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共存の世界の景観 前篇

 愛華は恥ずかしさを必死で抑えようと屋上のテラスに来ていた。

 頭を少し冷やす意味合いもあった。

 屋上のテラスは展望台にもなっていて、カフェもできるようにデッキチェアとデスクが置いてある。

 デッキチェアには一人先客がいた。

「あら? どういたしましたの愛華?」

 久遠時楓、世界共存同盟軍の日本支部の軍事顧問である彼女は携帯片手に振り向いてきた。

 どこかと連絡を取っていたことがうかがえる。

 どこと連絡を取っていたのか気になるところではある愛華だったが部下にすぎない愛華が聞いいたところで答えなど返ってくるはずもない。

「すこし、涼みに来たんですなの」

「涼み? 顔がやけに赤いけど熱でもあるんですの?」

「っ!」

 今だに赤みが抜け切ってなかった顔を思わず手で覆い隠す。

「なにかあったんですの?」

「あ、いえ‥‥」

「まあ、いいですわ。それよりも、彼をどうにか外へ連れて行ってくださることを切に願いますわよ。外部では現在も暗雲が立ち込めてる個所や人がおります。けど、中にはいい人だっているという証拠を見せれば彼も納得しましょう。あとは例の数々の施設などを見せてきてくださるといいですわ。では、頼みますわ」

 そう言い残して彼女は屋上から出て行った。

 最後に残った愛華は屋上から見える新都市東京の風景を眺め、空を振り仰ぐ。

 晴れ渡る快晴の青空に奇妙な鳥が空を飛ぶ。

 その鳥もあの事件によってこの世界に侵入してきた「フィリアス」の生物である。

 まさにあの2017年から随分と変わり果てた地球であり、この世界。

 日本はその変化の最先端である。

 現在は2027年――あれから10年という長い歳月は彼には受け入れがたいものだろうことは容易に想像がつく。

 どうやって、彼の心を開かせるかが肝である。

「彼と久しぶりだったからこそいろんな変化についてけないの。同じように私も彼に対する接し方が‥‥」

 独り言をぼやきながらいると、携帯に着信が一件入った。

 美香というディスプレイに表記がされていた。

「もしもし」

『あ、愛華ちゃん? 今どこ? すぐに行きますよ』

 穏やかな感じの口調で彼女はそういった。

 愛華は逆にそれが助かり落ち着きを取り答えた。

「今、屋上にいますなの。そちらの場所に行きますので場所教えてもらえますかなの」

「こっちはもう会社の出口です。なので、直接来てください」

 愛華は了承の答えを返し、携帯の通話ボタン終了を押し急ぎ出口へ向かった。


 *****


 更衣室の一件から数十分が経過した。

 現在は、竜輝は素直に外出の意図にしたがい女性3人と一緒に電車に乗っていた。

 同行者の顔ぶれは美人ぞろいであり、まわりの視線が突き刺さる。

 義姉たるおっとりしながら生真面目系美女の美香、アイドル性のある顔立ちをした美女の愛華、最後はモデルに負けず劣らない美貌とスタイルの柚葉。

 映画かなんかの撮影かと思われても不思議ではないくらいである。

 ――数分揺さぶられる電車で過ごしある駅で竜輝たちは降りた。

 そこは――

「ここが‥‥」

「覚えてますか? 秋葉原ですよ」

 義姉の美香の言葉を聞いて緊張に体中から汗が噴きあがった。

 まるで、変わっていた。面影のある景観はあった。

 でも、昔行っていたはずの秋葉原とはまるで変わっていた。

 駅名も『新都市秋葉原駅』と改名されていた。

 ゲームセンターや電気量販店、それに駅でパートがあった店はそのままあるがそのどれもが最先端技術を取り入れたかのようなプロジェクトマッピングのような投射映像広告。

 ゲームセンターの数々も人は昔ならコインを入れてやるはずなのだが、なにか手をかざして起動を行っていた。

 空には車がそして、人が浮遊している。

 まるで、昔見たSF映画やアニメの再現がそこにある。

 そう、空中都市となっていた。

「フィリアス人の技術を取り入れたことで日本の技術文明は発展を遂げて今ではお金が全部電子マネーやら魔力電動で機械は動くのよ」

 先頭切って歩きだした柚葉に美香と愛華が続いて歩き出す。

 そこはかつて『U○X』ビルの入口であたエスカレーターだがもう何もなく。瓦解した歩道橋を先端だけ奇麗に切り取った形としてある。どうやって、UDXまで入る通路になるのか。

 周りにはフィリアス人の存在が見え心外そうな表情を浮かべながら彼らの姿を観察した。彼らは先端部分にまで浮遊して歩道橋に足をつけた。

「魔法が使えない人はここからはもう渡れなくなっています。ですから、素直に奥まで進んで階段を利用するしかない状態です」

 と説明をくれる美香はそのまま竜輝に一目投げただけで先へ進んでいった。

 先ほども電車の中で複数見かけてはいたが本当にフィリアス人と共存してるのだなと竜輝は実感した。

 何食わぬ顔でフィリアス人がカフェ店員となって広告配りをしてる姿もちらほら。

「どうぞー」

 竜輝の前に駅近くのカフェのフィリアス人、種族は竜人かの女性がチラシを渡してくる。

 そのチラシも映像チラシ。まるで魔法のようにチラシの広告が動く。

 彼女はこちらのことなどただの呼び込むための客人としか思っていない姿が見える。

 竜輝は信じられない気持で満たされ動揺をしていると――

「りゅうちゃん、何してるんですか? 早く来てください」

「あ、ああ」

 すぐに声をかけられて竜輝は後に続けて昔よく歩いていた電気街口から出て5分ほどの店が軒を連ねる中央通り沿いに向け歩みを進めるのであった。


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