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十一話 想定外の出来事(ラブコメ)

「好きです!! 付き合ってください!!」


「……はい?」


 僕が転校して初めて登校した日から、今日で一か月が経っていた。


 そして本日五月二十五日木曜日、午後一時三十分。


 人生初の、告白というものをされた。


 こんな風に好意を伝えられ、嬉しくないわけではない。けど、僕が最初に思ったのは嬉しい嬉しくないではなく、この子誰? だった。


 地毛なのか染めているのか区別の付きづらいこげ茶色の髪をショートボブにし、ゴールドのヘアピンで前髪を留めている。

 校則では黒や茶の地味なものになっているので、校則違反のはずだ。校則と言ってもこの学校は緩い方なので、あからさまに染めた金髪とか、ジャラジャラ目立つアクセサリーをつけているとかでなければ黙認されているようだけど。


 全体的な雰囲気は可愛らしい感じなのだが、どことなく作り物めいている。有体に言えば、猫を被ってるみたいな。でも告白する時なんだし、普通なのかな? 相手に気に入られようとするもんだろうし。


 スカート丈は割と際どい長さで、階段を登っている時に下から覗けば見えてしまいそうなほど。ゼクスは確か、規定よりも若干短いくらいだったから、ここまで短いと新鮮に見える。ついでに言うと胸のリボンが赤なので、この子も三年生のようだ。隣の、ゼクスと同じクラスの子だろう。


 ここまで分析しているのならば冷静に考えていると思うかもしれないが、全然違う。実は僕はモテモテで告白された経験が豊富だから余裕に構えてるとか、好みのタイプじゃなかったからどうでもいいとか、そういうのでは断じてない。というかタイプがどうたらとか、モンスターを戦わせる系のゲームでしか考えたことないし!!

 ただ単純に、あまりにも突飛な出来事過ぎて、思考のチャンネルが合わないだけだ。言ってしまえば現実逃避と大差ない。


 固まる僕に業を煮やしたのか、目の前の少女は身長がそれほど変わらないはずなのに、上目遣いになるという器用な真似をしながら困ったように言い募る。


「あ、えっといきなり言われても困るよね!! あ、あたしは三年で隣のクラスの村上(むらかみ)結沙(ゆさ)って言うの!! その、何て言うか一目でビビッと来ちゃったって言うか、言っちゃえば一目惚れ!!」


 ひ、一目惚れぇ!? 僕に!?


 とっさにカメラがないか、辺りを見回してしまう。が、そんなもの影も形も無く。それに野次馬もいない。現在地は空き教室なのだが、誰かがやって来るような気配もなかった。


 と言う事は、これって本気の告白? え、でも僕に? だって僕だよ!? 僕だぜよ!?


 混乱し過ぎて口調が乱れる始末だ。それほどまでに、異常事態と言ってよかった。


 落ち着け、落ち着くんだ僕。この子……村上さんは、僕に一目惚れをしたと言っている。ビビッと来たとも。ねずみ男じゃないんだからビビッととかあるわけな――いやいやじゃなくて!!

 なんかこう、どこかしらに惚れられる要素があったらしいのだ。なんだろう。……思いつかないけど告白した当人がそう言うんだから、きっと僕にも惚れて貰えるようなところが一か所くらいあるのだろう。


 で、告白されたわけだ。ってことは当然、返事をしなくてはいけないわけで。


 よくラノベで同じようなシチュエーションを見るが、返事は大半がちょっと考えさせて、だ。僕はそれを読む度に

『いいじゃん、相手の子可愛いしとりあえず付き合ってみれば』

と思う派だったのだが、実際この状況になるとそんなこと出来ない。


 だってそんな適当な感じだったら、相手に失礼だよ? 折角向こうは勇気を出して告白して来たと言うのに、それを可愛いからって見た目だけでなんとなく付き合っちゃうって。


 けどだからって、ここで考えさせてって言うのもなんかこう、かっこ悪いと言うか優柔不断だと思われそうと言うか……


「あの……ダメ、かな?」


 僕があまりにも黙ったままだからか、村上さんがすごく泣きそうな瞳でこちらを見上げて来ていた。


 ま、まずい。一刻も早く返事しなくてはっ……!!


 こうなったら消去法で行こう!! この子と付き合わないとしたら、理由は!?


 1、初対面なので、互いをよく知らない。


 2、僕は一年もしないうちに元いたところへまた引っ越してしまうので、交際が長期化した場合遠距離恋愛になってしまう。


 思い付いたのは、この二点。


 前者については、これから知ればいいという気がする。別に今すぐ結婚とかそう言う話じゃなく、ただちょっと付き合ってみませんか? って感じなのだ。だったら、そこまでかしこまらなくてもいいんじゃないだろうか。


 後者は……うーん、なってみないとわからない。それ以前に、僕がまた引っ越すまでに別れるかもしれないのだ。これに関しては考えても仕方がないと言える。ただ、相手の意思を確認はすべきだろう。


「あ、あの、僕中学校卒業したら、元いたところにまた戻るんだけど……」


「大丈夫!! 今時はLINEでもスカイプでも話は余裕だよ!!」


 かなり自信満々な答えが返って来た。僕はスマホを持っていないのでLINEは出来ないのだが、まあメールとかチャットが可能なら大丈夫だろう。


 これで問題点は全て解決された、のだけど……


 なんだろう。もやもやする。


 何か、違和感がある。何がどう、って言葉で言い表すのは難しいんだけど……この気持ちに近いのは、『漫画や小説とかで、何かしらのフラグが立ったと思うんだけどそれが何かには気づけない時』だろうか。

 ……自分で言っててなんだが、なんだそれ。ここ、三次元だから。フラグとかないから。最近なんやかんやでゼクスに絡まれることが多かったから、毒されてしまったのかもしれない。


 何かが胸につかえているのだけど、その正体はわからない。けどそれが、今この子のことを振る決定的な理由足り得ないのは確かだ。


 だったら。


「え、えと。僕なんかで、よければ」


 こんな風に返事をするしか、ないじゃないか。


 こうして、僕に人生初彼女が出来たのだった。


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