表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

邂逅

 リュウキ――竜輝はこの数十年の間この魔法を主流となった異世界、フィリアスという異世界で生活をしてきていた。

 いや、生活といえるものか。

 ほぼ奴隷のような扱いを受けながら犬のように扱われてきたというほうが正しい。

 何度も何度も殴られけられひどい仕打ちを受けひどいことをさんざんやらされてきたのが竜輝であった。

 またしても、その奴隷のような扱いで食材の買い出しと道具一式の配送準備を終えた竜輝は家へ向かい足を進めていた。

 本来一人ではつらい作業を今日も竜輝はひとりでやり遂げた。

 武具に関してはやはり、手持ちでのことはできなかったので配送にして正解ではあったが帰ってからしかられないだろうかという一抹の不安を抱きながらの帰路である。

 街にはまだまばらに人が徘徊しており、軒並み連ねる店の主人たちの視線が突き刺さる。

 竜輝はなにせ、有名人でもある一方で奴隷なのに代わりはない。

 最初のころは奴隷というレッテルで彼を嫌悪し周りの連中からひどい仕打ち、金の過剰な上乗せ販売やら、体をわざと充てられたりなどの嫌がらせなどを受けていたが現在においてはそれもなくただ物珍しげな視線を浴びせるだけであった。

「なあ、あれって」

「昨日の敗戦したリュウキだろ。まじでうぜえ。あいつのせいで俺借金まみれだぞ」

 いわれもない憎まれ口をたたかれまくりながら早足にリュウキは次第になっていった。

 目の前にその足を阻んだ3人組が現れる。

 ガラの悪い顔つきをした短パンにワイシャツを着たこの店先近くにいる傭兵連中だ。

「よぉ、奴隷のリュウキさんよぉ」

「あんたが負けてくれちゃったせいでぇ俺ら借金だ」

「どうしてくれちゃうちゃうかなぁ?」

 勝手すぎるやつあたりを竜輝にぶつけるように襟首をつかみあげ締め上げていく。

「知らねえ‥‥」

「んだとぉ? 主人のしつけがなってねえなぁ」

「ちょっと、こっち来いよ」

 そのまま強引に腕を引いてく3人組。

 竜輝も必死に嫌がり抵抗した。

「離せ。俺は帰るんだ」

「こちとら、借金の借りがあるんだ!」

「俺は知らねえ」

 そのまま抵抗力はむなしく、路地裏まで引きずり込まれる。

 誰も来なさそうな路地裏の突き当たりの角。

 ゴミの山がどっさりとおかれた場所に竜輝は殴り飛ばされる。

 そのまま腹を踏みにじられ、昨日の戦闘の痛みが過激化しだす。

「あがぁ‥‥」

「げははは! てめぇ主に治療さえしてもらえてねぇのな」

「兄貴の言うとおり俺ら3人でも今のこいつ余裕だ」

「マジで余裕余裕」

 弱り切ってしまってる体では竜輝も彼らには確かにかなわなかった。

 しかも、3人では不利である。

「くそっ」

 こぶしを振りかざしたもこぶしを受け止められてまたゴミの山に沈まされる。

「本当にどぶのような人間だなぁ、元王者リュウキさんよぉ」

「ぎゃははは!」

「ぶははは!」

 げひた3人の笑い声が日の落ち沈んだ夜空に響き渡った時だった、頭上から影が落ちると同時に3人組の男の竜輝をいたぶっていた頭角の頭に人が落ちた。

「あぐぅ」

 男は一瞬にして気絶した。

 両脇に控えていた男どもは目を丸くし、何が起きたのかわからず頭の集束を急ぐ。

「な、なにもんだてめぇ!」

「兄貴をよくもよくもぉ!」

 二人組の傭兵が剣を引き抜いたときに路地裏に新たな者たちが現れた。

「やっと見つけたぞ!」

 それは王族の腕章をつけた王族騎士団。

 どうやら、彼らが名指ししてるのは上から降ってきた全身をローブで覆い隠す人物。

「ちっ、ちょっと、あんた大丈夫? 一緒に早く行くわよ」

 女の声がローブの人物から聞こえ竜輝に声をかけた。

「あんただれだ?」

「昨日の相手の顔も忘れたわけ? まったく、とんだ馬鹿男ね」

「昨日の相手‥‥」

 ローブからのぞいたのはきれいな顔立ちをした金髪の美女。

 その要旨の特徴的な泣きぼくろが昨日の記憶をふつふつとよみがえららせた。

「あんた‥‥っ」

「話はあと、いいから一緒にきて!」

「なんでだよ」

「ああ、もう! 来なさいよ! こっちはあんたを連れてかないと怒られるんだから!」

 彼女は強引に竜輝の手を取り魔法を唱え宙に浮かび上がる。

 そのまま一軒の屋根に着地し軍事走行方法パルクールの要領で屋根を飛んでは着地飛んでは着地一軒一軒の屋根を伝い走っていく。

