5話 少年と異変 (勇)
魔王ルシフェウスは歴代魔王を召喚し、強力な力を手に入れた。
一方、静かな村に生まれた少年は、、、
〜とある村 トローク村〜
夫クリスト、妻マリアは自分たちの子どもを大切に育て、貧しいながらも幸せに暮らしていた。
子どもが産まれた際にその子のお腹が、まばゆい光を発した事は村の人々はほとんど信じなかった。
特に変わった事もなく平和な日々が過ぎ、10年が経過した。
少年ラストル10歳は、村の小さな学院に通いだす。
「トローク村 トローク学院」
消し残しのある黒板に、教師はチョークを使って説明する。
「…であるから、我々が平和に授業ができるのは、魔の軍勢が支配する領域との境界線で、戦士と呼ばれる職業の人達が戦ってくれているおかげなんだ。」
教師は教卓に手をついて、生徒達を見た。
「デューダ先生!質問があります!」
授業を受けていた、少年ラストルは元気よく手を挙げた。
教師デューダはにこやかにラストルを指名する。
「本で読んだのですが、世界を救った勇者様は戦士だったのですか?」
ラストルは席を立ち、質問した。
「いい質問だ!座りたまえ。
何度か世界を救ってきた歴代の勇者達は戦士だったのか…
実は逆なんだ。勇者が世界を救い、それを目指して戦士という職業が生まれた。
魔物と戦い、危険を伴う戦士という職業は鍛錬を積んだ者しかなれない。その代わり、お給料は最高だ!
ラストルは確か武術の評価はSだったな!
もしかすると、戦士が向いてるのかもしれんぞ?」
「はい!ありがとうございます!」
ラストルは元気よく答えた。
午前の授業最後のチャイムが鳴る。
「本日の授業はここまで!質問がある者は昼休憩の時間に教員室へ来なさい。
午後は下級魔法の発動訓練をする。学院外の修練広場へ集合するように!」
デューダは教本を整えて、教室を立ち去った。
ラストルはその場で、大きく体を伸ばした。
「勇者様って、戦士じゃなかったんだね!」
話しかけて来たのは、同級生で長い金髪の女の子オリビアだった。
「うん!そうみたいだね!
この''勇者伝記''を読んでて気になったんだ!
知ってる?勇者様って実は結構おじいちゃんらしいよ?」
ラストルは楽しそうにオリビアに説明した。
「そうなの!?勇者様って若いと思ってた!
ラストルはたくさん知ってるのね!」
オリビアも楽しそうに答えた。
周りの生徒が続々と、昼食を摂るために教室を出ていく。
「オリビア!僕たちもご飯食べよ!」
「うん!」
2人は教室を後にした。
その姿を柱の角から見ていた黒い影はひっそりと身を潜めた。
トローク学院 修練広場
学院の外は広い土の校庭が広がっている。
下級魔法の実戦訓練、体力テスト等の身体を動かす授業を行う場所である。
授業数分前に広場に生徒たちはまばらに、集合していた。
「先生はいいよな〜俺たちを早く集合させといて、自分はチャイム鳴ってから来るんだからさ?」
「今日はどんな魔法かな?火?水?回復?」
「眠たいよぅ…」
生徒達がざわつく中、ラストルとオリビアは一緒に居た。
その時、突然地面が激しく揺れだした。
学院校舎、山までもが激しく揺れた。
校庭の生徒達はあまりの激しい揺れの為に、立つ事が出来ずに、次々と倒れこむ。
ラストルとオリビアも立てずに倒れこんだ。
「な…何だこれ!」
ラストル事態が飲み込めず、混乱していた。
周りの生徒は泣き出すものもいた。
次の瞬間、学院の半分以上が轟音と共に吹き飛び、巨大な黒い影が現れた。
学院よりも更に大きな、巨人の魔物だった。