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勇者様・・え、いやマジでねぇて

言葉汚いのでご注意ください。

どうも、何でか知らんけどお告げによって、一応?勇者パーティーに入って何でもやるけど特に取り柄のない中堅やってます。育ちは教会孤児院、年がら年中腹を空かせた弟妹分に肉を食わせるため冒険者ギルドでコツコツ働いてたんです。で、ほら教会育ちなんでなんちゃって神官的な?回復魔法を会得しまして。んで、冒険者になるならいざという時いるだろと攻撃魔法と簡単な剣術を使えるようになりました。結果、程よい依頼なら1人でどうにか…ほらパーティー組むと取り分少なくなるし、ね?別に協調性ないわけじゃなんです、ただ積極性もないんです。そんな日々極まれり、週2でお肉が食べれる様になり弟妹分のお肉ものってきてあー安定してる?な、ちょっと飽きてきたなって時でした。教会本部のお告げとやらで王都に呼ばれまして。勇者パーティーの回復サブで出動命令ですよ。教会本部の指令ったら断れないですもん、パワーハラスメントってやつです。やー面倒くさくて教会籍抜いてなかったのが駄目だったんでしょうかね。だって籍入れとけば教会で寝泊まり出来るんですもん。生まれ育ったお家出るの今さら面倒でしょ。でも考えてみたら今、魔王とかいうのが出て魔物が増えすぎてるからギルドの仕事があるんですよね。え、つまり勇者が魔王倒したら私みたいなスローライフな冒険者は食いっぱぐれるかもしれないってこと。そこで考えたんですけど、勇者パーティーで一生分もらえばいいんじゃないかと。世界の危機を救う選ばれし1人の私ですし(笑)?前金でそこそこもらえるんじゃないですか。がめついって出来れば言わないで下さいね。だって人は1度吸った甘い汁を忘れる事なんて出来ないんです。もう週2の肉がないなんて絶望なんです。


「エルデ!またぼんやりして、もう酔ったのですか?」

私は肩を叩かれ我に返ります。そうここは魔王の本拠地にほど近い最後の町。最終決戦を前に最後の宴にと酒場に来ていました。女性陣は先に上がり、今は残った数人でカウンターに座りお酒を飲んでいますです。はぁ奢られ酒おいしーーーーーーーーー。

私の肩を叩いたのは金髪碧眼の絵に描いたような王子様。いえ、今は勇者をやっておられます人間の一番大きい王国の第五王子様です。20歳前後でまだお若いのですが、気配りもできる実に気さくで良い方です。孤児で平民の私にも仲間として親しく接してくれます。ただ元の身分が高いので少しウゼェ時に振り払えないのが難点です。そして綺麗に整えられたつんつん頭をすすっと撫でると気持ち良いのです。

さわさわ。すげぇなんだこの高級なモップみたいなふわふわ感。

「まだ酔ってませんよ」

「・・・・・いや、酔ってるだろ。人の頭で遊ぶんじゃありませんーっ」

勇者様はそう言いながらお返しとばかりに私のおかっぱ頭の断面を下からぱふぱふします。お前も好きだなコレ。ええ、等価交換ですから許しましょう。うちの教会の神官様はキノコカットしかできないので、教会と孤児院は全員同じ髪型でした。キノコ畑などど失敬な事を言う輩は闇討ちしたのも今では良い思い出です。ちなみに私の髪色は紫色なのであだ名は猛毒キノコちゃんでした。

勇者様の向こうで盗賊が溜息をついています。

「こら酔っ払いどもー、城に帰ったらソレすんなよ。エルデが不敬罪で打ち首だかんな」

「そうかーこのままだとエルデは俺の為に打ち首かぁー」

「そんなー私は勇者様の御心を守る使徒なのに。もうこれができないとか・・私の癒しがっ」

「いや、お前癒されてどーすんだよ。まぁ、騎士様つぶれってからチクる奴も居ねぇしいいか!がははははは」

盗賊が自分の隣に居る鎧を着た大男をバシバシ叩きますが酔いつぶれた騎士は起きません。え、コイツ明日の魔王戦行けんの?

そしてさわさわ、ぱふぱふやめられないとまらない。気持ちいいんですもん仕方ないよねー。

実はこのパーティーには一人ひとり神様から役割を与えられております。勇者様は世界を守り、そして人を信じることを学ぶこと、とか。回復魔法師の帝国王女にはパーティーを癒し、身分を超えて人を慈しむとか・・・。わぉ、王子王女ってのはこじらせてるもんなんすねどんまい。かくいう私へのお告げですが、勇者の御心を守れとのこと。え、何それ。私神官つってもにわかだしなー人格者じゃないしなー。ってことで!そう飲み友とか!悩み聞いちゃうぜー?財布は勇者もちなんだぜぇ?あと、落ち込んでんなーって時に声かけたり、皆との間を取り持ったりね。孤児院の弟妹の喧嘩だったら頭両手に掴んでごちんで終わるんですけどねー大人って面倒臭いデス。でもこのパーティー楽しかったなぁ。

盗賊が笑い治めるといやらしいニタニタ顔で勇者様を小突く。

「で、魔王倒したら勇者様はどの女と結婚すんだよ」

「バダン、まだ魔王倒したわけじゃないんですからその話は早くはないですか」

「そーら、楽しみがあった方が頑張れんじゃん!俺は報奨金たんまりもらって王都で一番美人な幼女を嫁にすんだ」

「「死ね処女房」」

勇者様と私の言葉が被る。ああ、これが友情ってやつだね!以心天心、私たち繋がってるね!お。勇者様グータッチもばっちりですね。よ、ボンボン勇者!

