22話 地球のオレと異世界の俺
視点がわかり難いとご指摘を頂きましたので、一部に“強調”を追記致しました。
俺は城を出ると、大きく溜息を吐いた。
「はぁ…… まいったなぁ。俺は魔王なんて成りたくないのに……」
仲間達は顔を見合わせると、ダルスが口を開く。
「オイラはトール様が魔王になるのは賛成だけどな。仲間想いだし、人間も助ける理想の魔王っす!」
「ダルスの言う通りだわさ! トール様こそ、魔王に相応しいんだわさ!」
二人の言葉にオルガとドラムが頷く。
「そんな簡単に言うなよ。魔王に成る時にお前達を殺すかもしれないんだぞ……」
「大丈夫だわさ! アタシが絶対にそんな事させないんだわさ!」
「でもお前、九尾化はまだ使い熟せてないんだろ? そんな状態で大丈夫なのか?」
「うっ…… だっ、大丈夫だわさ! これからダルスと修行する約束をしてるんだわさ!」
「えっ修行? オイラそんな事一言もごご……」
ダルスはフォンに口を抑えられると、襟を掴まれ何処かへ引き摺られていく。
まるで背中を掴まれたザリガニのようだ。
「まぁ、悩んでいても仕方ないか。俺もちょっと行くところがあるんだ。お前達もフォンの修行とやらを手伝ってやってくれよ」
オルガとドラムは頷くと、フォンとダルスの後を追う。
俺が魂の消化を終えるまで最低でも2日ある。
つまり、2日間は誰にも迷惑を掛ける事がない。
もし、俺が魔王になってしまったら、この景色はもう見られないかもしれない。
その前にひとつ確認しておきたい事があった。
「わかったから離すっす!!」
「大人しくするんだわさ!!」
俺は引き摺られていくダルスを横目に苦笑すると、全身炎化し、大気圏へ向けて飛翔する。
そして宇宙空間に出ると、星々の隙間を抜けながら転生直後の頃の思い出に浸った。
(最初はフォンに声を掛けられて、全ては此処から始まったんだ。その後オルガに襲われ、ダルスに決闘を申し込まれた。そして火災からドラムを助け、メルダに結界を破る応援を頼んだよな。あの頃はみんな別の道を歩んでいたのに、今では俺の仲間だ。みんな大切な俺の仲間。失いたくない。こいつらを、絶対に失いたくない……)
気がつくと俺は目に涙を浮かべていた。
不安を拭うかの如く飛翔速度を上げる。
宇宙空間を光の速さで進むと、やがて地球の大気圏に突入した。
今回地球に来たのは左目の検証の為だ。
地球の俺は、俺の見ている異世界の景色は見られるのか?
そして、感覚は何処まで俺と共有しているのか?
その疑問を解消する為にここまで来た。
大気圏を抜けると前世で俺がコックをしていた中華料理店上空に辿り着く。
上空で人型に戻り、裏口に降り立つと隠れるように暫く待機する。
今は11月くらいだろうか。
外は肌寒く、秋の陽気だ。
夜更けに向かうに連れて周囲の店舗からは明かりが消え始めている。
殆どの店舗から明かりが消えた頃、一人の男が裏口から現れた。
灰缶の前でタバコに火をつけようと、ライターを取り出している。
俺はその男に声を掛けた。
「よう、元気か?……」
「ん?…… おっ…… オレ!?」
この男は、前世の俺だ。
俺は右目を瞑ると、左目からは鏡の如く俺の姿が見える。
紛れもなく前世の俺が左目から見ている景色だった。
前世の俺は隕石が左目に刺さり死んだところを俺が蘇生させたのだが、蘇生後に左目が赤く染まっていた。
おそらく俺が左目から見える景色と何か関係があるのではないか。
前世の俺は、俺の顔を見ると驚愕し、腰を抜かして倒れた。
「うっ、うわぁ! これってドッペルゲンガーって奴か? 見たら死ぬっていうアレか!?」
「うーん、間違ってはいないな。一度死んでるけどな……」
「死んでる!? オレは既に死んだって言うのか?」
「まぁ一服して落ち着けよ」
俺は、前世の俺が摘んでいるタバコに指先を当てると、火の粉を放ちタバコに火を付けた。
「お前、一体何者なんだ……」
「俺は、お前だよ」
そう言って前世の俺と目が合った瞬間、全身に感電したような衝撃が走る。
《《休憩俺転生金貨枚価値獣人風
情い能力み実験肉覚醒あ肉麻ご婆
豆つ腐死い刑時精霊加り護血ざ呑
儀も式炎た翼肉肉海賊が奴隷い商
人お辺境だ研究所休憩と地球ま異
世よ界繋き能力覚醒最う高魔す王
報告送別会仲間飲込光速炎纏玉》》
タバコの灰が灰缶に落ちる程の一瞬で、俺が異世界で体験した記憶を前世の俺と共有した。
「オレは…… お前?」
「そうだ。俺は、お前だ」
暫しの沈黙の後、“前世の俺”は重い口を開く。
「家に行こうか……」
「そうだな……」
※ ※ ※
“オレ”は今、信じられない体験をしている。
退勤前に一服しようとタバコに手を掛けた時、オレとそっくりな男が立っていた。
髪が赤いことを除けば、鏡の前のオレだ。
男はオレの持つタバコに触れると、指先から火を出した。
この男は詐欺師か手品師か?
