円卓会議
東京の某地区内にある大きなコンクリート平米の施設がある。
それは国家が管理運営する組織の本社ビル。
地上20階建てという高層ビルの最上階の廊下を毅然とした態度で畏怖堂々とした感じであるく一人のダークスーツを着用する美女。
首元から下げた社員証パスがこの組織の関係者である証であるためにだれもがその年端も若い彼女を不審者などとは思わない。逆に敬礼をして下手に出るものばかりだった。
それもそのはず。彼女は世界共存同盟軍の日本支部、支部長兼軍事顧問、久遠時楓である。
楓は一つの扉の前まで来て扉の戸を数度ノックする。
「入れ」
おごそかな男性の声が聞こえ、ゆっくりとその扉を開く。
「世界共存同盟軍、日本支部長、久遠時楓お呼出において着任しました」
「うむ、そこに掛けたまえ」
部屋の中は会議席のように円卓上に配置されておりそれぞれに厳格な大物議員や政治家たちが雁首を揃えていた。
「では、彼女も無事来たことだしを話をすすめよう」
円卓の中枢、一番のトップが座る席に世界共存同盟管理観察官庁兼日本国防衛大臣である井伊熊武雄の言葉と同時に円卓の輪の中心にひとつ映像が浮かび上がる。それは3年前に起こった共存反対と共存推進の派閥によるデモ抗争である。ある神奈川県の市内において起こったそのデモ抗争は連日にわたりマスコミが騒ぎたてニュースにもなり数多くの負傷者を出した。
警察や共存同盟軍である楓たちもその抗争を止めるために必死な活動を行った。
「3年前に起こったデモ運動において数多くの人口が失われたのはみな語zんじであろう。その結果共存の活動が停滞を極め、深刻化した事態に陥った。特に昨年度までは10校ほどあったフィリアス人を取り入れる傾向にあった共存学校は現在では1校のみである。加えて魔法を専門的に教えてくれる教員の激減である」
3年前の抗争は共存の継続化を不安定にさせるほどの社会問題であった。
そのせいで彼が言ったように未来ある若者たちの教育方針にも問題が生じ、若いフィリアス人を受け入れられる学校が激減した。
「われわれはその対応策としてデモ後にすぐに育成魔道連盟施設を立ち上げ、未来ある若者を共存の同盟者に仕立て上げるための軍事強化学校を設立した。結果はまずまずといったところであったことは資料に記載された通りである」
楓も手元に渡っている資料に目を通す。その施設に入ってきた生徒の進捗状況をグラフにしたものであり上上がりに増加傾向している。
「だが、その連盟施設において問題が生じた。増加につれて教育方針に問題が起こることとなった。それは人間とフィリアス人の主観性及び教育性である。特に魔道方面は人間の教師はおおらずフィリアス人のみでありフィリアス人の教師が人間に魔道を教えると熟達できないという苦情が政府へかかることで我々は長らく放置してきていた運勢竜輝拉致問題を解決するにいたった」
楓は当日のことを苦々しく思いながら話の腰を折らずに聞き入っていく。
「彼はこのたびにおいて正式に任務につき、学内で教官となってくれた。ここから本題であり、諸君らに集まっていただいた要件になる」
映像に昨日に起こった事件の写真が出てくる。
「昨日、育成魔道連盟施設で鏑木・イリース・マフィル教官は何者かによって暗殺をされた。このことで連盟施設に当日から我々のものが施設に潜入することを分かっていたかのような挑発するかの事件が起きてる。これは宣戦布告と私は見ている」
「宣戦布告ですか‥‥」
一人の髪の毛が乏しい政治家が物静かにつぶやいた。
「宣戦布告となると、潜入してる者たちは真っ先に狙われるのでは?」
「ああ、そのために彼らには常に二人一組の行動を優先してもらっている。そこで、話を戻すと私はこの任務の情報を侵略派に漏らしたものが内部にいると踏んでいる」
「そういえば、昨年度も内部においてクーデターを企てようとしておりましたフィリアス人がおりましたなぁ」
オールバックにした男性の国家関係者の人物がにたつき、いやらしい感じでそんなようなことをほざき空気を重くさせていく。
「あれは確か安全保障のほうが問題でしたよねぇ? またそちらが問題では?」
「我々のミスだと貴様はいうのか!」
「あらぁ? ちがうんですかねぇ」
小柄の七三わけメガネの男性議員が痺れを切らし椅子から立ち上がった。
まるで嫌味なような笑いを永遠と続けるオールバックの男性は厚生労働省の人物。
