↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/41

三十三話 飛び降り自殺(リベンジ)

 七月三十一日、月曜日。翌日は登校日となっていて、朝はそこそこ早い。


 そんな日の午後五時なんかに呼び出されれば、不機嫌になって当然だろう。遅くなったら、翌日に響くのだから。


「で? なに呼び出してくれちゃってるわけ?」


 不機嫌丸出しでそう言ったのは、どう見てもギャルな格好をした村上さんだ。その横には前にも見た二人の女子。


 僕と同じクラスの黒髪ショートの女子が、菅田(かんだ)舞依(まい)。ゼクスと同じクラスの茶髪ボブが坂田(さかた)美満(みみ)らしい。


 呼び出した張本人ゼクスは、屋上のフェンスの向こうに座っていた。


 さらさらと揺れる腰まである髪は、燃えるような夕焼けに照らされて、作り物ではあり得ないつややかな輝きを放っていた。着ている純白の丈が長いワンピースも同じく夕焼け色に染まり、時折吹く風にはためいている。


 場所がフェンスの向こう側ではなく草原とかだったら、きっとすごく絵になったことだろう。


 村上さんの問いに、ゼクスは静かに答える。


「来たってことは、やばいとは思ったんでしょ?」


「……」


 ゼクスの答えを聞いた村上さん達は、わかりやすく顔を強張らせていた。


 原因は、ゼクスが呼び出すのに使ったメールの内容。


『七月三十一日月曜日の午後五時丁度に、学校の屋上に来て。来なければ、あなた達のしでかしたことの証拠を提出します』


 こんなメールを、三人に送ったのだ。慌てて全員揃ってやって来たところを見ると、自分達がして来たことがどんなことなのかという自覚はあったらしい。だからこそ、余計にタチが悪いのだけど。


 黙る村上さん達に、ゼクスは更に追撃を重ねる。


「いい加減、うんざりしちゃってさ。遺書でも遺して死のうかなって思ったわけなんだけど」


「死にたいなら勝手にすればいいでしょ!? あたしら巻き込むとかマジ最低なんだけど!!」


 最低なのはどっちだ。


 ゼクスも同じことを思ったようで、深々と嘆息するのが聞こえる。


「はー……あんたら、変わらないね、小学生の頃からずっと」


「あんたが変わり過ぎなんだろ!! 昔は三つ編みでいかにも地味ーって感じで、そんでマジで弱くてなんにも出来なかった癖に、いつの間にかわけわかんないことしでかす変人になったんだから!!」


 なにそのゼクス、ちょっと見たい。


 昔のゼクスがどんな子供だったのか知りたい衝動が湧いて来たが、今はそんな場面ではないので自重する。今度、機会があれば本人に訊こう。


「そうかもね。確かに私は変わったわ。なのに、あなた達は変わらない」


「はっ。あんただってどうせ、変わったのは表面のあっさいとこだけでしょ? 変人になっても根っこは一緒の弱虫。だからあたしらが何しても抵抗しなかったんだろ!!」


「しようと思えば出来たわよ。けど腕力で勝ったところで何になるの? 意味ないじゃない」


 ゼクスの言う通りだ。もしかするとゼクスが色んな格闘技に手を出したのは、自衛のためってのもあったのかもしれない。でもそんなことをしても無意味だと悟ったから、村上さん達に腕力で挑もうとはしなかったのだ。


 ただ淡々と事実を語っているというのを口調で察したのか、村上さん達の顔が段々と引き攣って来た。ゼクスがやろうとしていることが、本気だと気付いたのか。


「あ、あんた、まさかマジで死のうとかしてないよね!? 冗談でしょ!?」


「冗談でも伊達でも酔狂でもないわよ」


「ほら、あんたが死んだら空閑とか困るんじゃないの? あんたら、仲いいじゃん!!」


「それを邪魔してこじらせさせたのはあなた達でしょ? あと言っておくけど、飛び降りにしようって提案したのは私じゃなくて、今話に出て来た当の本人だからね? 私はトラックに轢かれるのがいいかなーって思ってたんだけど、こっちの方がいいって言うから」


 言った。確かに、僕が言った。けどその言い方だと、まるで僕がゼクスのことを殺そうとしてるみたいじゃないか。



 まあ、してるけどさ。



「あ、あいつ……!!」


 どうやら、僕も完全に目を付けられたようだ。あとで何かされるだろうか。何をされようと構わないと、今の僕なら言える。この計画を立てた時点で、そんなことは覚悟済みだ。



 ゼクスが、学校の屋上から飛び降りて死ぬという、この計画を立てた時に。



「ちょっと、これマジでやばいやつじゃ……」

「だ、誰か呼ぼうよゆさちー!」


 おたおたと縋るいじめっ子、という名の村上さんの取り巻きで下っ端を、鬱陶しそうに追い払う村上さん。その顔は完全に追い詰められている人間のそれで、見ているだけでも胸のすく思いだ。沈む夕焼けを見る格好のゼクスからは見えないのが、本当に残念で仕方がない。


「黙ってな、あんたら!! とにかく原、あんたそこから飛び降りとかマジやめろよ!! ってか脅しなんだろ!? それにこんなとこから落ちたくらいじゃ死なねえだろ!! ただのハッタリっしょ!?」


「脅しじゃないんだけどねぇ。少なくとも、私が死ぬ時に遺書を遺してるのと、ここからダイブする気なのはマジよ? ここ四階の屋上だけど、頭から落ちれば死ぬでしょうねー」

「んな……!!」


 下が芝生とか花壇の土のとこならいざ知らず、普通にコンクリだ。ここから頭から落ちれば、死は免れないだろう。自力で重力を中和出来る能力とか持ってれば別だが。生憎ここは三次元。そんな便利能力使いは、存在しないのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。