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六話 思っていた通りの人物像

 放課後。教科書を鞄に詰めていると、僕の前に立つ人影があった。またゼクスかと身構えたのだけど、全然別の人。今朝僕に同情的な視線を向けた、長崎であった。


「空閑、ちょっといいか?」


「あ、うん。いいけど」


 手早く教科書を詰め終えてから、改めて長崎に向き直る。


 ……こうして見るとホント大きいな。僕の身長が百五十ちょっとだから、二十センチは大きいと思う。……大丈夫。きっと大丈夫。成長期が来るだってまだ百五十しかないんだよ止まるなよ身長、病院で計ったら半年前より七ミリしか伸びてなかったけどきっと大丈夫だ!!


 自分で自分が情けなくなっていたが、顔には出さない。長崎の顔がかなり真剣だったので、真面目な話をするのだろう。長崎に高身長の秘訣を訊くのは、今度でもいい。


 長崎は少々悩む素振りを見せて、きょろきょろと辺りを見回す。聞かれて困る話なら場所を変えればいいと思うのだけど、どうやら聞かれて困るのは特定の一人のようだ。僕に向かって、

「原……今朝のあの女と、何か約束とかしてるとか?」

と訊いて来たことからわかった。どうやら、ゼクスには聞かれたくない話らしい。


「いや、ないよ」


「ならいい。転校して来て初日にこんなことを言うのも何なんだが……原とは、あんまり付き合わない方がいい。交際とかそういうんじゃなくて、そもそも会話をしない方がいいってことなんだが」


「話さない方がいい、ってのは穏やかじゃないね。何かやらかしたの?」


 まああの性格じゃ、やらかしてなかった方が不思議だ。


 そんな風に軽く考えていたのだけど、事態は僕が思っていたよりも深刻だった。


「結構ヤバいことをな。夜中に学校に忍び込んだと思ったら、石灰使って校庭に謎の絵描いたり、屋上に余ってた椅子とか机積み上げて迷路作ったりだな。あと文化祭の時に色んな部活から妙な物盗んだり……いや、隠したんだったかな? とにかく、とんでもないことをするやつなんだよ」


 うわぁ……


 全体的に聞き覚えがあると言うか、読んだ覚えがあると言うか。元ネタが思いっきり割れる出来事だらけだ。ほぼ間違いなく、二次元と同じことをすることで何か起きるんじゃないかとやったことだ。そのうち殺人事件とか起こさないよなあの子……


 ゼクスの将来が不安になったりもしたが、今は他人の将来より自分の心配をした方が良さそうだ。美少女補正があっても補正し切れない避けられてる変人って、それもうガチの人じゃないか。長崎の言う通り、関わり合いにならないならその方がいい。


「そっか、ありがとう。出来るだけ気を付けるよ」


「ああ、その方がいい」


 僕も転校して来て早々、避けられたくはないし。


 長崎とはその後、部活の件について話した。今朝部活に入って欲しいと言ったのは長崎だったらしいのだ。

 どうやら長崎は体格も良くスポーツマンっぽいのに文芸部に所属しており、部員がいなくてピンチだったらしい。四月中に部員が入らなきゃ廃部だったのだとか。

 けど僕達が卒業したら、どっちみち廃部だよなぁとは言わないでおいた。長崎が一番よくわかっているだろう。


 文芸部なら途中加入でも問題なさそうなので、通常通り部活動が出来そうだ。たった一年だけだけど。


 入部届を出した後、今日は部活がないと聞いた。どうも部室である図書室が図書整理日で活動がないらしい。なので一緒に帰らないかと誘ってくれた。けど家の場所を訊いてみると、全然別の方角だ。一緒に帰るのは相当の遠回りになるということなので、遠慮させてもらうことにする。

 ただでさえ方向音痴の僕が、違う道になんて行ったら一発で迷子確定だ。下手をすると、今日中に知っている道に辿り着かない恐れだってある。


 そんなわけで、一人寂しく帰る道中。会いたくなかった人と会ってしまった。会ったというか、待ち伏せされていたんだけど。


 大通りの交差点へ続く一本道の、曲がり角よりもだいぶ手前の壁にもたれて立つ一人の少女。手には校則違反のはずのスマホ。中学校だから、特別な理由がない限り持ち込みそのものが本来禁止だ。理由はあるかもしれないからまあいいとして、そんなところでボーっと立たれるのはちょっと……


 見なかったことにしてそーっと通り過ぎようとすると、案の定後ろから静止の声がかかる。


「待ちなさいよ!! シカトって酷くない!?」


「えぇ……」


 面倒に思いながらも振り返ると、わかっていたがゼクスだった。


 なんでこんなところで待ち伏せしてるのかなこの子は。ここ校門から百メートルくらい先だよ? どうして僕の帰り道把握してるの? しかもここ普通に道路だし、待ち伏せ箇所のチョイスが謎だよ? 普通直線の真ん中とかじゃなくて、曲がり角の直後とか手前とかで待たない?


 内心で乱舞する疑問をぶつけるのも面倒だったけど、とりあえずこれだけは訊いておかないと話にならない。


「何か用?」


 要件もここにいる理由にも見当が付いていたけど、一応訊いておく。もしかしたら、僕が知らない何か重要なこととか


「用があったわけじゃないんだけど……そうね、流くんの不思議な力を目覚めさせる方法について話そうかしら」


「だよねぇ!!」


 他にないもんね話題。ゼクスが話しかけて来るのは、僕が変な時期の転校生だってのが理由のはず。だからしばらくの間我慢すれば、飽きてどっか行くとは思うんだけど……絡まれ続けるのも面倒なので、ここははっきり言っておこう。


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