 竜輝もパルクールを駆使し並走した。

「まさにラッキーよ。あなたを迎えに行こうとして脱獄したところ偶然にも街中で見かけられたんだからね。――ったく、ミスったわまさか侵略派につかまることになるなんて」

「迎え‥‥」

 騎士団が地上で追いかけるのを別に気にしたそぶりもなく彼女は余裕綽々と話しだした。

「迎え‥‥?」

 竜輝も彼女の言葉に耳を傾けつつ、「迎え」という単語を昨日の記憶から鮮明に掘り起こして最後の気絶するときの言葉を思い出した。

『あとで、迎えに行くわ。それまで眠ってなさい』

 彼女はそう言いながら竜輝を攻撃して勝利していた。

 竜輝はあれによって無敗王者の称号を失い先ほどのような目に逢っていたが今はそんなことどうでもよくなっていた。

「あんたのせいで俺はっ!」

 途端に怒りがこみ上げユズハと呼ばれていた彼女に掴みかかったが体が反転し背に激痛が走る。目を回し自分に何が起こったかということを考え推測した。

(まさか、俺‥‥投げ倒された?)

 またしても彼女に手足一つすら出せない。

「あなたの敵は私!? いい加減に現状を把握しなさいよ! あなたはこのまま利用されてていいわけ! 馬鹿なの! あんな奴らに利用されたくないなら私の言うことを聞いて一緒に逃げるわよ!」

 彼女が諭すようにして冷徹すぎる瞳ながらもしっかりと相手を機使う優しさを醸し出す言葉。

 その時に鮮明に冷静さを取り戻す。

 そう本来の目的、思いは復讐の熱。

(冷静さ‥‥、そうだ‥‥敵はこいつじゃない‥‥おれの敵はあいつらだ‥‥昨日思ったことをまたすぐ忘れてた‥‥俺はこいつを利用して‥‥)

 失笑を浮かべながら頭を下げて謝罪を述べてつづける。

「あんた‥‥いったい‥‥その言語から察するに向こうの世界の人間なのか?」

「ええ、そうよ。そういうあなたも元は向こうの住人でしょ。2017年までは」

「っ!」

「私は政府のある任務によってあなたを救出にきたのよ! ――っと話してる暇はなさそうね」

 彼女が一軒の住宅の屋根に着地する。

 前方に二人組の鎧を身にまとう騎士。

 王族の魔道騎士である。

「そこの囚人。ただちに投降しろ。投降しなくばこの場で抹殺する。そこのものも彼女をかばえば貴様も抹殺対象だぞ」

「まったく、あいからわず未だにこの世界の住人の中には共存という考えを持たない連中もいるわけね。まあ、それもそうよね、ここは侵略派領土なわけだしね」

 彼女があきれながら右手に光の剣を出現させた。

 一種の造形魔法だ。

 高度な技術を要するためにこの魔法を習得するのにも魔道のプロでも1年はかかるという魔法。

「っ! 全軍剣を構えろ! ヤツは強力だ」

 相手の騎士がジリジリと後退する様子。

 だが、もう片側の騎士は腕に覚えがあるようで後退せず攻撃を仕掛けてきた。

 空中を飛びだし彼女に向け雷の魔球を打ち込んだ。

 光の剣が魔球を切り裂く。

 その間に騎士は彼女と間合いを詰め腰から剣を引き抜き切りかかる。

 彼女も余裕の表情で防衛を取ろうとしたが後退した騎士が魔法を放っていた。

 ダブル攻撃である。

 さすがの彼女でも同時攻撃に足場の悪い屋根の上では対応が難しい。

 竜輝はそれを見越して飛び出し放たれた魔法を魔球で相殺する。

「なっ! 貴様女の味方をするか貴様も抹殺対象だ! 偵察兵、今すぐ救援を出しておけぇえええ!」

 切羽つまった言葉を発しながら背後へ呼びかけながら斬撃を再度放った。

「おい、女いまだ!」

 彼女は騎士の斬撃を斬撃で斬り飛ばした。

 地上に落下していく騎士を見ろしてから彼女はこちらを見て微笑んだ。

「ありがとう、助かったわ」

 初めてお礼を言われたことに竜輝は目を丸くして照れくさくなって視線をそらした。

「礼を言うのはこっちだ。さっきの借りを返したとでも思ってくれ」

 和やかな空気が一瞬流れ出したがその空気が長くはつづかなかった。

「おいおい、うちの奴隷はなにやってんだぁあ?」

「オヤジ、こいつやっぱだめっすよ」

「リュウキ、囚人に手を貸すとはな」

 いつの間にかリュウキと彼女たちは囲まれだしていてその前方には二人のエルフとウェアウルフの男が立っていた。

 そう、リュウキの主であり仇である。

「マスター、メスイさんに‥‥ゴウ‥‥」

 リュウキは緊張の面持ちで自分でよく彼らに呼ぶ名を口にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