6.メイドって漢のロマン
「ここで何をしていると聞いているのだが?屋上は立ち入り禁止だぞ」
橘会長は冷たい視線を向けてくる。しかしそんな視線なんか気にならないほど、彼女の格好はおかしかった。
何でって?それは男なら、いや漢なら一度は妄想の中で好きな女の子やキャラクターに着せてしまう崇高なるメイド服をばっちりと着こなしているからだ!
「た、橘会長こそ何でそんな、か、可愛らしい格好を……?」
「え?あぁ、君はメイド萌えなんだな。そうか私は萌えるか。フフ」
何をおっしゃっていられますかこの人は!?……あれ?会長ってもしかして――。
「あの、失礼を承知で単刀直入にお聞きします。橘会長はオタクなんですか?」
「フフ。本当に単刀直入だな、まぁその通りだが?偏見を持つか、君も」
生徒たちみんなの憧れ、生徒会長はお高い人かと思っていたんだけどな……ふふ、俺たちと変わらないじゃないか。偏見というよりも親しみを持てる。
「偏見なんて持ちませんよ。俺だってよくパソコンでゲームとかやりますよ」
「そうか、それは18禁か?」
「ええ、おすすめは遥かに○ぎ麗しのとか、この青空に○束をとかですね……ってい、いや18禁ゲームなんてやってないですよ!?」
「フフ」
「なっ!?」
メイド会長は俺の胸に飛び込んできた。こ、こここ、こ、これは夢か、夢なのかぁ!!
「君は嫌いではないぞ。屋上にいたことは不問にしよう」
「あ、ああ、ありがとうございます。しかし会長、あの……その、離れてくれると嬉しいです」
「私のようなメイドにはくっつかれたくないのか」
ニヤリと艶やかな笑みを作る会長。この生徒会長、ぜんぜんイメージと違うぞ!?もっと真面目で硬派な人かと思っていたのに!
「い、いや橘会長はとても美人であります。抱きつかれて自分最高でございます!ただ、こうもう、俺のいろいろなところがピンチなんです!!」
主に脳内と下半身だが。
「フフ。可愛いな。名前はなんて言う?」
「に、2年、宮岡拓です!」
名前を言うと、会長はゆっくりと離れてくれた。
「では宮岡」
「はい?」
会長はいきなり真剣な目で俺を見つめてきた。
「お前はメイドは好きか」
「え?当然ですよ」
当たり前じゃないですか?メイドが嫌いな漢っていましたっけ?いいえ、いません。
「この学校の女子の制服がメイド服だったらお前、どうする」
「まず嬉しすぎて泣きます。そのあとにトイレに行ってオナ――ってしませんよ、そんなこと!」
何か最近の俺、一瀬さんに毒されてきたみたいだ……。くっ!忌々しいエロ魔王め!
「まぁ何、お前も男だ。そういう処理も大切だ。そして話を戻すが……私はこの学園の女子の制服がメイド服にさせようと思う」
は?
正気ですか?
「何だその顔は。私は本気だぞ」
「え、えーと冗談でなくて?」
「無論だ」
「な、なるほど…………って、えええぇぇぇ!?」
この人は……本気だ!なぜそこまでメイド服を?
「なぜメイド服を?決まっている……」
な、何?
「メイドってなんか良くね?ってさっき授業中に思ってたからだ!」
え、えええぇぇぇ?それだけの理由?
「私は言ったことは絶対にやるぞ。宮岡、お前の周囲の女の子がメイド服を着た状態を考えろ」
みんなが……。
〜妄想中〜
『た、拓くん。こんな私にお、お仕置きしてくださぁい』
夕妃ちゃん。
『宮岡……私、あなただけのメイド。……奉仕させて……』
一瀬さん。
『ば、バカ兄貴……は、恥ずかしいからこっち見ないでよね!まったくもう……』
まりな。
メイド服ってスゲェ!