!」
俺は三匹という言い回しに違和感を感じつつも、侵入者はあいつらだとすぐにわかった。
俺の様子を察したようで、王様は兵士に命令する。
「獣人の元へ案内して。すぐに行くから」
俺と王様は現場へ向かう。
すると、三人は数人の兵士に囲まれ、一触触発の状況だった。
そして、兵士の一人が叫びながらフォンへと斬りかかる。
「この獣人風情が!」
ダルスは狂気に満ちた顔で兵士に襲いかかる。
今回の騒動で俺が捕まったと勘違いしたのだろう。
ここで兵士を殺してしまったら、それこそ捕まってしまう。
危機感を持った俺は、ダルスを止めに走る。
「やめろ! そこまでだ!」
俺はダルスの腕を掴むと、ダルスは落ち着きを取り戻す。
「へっ! 命拾いしたな!」
ダルスは兵士へ静かに呟くと、俺達は胸を撫で下ろし、その場は収まる。
しかし、この国には獣人差別があるのだと知った瞬間でもあった。
※ ※ ※
俺達は城を出ると、ダルスが俺に向かって頭を下げる。
「師匠! すいませんでしたっ! オイラのせいで捕まっちゃって……」
そうだ、こいつは俺が捕まったと勘違いして助けに来たのだ。
ちょっと嬉しかった。
だから言ってしまったのである……
「ダルス、お前本当に仲間になりたいのか?」
「ちょちょちょっと! トール様! まさかこいつを仲間に入れるんですか!?」
フォンが血相を変えて俺に詰め寄ってきた。
すると、ダルスが改まってフォンとオルガの前に立つ。
「すまなかった! オイラはこんな性格だからよ、先を見た動きができねぇ。でも、トール様には何かあったかいものを感じるんだ。二人もそう思うだろ?」
ダルスが俺に跪く。
「師匠、いやトール様! オイラは一生トール様に尽くします! どうか、仲間に入れてください!」
俺はこの瞬間、ダルスを仲間に入れようと決めた。
フォンとオルガは俺の方を向き、様子を伺っている。
「フォン、こいつは考えが甘いだけで、悪い奴じゃないと思うんだ。俺はこいつを仲間にしようと思う。どうだ?」
するとフォンは少し照れた顔で口を開く。
「トール様がそう言うなら、仕方ないんだわさ!」
フォンはダルスが仲間になることを認めた。
「オルガ、良いだろう?」
オルガは目を瞑る。
「オレはトール様に従います!」
オルガもダルスが仲間になることを認めた。
「よし! 今日は宴だ! ダルスを歓迎して何か食いに行くぞ!」
「アタシは普段食べられないものが良いんだわさ!」
「オイラは肉が食いたいっす!」
「オレはなんでもいい。新たな仲間を歓迎する!」
各々の意見を述べ、宴の前に心を躍らせた。
しかしその直後、事件は起きた。
「スライムだ! 強化スライムが出たぞ!」
声の元へ走ると、俺達は衝撃の光景を目にする。
複数の強化スライムが店の品物を荒らしながら、街の人達に襲いかかっていたのである。
そして強化スライム達の中心に、一匹のガーゴイルが指示を出していた。
「おい、お前等やめろ!」
俺は咄嗟に叫ぶと、ガーゴイルは俺達の方を向く。
「オイラはガーゴイルのガイル! お前達、よくもプルトニー様の邪魔をしてくれたッピ! ここで始末してやるッピ!」
ガイルと名乗るガーゴイルが強化スライムに指示を出すと、俺達に襲いかかってきた。
フォンはガイルを見ると、狂気を含んだ笑みを浮かべる。
「あんたが…… あんたがやったのね…… 村を…… フィンを……」
俺は狐の獣人の村の事件を思い出した。
村人の話では、不審なガーゴイルが絡んでいたという。
ガイルが絡んでいることは間違いないだろう。
フォンは大きく跳躍し、ガイルへと殴り掛かるが……
「お前は邪魔だッピ!」
