第二話
拝啓 寒さ厳しき折、皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。私は変わらず二日酔いです。
さて、後輩の犬養さんに倒された私ですが、現在7:00発の電車に乗っています。どうやって乗ったのか、私に問われても私は答えられません。しかし、後輩が運んだと証言していたので、事実でしょう。7:00の電車に乗れなかった場合、確実に遅刻していたので後輩には頭が上がりません。
おせちにお餅とおいしいものを沢山食べて体重が気になりだすころだと思いますが、ご自愛のほど祈ります。
敬具
みなさんこんにちは
店の陳列棚から正月の商品が姿を消し、時の流れを感じる今日この頃ですが、皆さん元気ですか。私は…いう必要がありませんね。
それはそうと、後輩は力持ちですよね。私の体重…危ないですね、体重をいいかけました。
こう言い換えましょう。気絶した女性一人を運んで電車に乗ったのですから後輩は力持ちですね。
これなら私の体重を言わなくて済みます。でも「気絶した女性を運ぶ」と聞くと何やら怪しい行動を働いているようにも捉えられますね。これは良い事なのでしょうか。
しかし、私が気絶したのは後輩の責任です。ここは因果応報という事で一つ。
いつも思いますが、7時でも人は多いですね。立っている人が1,2,3人とちらほら見られます。ちなみに私は座っている人ですよ。
皆さんスーツを着ているところから仕事へ向かっているのですよね。早朝から本当にお疲れ様です。皆さんのおかげで私たちの毎日が守られています。
さて、私たちの戦場が近づいてきました。後一駅です。右肩に寄りかかっている後輩を起こさなければ。この子、寝顔は可愛いんですよね。これが目を覚ますと尊敬の念がまるで感じられない言動ばかり。そんな子にはデコピンを与えちゃいましょう。
「えい。」
人ってなかなか起きないものですね。一回じゃ、ピクリともしません。左手というのも理由にあるかもしれませんが。でも何回デコピンをすれば起きるのでしょうね。少し気になります。
しかし、そのような実験をする時間は私たちに与えられていません。早く起こさないと。
「起きてください。犬養さん。」
呼びかけても反応なし。こうなれば。
「起きなさい。」
枕にしている肩を突き上げてやりました。どんな人でも枕から反攻を受けると目を覚ましますよね。
私の攻撃を受けた犬養さんは左に寄りかかっていた頭が右に振られ、ちょうど右側に寄りそうになったあたりで止まりました。そして、鳩が豆鉄砲を食ったようにあたりをきょろきょろ。
「犬養さん早くおりますよ。」
「ふぁい。」
寝ぼけてますね。返事が返事になってません。
今日は晴れ。気持ちの良い天気と真逆の一日が始まります。