盗賊は酷い女ったらしで方々いくたびにもにょもにょな店に行っている。さんざん女遊びしといて嫁さんは未使用新品の自分好みに教育しちゃうんですーだと・・。なんて男だ。まぁ健全な青年だし?イケメンだし?あ?なんだお前モテるの鼻につくんだよ。でも他の男性陣が娼館へ行く頻度と時間の長さが段違いに違う。あれか、意外とハートにきてんのか・・・生存本能で強制お盛んなのか。憐れな奴め。

「おい、エルデ。てめぇ憐れむのはやめろ・・」

「いえ、目がしばしばしただけです」

「おい糸目、乾くほどまぶた開いてねぇだろ」

「バダンよ・・きっと神も貴方を見守っています。その願い叶うといいですね」

「エセ神官がにやにやして言うなー!」

私は適当に笑ってグラスに口をつけます。こんな美味しいお酒を明日以降も飲めるかわかりませんから。辛くてでも甘くいい香りがします。

勇者様がぽんぽんと盗賊の背中を叩き慰めます。

ええ子やー私が君をなでなでしてやんよ。さわさわ・・。

勇者が私を振り返ります。

「エルデは魔王を倒したらどうするんですか?」

「え、私ですか?―――――うーん。もう報酬は前払いでもらってますし。魔王戦、殉死もありかな・・と」

「「うわー」」

仲いいですねお二人。ハモってますね、あれか勇者スキルなのかハモリって。どんびきですけど予想外って顔じゃありません。

私、パーティー内でもそんなガツガツしてないですしね。必要ないとこではザ・オフ!な感じですから。もう向こう数十年皆で肉食べれるくらい報酬をもらったのです。あれだ、自分でもらっといてあれだけどエサは最後にあげなきゃだめです。最低限しかやる気でないし。

「だって私程度の中堅とかこの依頼終わったら無職だし。神官業もかったりぃし・・・もうこの1年で一生分働いたきがするんですよね。お肉もお酒もいっぱい飲めたしなー。のんびりしたいなー」

「おい、お前一応教会籍だろうが!かったりぃ言っちゃダメ。ってか神籍はのんびり言わんから」

盗賊がチーズを投げてよこすのでお口でキャッチします。お、美味いですねこれ。お酒がすすんじゃうー。もーイケメンたらやーさーしぃー。そして癒しの勇者ヘッドをさわさわ。

勇者様がお返しにぱふぱふ。

「しょうがない人ですね。魔王戦、死なないで下さいよ。帰ったら私がお仕事を斡旋しますから」

「貴方は神かっ」

まぁ、なんて良い人なのか。さわさわで飽き足らずなでなでするとはにかんだように勇者様は笑った。愛い奴よ。私、勇者教に改宗しようかな。

勇者様は魔王を倒した後も大変でしょうに。なんせ世界の英雄ですから。爽やかいい奴イケメンっすから。もうパーティーの女性陣からの秋波ぱねぇっす。まぁ、おそらく女性陣はその予定で参加してきたようですし、勇者本人も素敵ならその気になっちゃいますよ。

回復魔法担当、帝国の第一王女。赤毛のぼんきゅぼんなだなまいてぃー美女。高飛車だけど、慣れない旅にすぐてんぱって意外と可愛い。たまに背後で猫の声で鳴いてみると肩がびくってなる。

攻撃魔法担当、魔法ギルドの秘蔵っ子。神秘的な雰囲気の覚めるような青い髪の少女。華奢で可憐な風貌だけれど、極度の人嫌い。慣れるとべったりしてくる。チョコで釣れる・・・この女釣るのが高くつくぜ。チョコ高ぇよ。なんでそんなに一気に食べれるんだ・・その豪気さに惚れる。

盗賊ギルドのエース。明るい緑色の髪、メリハリの効いた体系はしなやかで肉体美って感じ。いつもは元気な少女!って感じだけど、その・・勇者様を攻めるときはすごい色っぽい。鼻血出そう。

どの子もいい子だし、勇者様が好きだ。だからきっと誰を選んでも良い奥さんになってくれると思う。

――――――そしたら私もお役御免というわけだ。


次の日。勇者様一行は無事に魔王を倒した。大変だった、死ぬかと思った。でも、皆五体満足で生きている。これは大成功ってやつじゃないだろうか。やったな勇者様!超英雄っすよ、もうあと数百年吟遊詩人に歌われちゃうかも。

あれ。でも勇者様全然ひゃっはーしてないな。魔王の死体が消えた血で濡れた祭壇を無表情でじっと見ている。え、何考えてんのこの子。わー分かんない。どうしよ。

私は生唾を飲んで、一呼吸。祭壇に向かい歌を歌い始めた。死者を送る歌を。本当は歌を歌いたくない、下手だもの。でも教会で無理やり覚えさせられた。下手なのに。

パーティーの中で誰かが小さく噴き出した。あ、てめぇ人が一生懸命歌ってんのになんだその態度は。そのうち、また一人・・と思ったら皆笑っている。勇者様を見ると私と目があった瞬間噴き出した。

旅の恥はかき捨て。だから忘れろ。帰り道ずっとくすくすしないで下さい。





「勇者よ・・・」

「何でしょうエルデリーテ」

「え、いや・・マジでねぇって」

「エル・・。貴女の夫なのですからフリートと名前で呼んでください」

勇者よ就職先を斡旋してくれると思ていたのだが、なぜ私は純白のドレスを着て貴方と祭壇の前に居るのか。

・・・・・・・・・・ええっ――――――――――永久就職?


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