2話 俺はどうやら転生したらしく、手から
物語の何処かに牛なわれた二つの秘宝を忍ばせております。
発掘された読者様は、誤字報告にてご指摘ください。
オルガが無事に仲間になった。
そして、もう一つ忘れてはいけないものがある。
俺は、小袋を取り出し中身を覗き込んだ。
「★☆キラ〜ン☆★」
ま、眩しい!
小袋には光り輝く金貨がギッシリと詰まっていた。
フォンは袋の中を覗き込むと、目が丸くなっている。
「こ、こんなに沢山の金貨、見たことないんだわさ! こんなに…… こんなに……」
金貨に光が反射して、フォンの顔も輝いていた。
しかし、そんなに驚く程の価値なのか?
気になったので聞いてみた。
「フォン、金貨1枚でどのくらいの価値があるんだ?」
フォンの説明によると……
金貨1枚=銀貨100枚
銀貨1枚=パンが1つ買えるそうだ。
日本ではパンが1つ100円くらいだから
銀貨1枚=100円相当になるだろう。
で、金貨100枚はいくらになるかというと……
「100万円相当!?」
俺は咄嗟に叫んでしまった。
すると、フォンは不思議そうな顔をしながら質問してきた。
「ひゃくまんえんって何だわさ?」
そうか、ここは異世界だった。
俺の金銭感覚を改めないといけないなと反省する。
「ああ、俺が居た世界の通貨だよ。銀貨1枚で100円なんだ」
俺の説明にフォンは納得し、オルガは不思議そうに一連の遣り取りを眺めていた。
※ ※ ※
色々とあったが、俺達は観光都市アスラン王国の外れにある世界保守連盟の本部に到着した。
団地のような建物が建ち並び、小さな街のようになっている。
建物の中へ入り、受付に着くと無表情で対応をする職員に背筋が凍る。
周囲を見回すと、全ての職員が無表情で作業をしているのだ。
「えーと、狐の獣人の村が強化スライムに襲われたのだが、報告はこの窓口で良いのか?」
「はい……」
俺は経緯を説明し、何か情報が無いのかと尋ねると……
「きょうかすらいむの ひがいは かくちで かくにんされています すらいむが まちでかくにんされるときは いつも むれであらわれています ぼうそうする じゅうじんや まものの ひがいも どうように はっせいしています……」
身震いしそうなほどに抑揚の無い発音で被害状況を教えてくれた。
俺達は軽く礼を言い、逃げるようにその場を後にする……
「おい、なんだよあそこは! 何であんなに気持ち悪い人間しか居ないんだよ!」
「アタシにもわかんないわさ!」
「オレはあんなに生気を牛なった人間を見たことが無いぞ!」
各々が感想を口にする。
俺は建物を振り返り、何かが起きているのは間違いないと悟った。
※ ※ ※
俺達は再び観光都市アスラン王国の城下町へ戻ってきた。
この世界に転生してから酷い目に遭ってばかりである。
そんな事を考えていると、ふと気が付いた。
ここは観光都市アスラン王国。
そう、観光都市なのである!
フォンは妹を亡くし、心の傷は癒えていないだろう。
オルガも色々あったし疲れただろう。
俺が二人を労ってやらねばならない!
断じて俺が観光したいわけではない!
フォンとオルガの為だ!
