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15話 旅編最終話 休憩ありがとうございました〜

【2020.04.05 神無月凩様からFAをいただきました!】

 

 俺は目を開けると、そこには腰から下が消失した、フォンの亡骸が落ちていた。


「……」


 映画を見ているかの如く他人事のような感覚。だがこれは現実。

 眼前に転がるそれは……


「……フォン」

 


 旅をして……



 バカをやって……



 一緒に笑ったフォン……



 フォン……



《フィン…… 嫌ぁぁぁぁぁぁ!!》

「フォン…… うわぁぁぁぁぁ!!」


 現実を認識した俺は全力で叫んだ。

 あの時のフォンはこんなに苦しかったのか。

 俺はあの時、フォンに何もしてやれなかった。

 そして今度はフォン自身がこんな目に……

 俺が不甲斐ないばかりに……

 嘗て無い程の絶望感が俺を襲う。


(巫山戯んな…… 俺は認めない。こんな巫山戯た野郎の存在など、断じて認めない。殺す。こいつは絶対に、俺が殺す!)


 俺の中は怒りで満たされ、溢れ出す感情が目から一滴の雫となり頬を伝う。

 雫が落ちると、床が溶けて穴が空いた。


「許さねぇ! お前だけは、絶対に許さねぇ!!」

「イフリートという面白いものが見られたのだが、期待はず……」


 俺は意識が飛びそうな程の怒りの感情に身を任せ、喋るプルトニーを全力で蹴り上げた。

 衝撃で建物は瓦礫となり、プルトニーは結界を突き破って空高く打ち上げられる。


 俺は全身炎イフリート化すると、高速で上空へ飛翔する。

 大気圏まで飛ばされるプルトニーへ、今度は右手で殴る。

 プルトニーは方向を変えると更に飛ばされていき、やがて小さな惑星へ衝突した。


 俺はゆっくりとプルトニーに近づく。

 それに合わせてプルトニーが起き上がると、俺に手を翳す。

 しかし何も起きない。


「ふっ、イフリート…… か。やはり放射線は通じぬか」


 全身が傷だらけになりながら、プルトニーは呟いた。

 こいつの能力は放射線を操るようだ。仲間に食らわせた攻撃は、この能力の一端なのだろう。

 そして、プルトニーは懐から黒い石を取り出す。


「ならば、これを試すか……」


 プルトニーは黒い石を飲み込むと、体が黄色く輝く。


「なんだそれは……」

「これか? この石はアルキメデスの溶岩だ。俺の身体との相性が良い最高の素材。これさえあれば、世界を一瞬で破壊する事も可能だ」


 嗤いながら説明するプルトニーに危機感を覚える。


「まさか!」

「地球の終焉だ」


「やめろーーーー!!」


 俺が叫んだ瞬間、精霊の加護が施された腕輪が砕け散る。


 俺はプルトニーを飲み込もうと炎をプルトニーに向けて放ち、プルトニーの身体は更に強い光を放つ。

 俺がプルトニーを飲み込むのと同じタイミングで、プルトニーは大爆発を起こした。


 爆発により、俺達の居る惑星は半分に割れ、高速で宇宙空間を流れていく。


