15話 凍土と潜入 (魔)
魔導師グーシオンの報告により、自らの演説から人間に投降する魔物がでてきた事を知る魔王ルシフェウス。
捕虜となり、虐げられている現状を知りルシフェウスは単独で永久凍土の国。スノウスンへと乗り込む。
世界は4つに区分けできる。
魔王が支配する絶対魔界領域。
北の大地に広がるレイド氷原。
東の大地に広がるユーズ平野。
南の大地に広がるバアン砂漠。
絶対魔界領域は世界の約半分を占めている。
残り半分は人間の住む領域である。
それぞれの領域の中には国が点在する。
〜 レイド氷原 凍土の国 スノウスン 〜
レイド氷原の中でも、北部に位置する永久凍土の極寒の大地。
火によって開拓されたこの国は、作物も育ちにくく非常に住みづらい。
極限の地であるからこそ、そこに生まれる子は強く、戦闘能力に関しては優れていた。
「おらッ!早く走れ!」
馬車に乗りながら鞭を振るう男。
寒さをしのぐ厚手のコートに、耳を覆う帽子を被っている。
しかし、馬車を引くのは馬ではなく、一本角の折れた傷だらけの黒い魔獣。
この国では家畜の育ちも悪いため、魔獣を捕獲し家畜として働かせている。
魔物を捕獲する事は容易ではないため、これを捉えるためにも、屈強な人間が育つようになる。
〜 スノウスン北部 魔族収容所 〜
スノウスンの地下には、捉えた魔物を無力化し保管する場所がある。
薄暗い地下にたくさんの鉄格子のが並ぶ。
中には、体の一部が欠損した魔物や傷だらけで血を流す魔物など様々な種類の魔族が収監されていた。
「ううぅ…寒いよぅ…父さん、母さん…」
ある鉄格子の檻の中で、羊の頭に人の体をした魔物の子供が寒さに身を震わせている。
体毛は全て刈られ、何も服を着ていない。
「大丈夫かい?シープ。
父さんと母さんの体の間に挟まりなさい。
少しは暖かくなる。」
母親らしき体つきの羊の頭の魔物は、子供の魔物のシープを抱きしめた。
それを抱くように父親らしきツノのある魔物が覆いかぶさる。
暖かくなった子供の魔物は、安心した顔になった。
すると、どこからともなく、何かを引きずる音と靴の足音が聞こえてくる。
「なんだ?
魔族のくせに家族の真似事か?
この家畜が!」
荒い口調の男は、羊の頭の魔物達のいる鉄格子を蹴った。
大きな音が地下に響き、閉じ込められた魔族は身を竦ませた。
「おい、そこのメスの魔物。
こっちへ来い。」
暗がりで顔は見えないが、軍服の屈強な男は羊の頭の母親の魔物を呼ぶ。
「母さん…」
心配そうな顔をしながら子供の魔物シープは母親を見上げる。
「早くしろッ!」
再び鉄格子を勢いよく蹴る男。
母親の魔物は胸と股の部分を手で隠しながら、男の元へと歩いていく。
「コイツが使い物にならなくなった。
次はお前だ。」
男は鉄格子のドアの鍵を開け、掴んでいたものを投げ入れた。
床に横たわったのは、白目を剥いた女性の姿の羊頭の魔物だった。
「ツェルコ!!」
父親らしきツノが生えた羊の魔物は、立ち上がり、母親の魔物の名を叫んだ。
「静かにしろ!
お前達は毛か肉しか利用価値はねぇんだよ!
それともお前が先に人間様の胃の中に入りたいか??」
男は腰に刺した剣を抜いて、父親の魔物へ向けた。
「ムート、ダメよ。
あなたが居なくなったらシープは誰が守るの?
大丈夫よ…私は…」
悲しそうな顔をした母親のツェルコは格子ドアからでる。
「よし。なかなか上物じゃねえか。
さあ、歩け!」
軍服の男はツェルコを鞭で叩きながら、歩かせた。
暗闇の中で、父親ムートと子供のシープは抱き合いすすり泣く声だけが響いた。
〜 スノウスン 商店街 〜
雪の降る商店街では、人間達が盛んに商売を行なっている。
武器、衣料、食品。様々なものが集っている。
しかし、多くの人が集う場所で誰もが、違和感を感じる現象が起こっていた。
「今昼だよな?
