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休欠鬼  作者: 蚊取り線香
第一章~12月~
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第五話

拝啓 本年も押し詰まってまいりましたが、皆様いかがお過ごしですか。新年を迎える準備は終えましたか。私はまだ新年を迎えられる準備ができていません。部屋の大掃除を早くしないといけないですね。目の前にしなければならない仕事があると、ふと掃除をしたくなるのですが大掃除になるとその気がなくなるの、なぜでしょうか。


さて、あれから楽屋に戻りましたが、驚くほど何も起きませんでした。怒られると覚悟して扉を開けたのですが、そのようなこともなく笑顔で迎えられました。気を使ってのことなのかわかりませんが。これが人の温かさというものなのでしょうか。


年末ご多忙の折ではございますが、お体にお気をつけて良き年をお迎えください。あなたにとって来年が輝かしい年となることを願っています。

敬具


拍子抜けといいますか、なんというか。扉を開けると罵声が来ると思っていたのですがね。まぁ、罵声は大げさとなりますが。楽屋にいるのは小鳥遊たかなしさんと犬養いぬかいさんですし。この二人の場合だと、笑顔で「今回もやっちゃたね、疲れてるのかもしれないから、早く寝た方がいいんじゃないかな。」とか「小鳥遊さん、先輩と違って、今日もすごくいい芝居でした。」になるかも。


とにかく、何かしらつつかれると思っていたのです。しかし、実際に掛けられた言葉は注意とか指摘といったものじゃなかったんです。「今日も一日大変だったね」といった世間話的な感じだったんです。日頃の行いが良かったのですかね。


あえて私のミスを避けて話していた。なんて可能性は無きにしも非ず、ですが。それはそれで釈然しゃくぜんとしませんね、子ども扱いされているみたいで。それならいっそのこと怒鳴られた方がすっきりします。


もしかしたらですが、今回お二方から失敗で泣いていた子どもをあやす感じで対応されていたのでしょうか。そして、今している打ち上げは、よくある「頑張ったで賞」のような励ましですか。


「しーちゃん、お疲れ。正座させられたり、床とキスしたり、いろいろあったね。」


冗談めかして言わないでくださいよ。笑いを押し殺しているの、バレバレですよ。

それよりも

「正座させられたこと言わないでくださいよ。後輩もいるんですよ。」


「先輩、正座させられたんですか。」


「ほら、食いついたじゃないですか。こんな私でも先輩としての威厳が。」


「先輩、威厳とか気にしてたんですね。」


この後輩、失礼すぎませんかね。しかし、身から出たさび、言い返す言葉がありません。


「お待たせしました。こちらから、串カツ牛ととんかつ、うずら、アスパラ、つくね、チーズです。二度漬けをしないよう注意してください。」


「頼んだものも来たみたいだし、とりあえず乾杯しようよ。」


店員に軽く返事をしてから打ち上げを無理やり進行させました。それにしても狙ったかのように店員が来ましたね。


「小鳥遊さんも言っているみたいですし、先輩、さぁ。」


そういって、ビールを私の手元に近づけ乾杯を促す。


「わかりましたよ。冷めるとおいしくありませんし。」


「じゃ、始めるよ。せーの乾杯。」


いろいろありましたが、なんだかんだで楽しい一日でした。


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