 ※ ※ ※


 俺は『空間収納』により、プルトニーを体内に隔離した。

 そして体内のプルトニーへ問いかける。


「お前…… 何をした!?」

「爆発により砕けた星は隕石となり、あと5時間で地球へと降り注ぐ。地球の奴らにはもう逃げ場などない。ただ死を待つのみ。私が世界を変えてやったのだ! 」


 なんと、惑星の破片は地球へ向かっているという。このまま放置したら、地球は死の星となるということか……


「なんて事を……」

「奴等は私の研究を危険だというくだらない理由で奪った。私の人生の全てを注いだ研究を。これは復讐なのだよ。私の人生を奪った奴等へのな!」


「その為に無関係な人を巻き込むのか!?」

「無関係な奴の犠牲など、些事に過ぎん。巻き込まれた奴は運が悪かった。それだけだろう?」


「……狂ってやがる」

「最高の褒め言葉だ。凡人に私の研究は理解できんのだからな! 」


 俺は体内に炎を放った。


「はっ。私に熱攻撃など通じぬと言っただろう。何千度だろうと温風に過ぎん」


 俺は炎を自由に操れる。言い換えるなら、敵意によって温度は変わるという事だ。


「何千度? 俺の怒りはそんなヌルい温度じゃねぇんだよ!!」


 俺は最大の敵意を込めて、炎でプルトニーを包み込んだ。


「無駄だと言っただろう? 炎は俺に効かない!」


 炎は数百度、数千度、数万度と温度を上げていく。

 やがてプルトニーの顔に焦りが見え始めた。


「なっ、なんだこの温度は…… 10万度にも耐えられるこの身体に、熱さを感じているだと……!?」

「10万度? 俺の怒りがそんなヌルい訳ないだろうが!!」


 そして俺の怒りの炎は最高温度を叩き出す。


「熱い…… なんだこれは…… 熱いぃぃぃ!!!!」


 最高温度、それは1億度にまで達し、プルトニーを包む空間内は、如何なる物質の存在も許されない虚無の空間となる。

 全てを燃やし尽くした炎はゆっくりと消失し、プルトニーは跡形もなく蒸発した。


 ※ ※ ※


 世界に不幸を振り撒く転生者プルトニーは隕石という最後にして最大の不幸を遺し、転生者トールによりその生涯の幕を閉じたのだった。


 ※ ※ ※


 プルトニーを葬った俺は、身体に違和感を感じた。

 まるで風のように身体が軽くなっている。

 そして、身体に埋め込まなくても、俺の炎で干渉した物は飲み込めるようになったようだ。

 体内でプルトニーを消化した影響だという事を直感で理解した。


 軽く飛翔してみると、光の速さで飛べるようだ。

 そして手から何かが出せそうな気がする。

 試しに足元の石に何かを当ててみるが、特に何も起こらない。

 しかしこれは先程感じたものがある。

 プルトニーが俺に攻撃しようと手を翳した時に何も起きなかったこと、それは放射線。


 俺はプルトニーの能力を獲得した事を悟った。

『空間収納』で消化した相手の能力を『修理複製』で再現出来るようだ。


(この能力があれば地球を守れるかもしれない……)