そんな事を思いながら男の目を見ると、感電した様な感覚に陥った。
頭の中へ洪水の如く流れ込む記憶。
一瞬の出来事だった。
タバコの灰が落ちるよりも早く、気付いたんだよ。
ドッペルゲンガーなんて生易しいものじゃない。
この男は、オレ自身だってな……
※ ※ ※
俺達は店を出た。
5分程歩くと俺の部屋の前に到着する。
正確に言えば前世の俺の部屋だ。
勿論部屋の中身も熟知している。
1DKのアパートで、キッチンはちょっと拘った。
ちなみにユニットバスではない。
部屋はお世辞にも綺麗とは言えないが、キッチン周りは別だ。
調理器具は綺麗に棚に並べられ、多数の調味料が整頓されている。
おそらく料理人の性だろう。
これがキッチンが拘っている所以だ。
部屋に入ると俺達はテーブルへ向かい合わせに着席した。
俺を見つめる前世の俺は、早く説明しろと言わんばかりの視線を送っている。
そして俺は口を開いた。
「まず、俺は…… いや、お前は左目に隕石が刺さり死んだ。そこを俺が蘇生させたんだよ」
「死んだ? 隕石が刺さって? そんな事を信じろと言われても……」
「だが、心当たりはあるだろう? あの時、飛行機のような音が聞こえたはずだ」
「確かに飛行機のような音は聞こえた。その直後に熟睡したような感覚もあったが……」
「そして、さっき俺の記憶を共有したんだろう? 頭ではわかってるんじゃないか? 俺はお前だ。お前が考えていることなんてすぐにわかるさ。受け入れろよ、現実を!」
「お前はオレ…… そうだな、認めるよ。お前はオレだ。こんなに鮮明な記憶を見せられて、嘘だと言い切ることは出来ないな……」
俺達は改めて互いを自分自身だと認識した。
そして、目を合わせると静かに頷く。
「俺はお前にいくつか聞きたいことがあって来たんだ。まず、お前は俺の感覚を共有出来ているのか? 俺はお前の左目に映る映像が認識できるんだが……」
「感覚の共有? 特に何も感じないな…… って、俺の見ている景色まで見えてるのか! なんか恥ずかしいな……」
「まぁ、視覚については気にするな。次に、飛行機のような音が聞こえてから、体に異常はないか? 例えば熱さを感じなくなったとか、身体が軽くなったとか……」
「熱さか…… そんな変化は無いな。身体も特段変化は感じない」
どうやら、前世の俺は特に能力を獲得した様子は無かった。
今後覚醒する可能性が無いとは言えないが、現時点では普通の人間と大差ないようだ。
そして俺は、前世の俺の部屋で眠る事にした。
※ ※ ※
翌朝、俺達は起床しキッチンに立つと、朝食を作り始める。
これは俺が休みの日に行う習慣だった。
出勤日は軽いもので済ませてしまうからな。
フライパンを熱しながら、食材を調理していると、玄関の扉が勢いよく開けられる音がする。
「お兄ちゃん! 頼まれてたアレ、持ってきたよ!!」
お読み頂きありがとうございます。
よろしければ、ブックマークもお願いします。
こちらに裏話や設定を描かせて頂いております。
興味がありましたらご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n1248fm/
今回は地の文を多くしました。
前話と比べて読み心地は如何でしたか?
透の部屋の位置を敢えて描いていませんが、もしかしたら改稿で追記するかもしれません。
執筆中に35件目のブックマークを頂きました。
ありがとうございます!!
次回の更新は9日を予定しております。
今後の更新は暫く3の倍数日に変更致します。
広告の下に
【小説家になろう 勝手にランキング】
というリンクがあります。
投票頂けると嬉しいです。