そう、フォンとオルガの為…… あと俺の為。
「この辺りで休憩するか! 色々あって疲れただろう。折角観光都市へ来たんだから、今日は観光をしようじゃないか!」
俺の提案に二人は戸惑ったが、納得してくれた。
どうやらこの世界には電気が無く、魔法を照明として使っていた。
科学レベルは地球よりも低いように見える。
「この国は文化財と温泉が有名なんだわさ! 特に文化財は芸術的で、ずっと見ていても飽きないんだわさ!」
と、フォンが嬉しそうに説明する。
フォンは文化財に興味があるらしい。
俺は興味無いんだけどね……
フォンは四角い石碑、扇型のオブジェ、ピエロの顔のような白いモニュメントの前で解説を始めた。
「この石碑は…… が光ると…… なんだわさ!」
ほうほうほう。
「このオブジェは…… 数が…… なんだわさ!」
へー、そーなんだー
「この顔は…… 中央の…… なんだわさ!」
おっ、おう。
俺は笑顔で頷いた。
フォンが何を言っているのか全く理解出来ない。
ふと横を見ると、オルガが微動だにしない。
顔を覗き込むと、立ったまま寝ていたのだ。
器用な奴である。
フォンの長い長〜い説明が終わると、俺は左手から小さな火の粉を放ち、オルガの顔にぶつける。
「ぶぎゃ!」
オルガは飛び起きると、左右を見回している。
「オルガ、あなた今寝てたでしょ?」
フォンに詰め寄られ、オルガが冷や汗をかいているが、俺の知ったことではない。
さらにフォンが詰め寄り、だんだんとオルガが涙目になる。
可愛そうに思えたので、俺は少し助け船を出す。
「フォンは凄いな。出会ってからまだ数日しか経ってないけど、お前の博識ぶりには驚いたよ」
するとフォンは両腕を腰に当て胸を張る。
「ふふん! こう見えてアタシ、村一番の物知りって言われてたんだわさ!」
ほほう、それは凄い。
凄いのだが、言い方がイラっとしたので俺は再び火の粉を放ち、フォンの鼻を目掛けて弾いた。
「ぷきゃ!」
フォンは口を少し尖らせて俺の方を向く。
「もーっ! トール様ったら、知らない!」
俺はなんだかおかしくなり笑い出す。
釣られてフォンも笑い出し、オルガも笑い出した。
俺はそんなくだらない遣り取りを楽しむと、こんな世界も悪くないなと思えた。
おっと、忘れちゃいけないものがもう一つある。温泉だ。
俺達は温泉へ向かい歩き出した。
温泉は男女別になっているが、湯船の中央にある大きな岩で別けられている。
つまり、覗こうと思えば覗けるのである。
そうとわかればやる事は一つだ。
幸い、温泉には俺達3人しか居ない。
つまり、岩の向こうにはフォンしか居ないのだ。
俺はそーっと岩の隙間から顔を出し、もう少しでフォンが見えそうになったその時!
「っぱーん!」
と俺の鼻先に何かが当たり、意識が薄れていく……
「うっ…… ううっ……」
俺はゆっくりと目を覚ますと、右にはオルガが苦笑しながら団扇で俺を扇いでくれていた。
どうやら部屋まで運んでくれたようだ。
左側にはフォンが少し顔を赤くしながらこちらを見ている。
気まずくなった俺は再び目を閉じて意識を手放した……
翌朝、俺達は狐の獣人の村へ向けて出発する。
フォンを見ると、いつもと変わらない様子で安心した。
復路は強化スライムからの襲撃もなく、すぐに狐の獣人の村へ到着した。
※ ※ ※
――フォンは自室の椅子に座ると、机に頬杖を突きながら大きな溜息を吐く。
強化スライムの被害を世界保守連盟に報告する為に、トール様の付き添いでアスラン王国へ行ってきたんだわさ!
アスラン王国ではいろいろあったけど、報告は無事終ってやっと家に帰ってきたんだわさ!
アスラン王国でのトール様ったら酷いのよ!
アタシがお風呂に入ってる時に、覗きに来るなんて失礼しちゃうんだわさ!
足元の小石を投げたら、トール様の顔に当たって倒れちゃたの。
さすがにやりすぎたかしら?
でも、覗く方が悪いんだわさ!
オルガはアタシが頑張って説明してるのに、立ったまま寝ちゃったの。
「ぶぎゃ!」
なんて寝言まで言って…… 本当に、失礼しちゃうんだわさ!