いきなり空が暗くなって三日月が出てるぞ?」
空には時間帯にふさわしくない暗闇と、不気味に光る三日月が突如現れた。
「おかしいわね?こんな事初めてよ?」
「不気味だわぁ…早く帰りましょ。」
買い物に来ていた者はそそくさと帰り、
不安な者は店じまいを始めていた。
「おい!アンタ!
俺の商売道具に勝手に触ってんじゃねぇよ!」
馬車に繋がれた、傷だらけのツノが折られた馬の姿の魔獣を撫でているひとりの男。
乗っていた厚手のコートに身を包んだ男が声を荒げている。
「こんな身体になるまで…
ご苦労であった。今すぐ解放してやる。
頭の悪いふりをしなくても良い。
お前はこの枷を外せば風のように走れるはずだ。
すぐにこの国を出よ。」
角の折れた馬の姿の魔獣は赤い瞳に涙を浮かべている。
男は魔獣を縛っている封印の枷を外した。
黒い魔獣は静かに頭を下げ、商店街の人混みを裂きながら走り去った。
「おいッ!何をやってんだアンタ!
俺の商売道具を!!
あぁ、それだけじゃねぇ…
安全性に問題がないかとか国から責任を問われかねねぇ…
この野郎!覚悟はできてんだろうな!」
馬車の荷台から降りた、コートの男はナイフを取り出し構えた。
魔獣を逃した男は、静かにナイフを構えた男を見ている。
「なんとか言えや!
ここにいる人間の全員が証人だ。
お前が!魔獣を!逃したって事実をな!
俺は元軍兵だ!
魔獣の強さはよく知っている。
それをお前は意図的に逃したんだ!
無差別殺人の意図があって然るべきだよなぁ?
じゃあ、俺はお前を殺してでもお前を止めなきゃなぁ?」
頭に血が上った男はにじり寄る。
「やれやれ、やはり人間どもは品が無い。
どうして余はこの様な劣等種族に負けねばならぬのだろうか…
まぁ、良い。
先に布石を投じておくとしよう。」
そう呟いた男の背中が大きく膨らみ、服を割いて大きな羽が6枚姿を現した。
「何ッ!!」
ナイフを持った男は驚いている。
周りの人間もその光景に騒めき出す。
「道具と言ったな人間。
少し驕りが過ぎるのではないか?
貴様らこそ我らの食料となる以外の価値も無かろうに。」
羽を生やした魔物の男は、ナイフの男を煽った。
「この野郎…人間の姿をした悪魔ってわけか!
なら手加減はいらねぇな!
ここで死ねッ!!」
ナイフを構えて男は突進した。
羽の魔物は片手を上げ、長い爪の手を開いた。
「重圧」
ナイフを持った男の地面が暗黒に包まれ、何かに押しつぶされているかのように地面に叩きつけられた。
「グエェェッ!!」
男が悲鳴をあげる。
「ほう。流石は戦士の国の人間。頑丈だな。
まあ、持てる力の1割も出していないが、圧砕されないでいるのは大したものだ。
証人はこちらも欲しいと思っていたところだ。
人間どもよ!聞くが良い!」
羽を生やした魔物は、恐怖の表情で何もできずにいる人間達に向かって言い放つ。
「余は魔を統べるもの。
悪逆非道、冷徹無比なる魔王なり。
余は貴様ら人間どもを支配下に置くべく、進行の準備を進めている。程なくして世界は魔王の蹂躙による戦禍に包まれるであろう。
貴様ら人間どもは余の作る世界の家畜として支配してやろう。
なぁに、楽には殺さぬ…
使うだけ使い、生み出すだけ生み出させ、常に消える事の無い苦痛を与えながら、死んだ時には食料として消費してやる。
逃げ場は無い。
余に歯向かうものは、ここで潰れている人間のような末路を辿る事となる。
手始めに、ひれ伏してもらおうか?」
魔王と名乗ったそれは、指をパチンと鳴らした。
商店街の地面全体が暗黒に包まれ、強い重力がかかる。
「うおぉ!なんだ…!?身体が重い!!」
「立ってられない…!!」
人間達は身体の重みに耐えかねて膝をつく。
立てる人間が誰一人おらず、呻く声が響き渡る中を、魔王は悠々と進んでいく。
すると、魔王の前に黒いローブを着たフードを被った何者かが現れ、その場で片膝をついた。
「魔王ルシフェウス様…!