ガイルはフォンを尻尾で薙ぎ払い、地面に叩きつけた。
僅か一撃でフォンが蹲る。
「フォン! おい、フォン!」
俺は叫ぶがフォンは何も答えない。
危機感を抱きつつ強化スライムの様子を伺うと、オルガやダルスへと襲いかかった。
ダルスは鋭い爪で強化スライムを切り裂き、オルガは槍を突き刺す。
しかし強化スライムは怯むことなく二人へと攻撃を続ける。
「うわっ!」
「ぐっ!」
そして、攻撃に耐えきれず倒れてしまった。
その後も執拗に二人への攻撃を続け、ついに二人は立つ事すら出来なくなる。
俺はその残虐さに怒りを覚え、身体の内側から熱く湧き上がるものを感じる。
「よくも、俺の仲間を…… お前等、殺してやる!」
そして、強化スライムへ手を翳し炎を出そうとした。
しかし、何故か何も起きない。
その間にも強化スライムの攻撃は続き、オルガとダルスはボロボロになっていく。
俺は身体が冷たくなるのを感じながら焦る。
そしてガイルはフォンへ止めを刺す為に尻尾を振り上げた。
「やめろー!!」
俺は全力で叫んだ。
その瞬間、身体の中で爆発が起きるのを感じ、辺り一帯が激しく燃え上がると、街を上から眺めるような視点に切り替わった。
燃え上がる炎は手足の様な感覚があり、俺の意思で火力を変える事も出来た。
一瞬にして炎の扱いを理解する。
そして炎をガイルと強化スライムに集中させた。
「ッピ! 何だこの炎は! 消えないッピ! まずいッピ! お前等、退却だッピ!」
ガイルはそう言うが、俺は逃がすつもりはない。
火力を上げ、炎は強化スライムを焼き尽くす。
そして、跡には小さな消し炭が残されていた。
「ぎええ! 熱い! 熱いッピ! オイラに炎は効かないのに、何でこんなに熱いッピ!」
ガイルも炎に晒されて、もがき苦しんでいる。
炎が効かないと言っているが、ダメージは受けているようだ。
更に火力を上げ、ガイルを焼き殺そうとしたが……
「オイラを! 舐めんなッピ!」
ガイルは炎から抜け出し逃げて行った。
逃げるガイルを横目に、俺は人型に戻ると三人の安否を確認した。
幸い死んではいないようだが、意識もない。
「フォン! おいフォン! しっかりしろ!」
「ううっ、トール様、アタシ……」
フォンは意識が戻ったが動けそうにない。
「オルガ! 大丈夫か!」
「ああ、大丈夫だ……」
オルガは深手を負っているが、持ち前の頑丈さで起き上がった。
「おい、ダルス! おい!」
「だっ…… 大丈夫っす!」
ダルスは傷が酷いがなんとか一命は取り留めたようだ。
三人の無事を確認し、治療の為に俺達は宿屋へと入る。
※ ※ ※
「もっ、申し訳ありません、プルトニー様! またしても、旅の者に邪魔をされて、作戦は失敗しましたっ! まさか全身を炎に変えて攻撃してくるとは思わなかったッピ!」
ガイルは全身に大火傷をしながら“無駄に広い”部屋の隅に座るプルトニーの前に跪き、作戦の失敗を報告した。
そしてプルトニーは驚愕の声を上げる。
「ほう! 奴は全身炎化したか! 面白い、実に面白い!」
プルトニーは立ち上がり、ガイルを見下ろす。
「いいだろう。私自ら出向こうではないか。そのイフリートに……」
そして、ガイルと共に部屋を出る……
いつもお読みいただきありがとうございます。
気になる点、辻褄の合わない点などありませんでしたか?
質問・矛盾などがありましたら、お気軽にコメントにてご指摘頂ければと思います。
次回もお読み頂ければ幸いです。
さて、今回までの戦闘力です。
トールは全身炎化により大幅に上昇しました。
トール 12000
フォン 5000
オルガ 4500
ダルス 5000
強化スライム 4000




