4.休み時間も騒がしいのです
朝から今日は大変だったな。とりあえず塙山さんは落ち着いたけど、則孝のやつは戻ってきていない……どこで何をやっているんだか。
「み、宮岡君!」
3時間目の休み時間、塙山さんは保健室から帰還なされた。
「今朝はあ、ありがと。恥ずかしいところ見られちゃったね」
「いやいや気にしないで。それよりもホントに大丈夫?」
「うん、もう平気だよ」
「そっか。うん、よかった。それにしてもあんなに鼻血が出た理由はなんなの?」
もしかしたら持病の症状の一種だろうか。というよりもあれだけの量の血が乙女の鼻の穴から出てくるものなのだろうか、むしろ血が足りなくなるのでは。
「い、いや〜わかんないな〜。私って昔から鼻の粘膜とか弱かったからかな〜?あ、あはは」
「? まぁ大丈夫ならそれでいいよ」
おそらく、持病のことは隠そうとしているんだろう。ならば深追いは駄目だ。
「私もかなり心配した」
「いつのまにっ!!」
我がクラス、いや我が凛海堂学園一のエロテロリスト一瀬葵様が俺の隣にいつの間にか特殊召喚されていた。
「というか何かアンタ、血を噴き出してた塙山さんのこと、慈愛たっぷりな目で見てたでしょ!?心配というより安心してなかった!?」
「別にそんなつもりは毛頭ない。ただ単純に結構大きい胸……私が手で確認した時は84センチ。それが血まみれになっているのがエロいと思ってただけ」
「ち、ちょっと葵!?バストサイズ、触っただけでわかるの!?ていうか、宮岡君の前で言わないでー!!」
「これが私の能力」
どんな能力だ……羨まし――くないわっ!!そ、それよりも彼女は触らなくても分かるのではないか?前に俺のナニも……って思い出したくもない!というか、結構大きいとは思ってたけど84か、ナイス塙山さんのおっぱい。
「とりあえず目の保養になった。夕妃、御馳走様でした」
「お粗末さまでした……って何か恥ずかしい!」
二人のやり取りは面白いね。これが長年つきそった親友のやり取りか……何か心が安らぐね、内容はかなりアウトなんですけど。
「宮岡、お前もそう思うでしょ?」
「え、何が?」
急に話を振られても、すいません聞いてなかったです。
「だから夕妃の胸は男の○○○を○○するために存在してるって」
「全部伏字にしましたから!!もう何を言っているかわかりません!俺には全然わかりません!!」
「思春期の男がわからないわけない。もう一回言うよ、だから――」
「どれだけアンタはこの話をエロくしたいんだ!!」
まったく、このエロの権化誰か持って行ってください。
「わ、私は宮岡君の○○○だったら、べ、別にしてもいい!!」
ちょっと、ちょっと、ちょっとぉー!?何を言っているの塙山さん!!ダメでしょ、それはダメでしょ!!君はそんなキャラになっちゃいけない、戻ってきて!戻ってきて塙山夕妃!!
「確認するように言うけど、宮岡君のだったらなんだよぅ?」
屈してはいけない!例え『ぅ』を使われようとも俺は負けない!彼女を助けなくちゃ!!
「戻ってきてぇ!夕妃ちゃん!」
「え?」
急にキョトンとした顔をする暴走娘塙山夕妃さん。何か変なこと言った?いや、俺は一人でも一瀬葵予備軍を作らせないために正当なことしか言ってないぞ!
「今、宮岡君……私のこと、夕妃ちゃんって……」
ああ、そっちね。
「あ、ごめん。やっぱ名前で呼ばれるの嫌だった?次からは気をつけ――」
「夕妃ちゃんでお願いします!」
土下座されたぁーー!!それも額を凄い擦りつけるぐらいの!クラスでもなかなかの人気を誇っている乙女に土下座された……やはり当然のようにクラスメイトから冷たい目線で睨まれる。
「塙山さんとか他人行儀で言われるのはとても嫌だったんです。特に宮岡君に言われるのがとても悲しくて。そして今日、初めて宮岡君は私のこと夕妃ちゃんって呼んでくれた。本当にうれしかった。今も泣きそう。ダメ、ここは耐えるのよ夕妃!宮岡君――いや私も拓君って呼ばせてもらうね。拓君、お願いです。私のことは夕妃ちゃん、もしくは慈愛たっぷりで夕妃と呼んでください。お願いしますお願いしますお願いしますお願いしま――」
「わかった!わかったから頭をあげてくれ、塙や――夕妃ちゃん!」
「はい!」
塙山さん改め夕妃ちゃんは野球部顔負けの大きな声で返事をした。
「えへへ。やっと名前で呼び合う仲までなれた」
「頑張った。夕妃はえらい」
「一瀬さんはエロいよ」
「サンキュー」
何かお礼言われちゃった!?しかもサンキューって、アンタ。ダメだ、褒め言葉としてとらえている……どうやればこの女を黙らせられるの?
「じゃ、じゃあそろそろ休み時間も終わっちゃうし席に着こ!ほら、葵も拓君も」
俺たちは夕妃ちゃんに急かされて席に着く。この日はずっと夕妃ちゃんは笑顔だったから、まぁ良しとするか。