こんなところまでわざわざご足労頂き、有難うございます。
私の名前は…」
「アンドラよ。
強き者が多いこの国でよくやってくれた。
余の権能''夜''が無い状態ではさぞかし動きづらかったであろう。」
黒のローブのアンドラの言葉を遮るように魔王ルシフェウスは労った。
「はっ!!お褒めに預かり光栄でございます!魔王様。
重ねて申し訳ありません。
私の力不足で未だ収容所から魔の者たちを救出するに至っておりません。」
アンドラは申し訳なさそうに頭を下げる。
「よし、アンドラよ。
悪いがその収容所まで案内を頼む。
魔の者たちの救出。並びに、人間との和解への最初の布石を投じるとしよう。」
ルシフェウスは言った。
「わかりました。魔王様。
こちらでございます。」
アンドラとルシフェウスは魔族収容所へ向かった。
ルシフェウスの姿が消えたあと、重力場は消え、人間達は疲れと恐怖でその場をに崩れ、動けずにいた。
〜スノウスン北部 魔族収容所〜
ルシフェウスの権能により空には月が登り、周囲は暗くなっている。
「あちらです。」
アンドラとルシフェウスは物陰から収容所を確認した。
巨大な石造りの壁に門。そして鉄格子の扉。
鉄格子の頑強な扉の前に、軍服のコートを着た屈強な男が2人。
そして、杖を持った魔導師が門の上の見張り台に2名立っていた。
「本当に監獄だな。
これは確かにお前では一筋縄では救出できんな。」
ルシフェウスは様子を伺い、静かに呟く。
「お恥ずかしい限りです…
軍団転移魔法が使えぬ私には潜入するだけで精一杯でして…」
アンドラはまた申し訳無さそうに呟く。
「では、正攻法で行くとしよう。
格の違いを見せつけてやらねばな。」
「魔王様!?」
ルシフェウスは物陰からまっすぐ、正面の門へ向かって進んだ。
それに気づいた、門の上の魔導師達は杖を構え、戦士達は剣を構えた。
「止まれ!!何者だ!!」
戦士の1人が叫ぶ。
しかしルシフェウスは止まらない。
魔導師の1人が威嚇で魔法の火球を放つ。
それでもルシフェウスは進み続ける。
「警告に動じないのであれば、殲滅対象とする!
総員攻撃開始!!」
門の上の魔導師2人は上級魔法を唱えている。
戦士2人はルシフェウスに斬りかかる。
「邪魔だ。ひれ伏すが良い。」
ルシフェウスは指を鳴らした。
再びルシフェウスの周囲に強い重力場が発生し、剣士達が動きが鈍る。
「ほう…耐えるか。
だが、この程度の耐性では拍子抜けだな。
黒弾」
戦士2人はルシフェウスの放つ魔法で吹き飛ばされ、壁にめり込んだ。
「くッ!コイツ強いぞ!
炎連光砲!!」
「封氷結界!!」
2人の魔導師は上級魔法を放つ。
ルシフェウスの周りに冷気が渦巻き、一瞬で氷の中に閉じ込められた。
そして、もう1人の魔導師の炎を纏った光線を受け、ルシフェウスの閉じ込められた氷は爆散した。
周りが爆煙と水蒸気が立ち込める。
「…ふむ。威力は十分。
下級の魔族なら一撃で蹴散らされていような。
だが、余を相手にするにはその100倍の力は出さんとな?」
ルシフェウスは煙の中から歩きでてきた。
「馬鹿な…!