 あと5時間で地球は死の星になる。

 しかし、仲間の怪我が心配だった。

 フォンはもう居ないが、せめて綺麗な姿で弔ってやりたい。

 そう思った俺は、一度研究所へ戻ることにした。


 研究所へはおよそ2秒で着いた。


「トール様っ……」


 ダルスは大量に吐血しながらも、なんとか意識は保っていた。

 しかし他の三人に意識はない。


「お前達を治療する。一度飲み込むから待ってろ!」


 俺は結界内の全ての物を炎で包み込むと、そのまま『空間収納』へ飲み込んだ。

 そして『複製修理』でダルスの腕の切断面を炎で焼き切る。


「ぐあぁっ!!」


 ダルスが叫ぶが治療を続ける。

 俺には医療知識なんて無いが、どうやらプルトニーの知識を獲得したらしい。

 ダルスの両腕はすぐに繋がった。

 そして炎で縫い合わせると、ダルスの治療は終了した。

 跡は残るが腕は動くようになるだろうと、獲得した知識から感じた。


 次にオルガを治療するが……


「ううっ、ここは……」


 オルガが目を覚ます。

 外傷は酷いが、見た目ほどダメージは受けていない。

 治療の必要は無いようだ。


「ここは俺の体内だ。お前達を治療する為に飲み込んだ」

「トール様! プルトニーはどうなったんだ!」


「斃して奴の能力を奪った。しかし、俺の居た星が危機に晒されている。お前達を治療したら行かなければならない。オルガ、後のことを頼めるか?」

「わかった。全てお任せを」


 続いてメルダを治療する。

 ダルス同様に幹部を焼き切り繋ぎ合わせ、

 折れた手足には瓦礫を加工してギプスを嵌めた。

 意識は未だ戻らない。


 ドラムは意識が無いが、目立った外傷は無かった。

 おそらく精神的ダメージを受けたのだろう。

 暫く安静にしておけば体は大丈夫そうだ。


 最後に、フォンだ。


 フォンの変わり果てた姿に、ダルスとオルガは驚愕し、号泣した。


「なんでっ…… お前が殺されなきゃならないんだよっ……」

「ううっ…… なんということだっ……」


「このままじゃフォンも落ち着いて眠れないだろ?…… せめて身体だけでも綺麗にして送ってやろう……」

「うんっ……」

「あぁっ……」


 俺は瓦礫の中から全てのフォンの肉片を選別して集める。

 足りない部分は息絶えた合成獣キメラから流用した。

 フォンの上半身と共に炎で包み、炎の中で肉体を再構成させる。

 そして、身体だけは綺麗なフォンが完成した。


 飲み込んだ五人を静かに体内から吐き出す。

 仲間の治療が終わる頃には、隕石が地球に衝突するまで残り10分に迫っていた。


「オルガ、ダルス、後のことは頼んだぞ!」

「わかった!」

「了解っす!」


 俺は大気圏まで飛翔し、隕石を追う。

 プルトニーを消化する前は想像もつかなかった方法が、吸収した知識によって組み立てられていく。

 そして、いとも簡単に、計算によって隕石の位置を捉えた。


(本当にあと10分ってところだな…… ここからだと5分もあれば着くのか。さて、どうするか……)


 ――直径約10kmもの隕石は間も無く地球の大気圏へ突入しようとしている。


(不味いな…… あの位置から核爆発で粉砕させたら、地球に被害が及ぶのか……)


 暫し考え、一つの方法に辿り着いた。


(俺が溶かすしかないか……)


 ――ついに隕石は大気圏に突入した。


 隕石を溶かすべく、炎を隕石に纏わせ、最大出力で敵意を込める。

 隕石は真っ赤に燃え上がり、次第に溶融していく。

 降下に比例して小さくなる隕石は、高度500メートル地点で直径50メートルまで縮小していた。



 ――隕石が地上に到達するまで、残り1分



(くそっ! このままじゃ破片が残っちまう…… 地上に到達する前に、炎で衝撃を抑えるしかないか!)


 俺は地上への衝突を軽減させる為に炎の厚みを増やした。



 ――隕石が地上に到達するまで、残り10秒




挿絵(By みてみん)




 ※ ※ ※


「休憩いただきまーす」


 俺はタバコを吸いに外に出た。

 すると、頭上から飛行機の様な音がする。

 何だろうかと見上げてみると、何かが左目に刺さり意識がなくなる……


 ※ ※ ※


 結果から言うと、隕石を消滅させることには成功した。


 だが……


 左目に穴の空いた男が倒れている。


(これは…… 俺か……)


 俺は、タバコ休憩中に飛行機のような音がして、上を向いてからの記憶が無い。

 気が付いたらフォンに声を掛けられた。


(そうか、俺はこうして死んだのか……)


 左目に穴の空いた前世の身体を、まじまじと見ているうちに一つ閃いた。


(今なら、もしかして……)


 俺は俺の体を飲み込むと、治療を開始した。

 幸い、材料は合成獣キメラの残りがある。

 やがて処置が終了し、俺の体を吐き出した。


 すると……


「うっ…… ううっ……」


 俺の体は起き上がった。

 左目が赤く染まった状態で。


「う〜ん、なんかよく寝た気がするなぁ。あっ、まずい! 休憩中だった!」


 俺の体は何事も無かったかのように厨房へと帰っていった。

 そして厨房から俺の声が響く。



「休憩ありがとうございました〜」

お読み頂きありがとうございます。

「この話が面白い」などの感想をお待ちしております。

一言でも結構ですので、お気軽に書き込みください。

よろしければ、ブックマークもお願いします。


旅編はいかがでしたか?

次回から新章となります。

新たに評価とブックマークを頂きました。

ありがとうございます!


こちらのエッセイに本作の裏話を描かせて頂いております。

もしかしたらネタバレも含んでしまうかもしれませんが

よろしければご覧ください。

https://ncode.syosetu.com/n1248fm/


引き続き、イフリートの建国日記をよろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うおう! ここで地球での死に繋がるのか! 衝撃的でした。
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