そんな旅だったけど、アタシの役目はもう終わり。
二人はもうすぐ魔王シェリーの討伐に旅立つの。
フィンが強化スライムに殺されてから、こんなに楽しい想いが出来るなんて思わなかったんだわさ……
フィン、もう会えないのね……
※ ※ ※
「お姉ちゃん、今日は何するの?」
狐の獣人の村の付近の森でフィンがフォンに話し掛けた。
「今日は木の実を取るの。この辺りは美味しい木の実がいっぱい生ってるんだわさ! 見た目は石だけど、殻を剥いたら美味しいんだわさ!」
フォンが大木に指を差している。
「お姉ちゃんは何でも知ってるんだわね!」
フィンの言葉に気を良くしたフォンは、両腕を腰に当て胸を張る。
「お姉ちゃんは知らないことなんて無いんだわさ! 」
「あたしもお姉ちゃんみたいに何でも知りたい! あの木の実、どんな味がするのか食べてみたいんだわね!」
フィンはフォンの指差した大木を登り始める。
そして木の実の前まで辿り着くと、ゆっくりと木の実を摘み取った。
その時、フィンは足を滑らせ地面に向けて落下する。
「危ない!」
フォンは強靭な脚力で地面を蹴り、フィンを抱えると池へ転がり落ちた。
「大丈夫? 怪我はない? あんなところから落ちたら怪我じゃ済まないんだわさ……」
フォンが優しくフィンを抱きしめると、フィンは泣きながら顔を上げた。
「お姉ちゃん、足から…… 怪我したの? ごめんなさい! ごめんなさい!」
フォンの腕や足は、地面を転がった衝撃で傷付き真っ赤に染まっていた。
「フィンが無事ならこんなの大したことないの。 無事で良かったわさ。本当に良かったわさ……」
フォンはフィンの背中を撫でる。
フィンがそれに応えるように、フォンを強く抱きしめた。
「お姉ちゃん、一緒に食べよう!」
フィンは木の実を差し出すと、フォンが石を使い木の実を叩き割る。
木の実を半分フィンに渡しすと、嬉しそうに木の実を頬張る。
フォンは池の水面に映る自分の顔に何かを感じ、暫し見つめた。
「お姉ちゃん、帰ろう! 暗くなってきたんだわね!」
フィンはフォンの手を引いて歩き出す。
「……」
何かを感じたフォンは立ち止まると振り返った。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「なんでもないの」
二人は再び歩き出し、家路につく。
※ ※ ※
「行かなくちゃ……」
フォンの頰に涙が伝い、静かに顔を上げると部屋を後にした。
※ ※ ※
俺は村長のフォルの元へ世界保守連盟へ報告した旨や、観光都市アスラン王国で起きた事を伝える。
その後、フォンへ別れの挨拶をする為に声を掛けようとすると……
「トール様! フィンが殺されて何もしないなんて嫌! アタシも連れて行って!」
フォンは強い眼差しで俺に訴えかけてきた。
気持ちは痛い程分かる。
俺もその現場に居たのだから。
しかし、フォンは村長の娘だ。
そんな簡単に村を抜けられるわけがない。
どうしようかと村長のフォルへ目を向けると……
「トール殿! フォンを連れて行ってやってくれぬか? こう見えて力が強く、頭も良い。きっと、トール殿の役に立ってくれるでしょう」
フォルはフォンへ視線を向けて頷き、フォンも応えるように頷いた。
「トール様! お願いします!」
フォンは覚悟を決めたようだ。
俺に断る理由は何もない。
「おう! また、よろしくな!」
俺達は再びフォンを迎え入れると、魔王シェリーの討伐へと旅立つのだった。
※ ※ ※
魔王シェリー・スカイラインを倒す為、俺達は魔王を目指して歩いていた。
目指して…… ん? 魔王シェリー・スカイラインってどこに居るんだ?
よし、こんな時はフォンに聞こう。
「なぁ、フォン。魔王シェリーってどこに居るんだ?」
フォンは足を止め、呆れた顔で俺を見る。
「えっ、まさかトール様! 何も知らないで村を出てきたんだわさ?」
うん、そうだよ。
調べてないなんて言えるわけないじゃないか……
「いや別に、調べてないなんて事はないんだ。ゆっくりと探そうかなと思っただけで……」
「へえ、調べてないの……」
まずい、口が滑った。
刺さるような冷たい視線を感じ、フォンに目を向けると……
フォンは笑顔で俺を見るが、目が笑っていない。
オルガは我関せずといった様子で俺に目線を合わせない。
「すまん、調べてない」
素直に白状した。
また顔に何かが飛んでくるのは御免だ。
そしてフォンは大きく溜息を吐く。
「はぁ…… 魔王シェリー・スカイラインは天空都市スカイラインを治めているんだわさ! 天空都市スカイラインはこの先にある工業都市カシミア王国を超えたところにあるんだわさ!」
つまり俺達は工業都市カシミア王国を目指しているわけか。
ここはフォンに道案内を任せよう! それがいい。
「じゃあ、フォン! 道案内よろしくな!」
「もーっ! しょうがないんだわさ!」
フォンは諦めたように歩き出し、俺達はその後に続いた。
※ ※ ※
「へっ! このク〜ルなオイラが世界最強だってことを、この国の奴等に思い知らせてやるっす!」
右耳に傷を付けた犬の獣人は、自信に満ちた表情でカシミア王国へ入っていった。
いつもお読み頂きありがとうございます。
次回も是非、お読み頂ければ幸いです。
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