上級魔法を受けて無傷だと!?」
魔導師達は狼狽える。
ルシフェウスは両手を挙げ、2人の魔導師を指差す。
「命は取らぬ。
貴様らは余の力を広く知らしめる為の証人だ。
今日、この時に起きた悪夢を語り継げ。
幻覚。」
魔導師達はその場で頭を抱えて悶え叫んだ。白目を剥きその場で倒れこみジタバタする魔導師達。
「貴様らは余に、終わりなく殺され続ける幻覚を見ている事だろう。
なに、安心するがよい。
余の権能''夜''の効果範囲外に出れば幻覚は無くなる。」
黒いローブのアンドラが駆け寄ってきた。
「お見事でございます。魔王様。
騒ぎを聞きつけて、戦士が集まってきます。
早速ですが移動しましょう。
魔の者達が捕まっているのはこちらです。」
ルシフェウスとアンドラは収容所へと入っていった。
〜 魔族収容所 地下通路 〜
ルシフェウスとアンドラは収容所内で何度か軍服の戦士と交戦し、全員に幻覚の魔法を使い、無力化して奥へと進む。
薄暗い通路に一つだけ明かりのついた部屋があった。
「魔王様…その部屋には雌型の魔族が恥辱、陵辱を受けている部屋でございます。
この部屋だけは確実に潰さねばなりません。私も、何度助けられずに悔やんだことか…」
アンドラは自分の手を力いっぱい握り悔しそうにしている。
ルシフェウスはアンドラの肩に手を置き語りかける。
「お前が悔やむ事ではない。アンドラよ。
悪いのは人間なのだ。
この中にいる者には、灸を据えねば…いや、もはや生かしておく価値もあるまい。
では、行くぞ。」
ルシフェウスは扉ごと魔法で吹き飛ばした。
中で悲鳴が聞こえる。
中には裸の人間の男達が立ち尽くし、雌型の魔物達が鎖で繋がれていた。
吹き飛ばされた扉に壁と挟まり、人間の男が1人絶命した。
「な…なんだテメェは!?
ここは重役しか入れないはず!」
「ほぅ。
ここには肩書きだけの腐った人間達しかいないようだな。
ならば、全員土に帰れ。
影暗器」
人間の男達全員の影が浮かび上がり、鋭利な刃となって心臓を貫く。
なす術なく、男達は倒れて行く。
怯えた表情でその光景を見ていた雌型の魔物の一体が叫ぶ。
「ま…魔王様!魔王ルシフェウス様!!」
涙を流しながら、嬉しそうな顔をしている。雌型の魔物達にルシフェウスは言った。
「皆、遅くなってすまぬ。よく今まで耐えてくれた。もう大丈夫だ。
今からお前たちを、魔王城へ転移させる。
従者グーシオンと魔将のルーナに手当てと衣服等の提供を受けるとよい。」
ルシフェウスは複転移の魔法を唱える体制になった。
すると、一体の裸の魔物が近寄ってひざまづいた。
「魔王様…!私はツェルコと申します。
地下の最下層に生まれたばかりの私の息子と夫が捕らえられております。
私だけではありません。ここにいるサキュバスやナーガの種族の愛する者たちも多数捕まっております!
どうか…どうかお助ください…!」
涙を流しながら、羊の頭の魔物ツェルコは頭を下げた。
ルシフェウスは膝をつき、ツェルコに言った。
「任せておけ。
余が必ずお前達の家族を助けよう。
ほかの皆も一緒だ。安心せよ。
勇者以外に殺されるつもりは毛頭ない。」
ルシフェウスは笑った。
「ありがとうございます…魔王様…!」
周りの魔物達全てがルシフェウスに頭を下げた。
ルシフェウスは複転移を使い、魔物達を一瞬にして転移させた。
「さて、あとは目立つ様にこの部屋を燃やしてしまおう。
腐った脂のあるゴミはよく燃えそうだな。」
ルシフェウスは部屋全体を焼き、地下深くへ向かう。
〜 魔族収容所 地下収容牢 〜
ルシフェウスとアンドラは広い空間へ出た。
周囲は暗く、天井から黒く太い格子の金属が降りている。
中には多数の魔物が衰弱した様子で捕まっている。
ルシフェウスの姿を見た魔物達は驚いた。
「魔王様!!魔王様がいらっしゃる!!」
「魔王様だって!?初めてお目にかかる!」
「なぜこんな場所へ…!?」
ざわつく地下収容牢。
ルシフェウスはその声を鎮める。
「落ち着け皆の者。
お前達を助けに来た。
安心しろ。雌型の者たちは全て余が魔王城へ送った。
お前達も全員そうするつもりだ。
その代わりと言ってはなんだが、少し頼みがある。」
ルシフェウスは捕まっている魔物達に一つだけ頼み事をお願いした。
誰しもが納得したわけではなかったが、その頼み事を聞き入れた。
「魔王様…少しよろしいですか?」
羊の頭に立派なもの角のある魔物ムートが、暗い顔でルシフェウスを呼んだ。
ルシフェウスは牢の格子越しにムートに耳を傾けてた。
「私はムートと申します。おそらく既に助けていただいている、ツェルコの夫です。
実は…私は魔王様が人間との和解の話を語った時、時期を待たずに人間に投降しました。
結果はこの通りであります…
魔王様の言いつけも守らず、家族を非常に過酷な環境に置いてしまった…
私が助かる権利など無いのです…」
ムートはうつむきながら、暗い顔でルシフェウスに告白した。
ルシフェウスは少し黙って口を開く。
「ムートよ、それは違うぞ。
お前はお前なりに考えて選択した。
それが結果的に間違えただけの話だ。
もちろん、一歩間違えば取り返しがつかない選択だったかもしれん。だが、それはお前が家族を守る為にした選択であろう?
