たった三人の天文部
「好きな人っている?」
天文部の部室。そこに居た男子が何気なくそう聞いた。そう。本当にただの戯れ言のつもりで。
「うん……居るよ……」
ほのかに赤みを帯びたその頬が少し緩みながらその声は発せられた。
ただの戯れ言のつもりだったのに。今まで通りにこれからも過ごせると思っていたのに。たったその短い言葉に、
「そうか」
ここまで心が凍りつくとは思いもせずに。
桧山 光輝
部員数三人。廃部寸前の部活、天文部の部長。現在二年生。幼馴染みである凛に好意を寄せてはいたが、つい先程、撃沈したところである。正直、なんで聞いたのかは、本人にも分からない。とにかく、現在は物凄く落ち込んでいる。暖乃香からやってくる憐れみの視線がどことなく痛い。暖乃香も幼馴染みである。
大場 凛
天文部の部員。光輝や乃々果と同じく二年生。天然で、どこか抜けている。ほぼ常に笑っていて、その笑顔と、どこか守ってあげたくなるような性格から、幾度となく男子の心を虜にしている。しかし、本人にその自覚は無い。告白されそうになったこともあったが、全て乃々果にガードされている。
甘鷺 暖乃香
天文部の部員。二年生。今現在、将彦に憐れみの目を向けている。好きな人は凛。レズなどと言われてからかわれることも多いが、一切気にしていない。始めの頃は友情であったが、それがだんだんと変化していき、いつの間にか恋情へと発展していた。凛に見合う男子が現れるまで譲るつもりはない。