そこにうずくまっている子どものために。」
ルシフェウスは子羊の顔のシープを指差した。
ムートは黙って頷く。
「余にも非はある。
そのような選択を取らなければならなかったような不安を抱かせたのだからな。
だからこそ、このように捕らえられた者を助けに来ているのだ。
命ある限り、チャンスのある限り、お前は最善の方法を考え、生きて家族を守り抜かねばならない。
これは権利ではなく義務だ。
わかったな?」
ムートは涙を流しながら、深々と頭を下げた。
ルシフェウスは軽く頷き、再び全員に向かって叫ぶ。
「では、皆の者。手筈通り頼むぞ。」
程なくして、地下収容牢に増援の戦士部隊が到着した。
剣や杖を構え、ルシフェウスとアンドラの様子を伺っている。
指揮官らしき人間が叫ぶ。
「ここに着くまでに、戦士達の何名かは発狂し、重役は殺害されたのち、無残に燃やされていたのを発見した。
貴様らの仕業だという事はわかっている!
目的はなんだ!魔族の仲間の救出か!?」
ルシフェウスはゆっくり戦士達の方を振り返り、声を出して笑った。
「クハハハッ!!
救出?違うな!
人間共に捕まるような弱い魔族などいらぬ!
余は魔王。
魔族を統べる悪逆非道の王ぞ。
強き魔の国の恥知らず達を一匹残らず消し去るためにやっできたのだ!
灰塵炎!」
魔族を収容する牢の中が激しく炎上する。
中の魔物達は悲鳴をあげる。
「魔王様!何故!?お許しを!!」
「熱いよぅ!熱いよぅ!!」
「すみません魔王様!助けてくださいまし!!」
燃える光景を見て不気味な笑みを浮かべる魔王ルシフェウス。
人間の戦士達は動揺している。
「コイツ…!自分の仲間を燃やしやがった!?」
指揮官は狼狽えた様子でルシフェウスを見ている。
「ふむ。さて、悲鳴に飽きたところでそろそろ灰となってもらおう。」
ルシフェウスは指を鳴らした。
炎は突然強くなり、牢の中の魔物は見えなくなった。
「ギャーッ!!」
炎の中で悲鳴だけが響き渡り、悲鳴が無くなり静かになった。
牢は燃え続け、熱気が戦士達に襲う。
「コイツ…狂ってやがる!」
腕で顔を隠し、熱気を防ぎながら指揮官らしき男はルシフェウスに言い放つ。
「狂気とは余を形容するに相応しいな、人間。
なんども言うが、魔族に弱い者などいらぬ。
使えぬなら捨てる。
役に立たぬなら殺す。
覚えておくがよい人間!
これが魔王である私のやり方である!
程なくして人間共を、余の作る最強最悪の軍勢で攻め落とし、その命尽きるまで支配してやろう。
それまでに恐怖で怯えながら過ごす日々を送るがいい!
クハハハハッ!」
ルシフェウスはそう言い放ち、アンドラと共に炎の中を歩きながら姿を消した。