厚生労働省はとくにこの教育問題には常日頃から頭を悩まされてるので今回の事件がまた共存の教育問題を過剰に悪化させ労働の法則に変化をもたらしかねない。
特に3年前はフィリアス人を地球で働かせることはしてはならないとかいう問題とかで厚生労働省は頭を悩ませていた。
実際問題は解決し現在ではなんなくフィリアス人にも労働規約が設けられた。
だが、この事件を機にまたその問題があがれあたまったものではないだろう。特に3年前の問題は国家安全保障の裏切り者がいたせいで過剰なデモ抗争となっているわけである。
「志位崎大臣」
井伊熊大臣の強みのある言葉で名前を呼ばれた厚労省の志位崎大臣は笑いをやめ、舌打ちしながらどっかりとふんぞり返った。その態度の悪さに周りの目が険しいものになる。
「では、このたびのことで分かったことを久遠時支部長、説明を」
楓は言われるままに席を立ちあがる。
「はい。ええ、今回、育成魔道共存連盟施設において潜入調査員が3名付いた当日の午前、体育技館なる場所の壇上席で鏑木教官が死亡してるのを数多くのものが発見いたしました。まず、鏑木教官が死亡する段階までなのですが――」
楓は聞きかじったあの事件の詳細を細かく周りに伝えた。
すると、七三わけの安全保障の議員が挙手をする。
「すまないがこの「サイレントミミック」なる魔法というのが掛けられて殺害されたというのは確実性を帯びてるのかね?」
「それは現段階では何とも言えませんが調査員の運勢竜輝からの検視からそうではないかと私は言伝を受けましたわ」
「なるほど、となれば彼も容疑者ではあるな」
「どういういみでしょうか?」
「彼は特に長い間フィリアスで生活をしていた人間だ。今回の事件に関与していてもおかしくないだろうし彼の発言が信憑性はない。ならば、彼が殺して惑わしてるということもあるのではないかね?」
「それは‥‥」
安全保障の大臣の発言はたしかにそう考えてもおかしくない内容である。
「おいおい、馬鹿か。安全保障のやつはこれだからな」
志位崎がげひた笑いでまたしても挑発的な態度をとる。
「運勢竜輝の情報をあんたは詳しく知らねえのか? こいつはここに来る前に自らの手で自分の育ての親を殺してんだろう? だったら侵略派の線はねえ。あと、もしかりにそれも作戦のうちだっていうなら真っ先に殺すべきは久遠時支部長じゃねえかよ。最初に出会ってる存在を真っ先に殺すのが妥当だろう。しかも、大物でこの共存同盟軍の戦争を動かすトップだ」
「うぐっ」
志位崎大臣の発言を引き金に次第に運勢竜輝容疑者節が薄れ始めていく。
結果として安全保障はやはり使えないムードが際立つ。
「話の続きをしたまえ、久遠時支部長」
「はい。えー、鏑木教官の死後、その死体を処理した海馬聡教官30歳男性が行方不明になっていますわ。調査員からの情報によりますと彼も何者かに殺されたとなっています。この情報から推察するに侵略派による挑発的テロ行動を助長するものではないかと考えていますわ」
「なるほど、確かに昨日とある市内で侵略派の一味による爆破事件が起こったことは知っているな」
久遠時楓は国防大臣の発言には聞きおぼえがある。昨日未明に神奈川県某市内の共存同盟の市役所が爆破を受けていた。
侵略はにおける共存混乱を起こさせる事件だとして取り上げられ現在犯人を警察が捜索中であるが未だに見つかってはいない。
「昨日の事件は私どもの管轄の市役所が爆発されたことでフィリアス人たちの地域的問題が起こり始めている。そして、事件の犯人はどうにも学生であるという話を先ほど警察から預かっている」
『っ!』
学生ということはまだ若い人。連盟施設には侵略派がいるということで今回の調査が始まったがまさか――
「今回調査員たちは侵略派がいる可能性があるための調査であることはわかってるだろう。私はこの育成魔道連盟施設に犯人がいるのではないかと踏んでいる」
一拍の呼吸を置いて映像を切り替えた。
大型の円形型の装置。
それはこの世界を支える供給源とも言える装置で世界にとって欠かせないもので、共存世界の成り立ちを作れるなくてはならないもの。当初この装置を作るために多額の税金や財産が支払われた。それによって経済面が不安定化したのは痛手であったがすぐに対処は立案された。
これはまさに共存世界の政府の財宝と言っても過言ではない。
「なぜなら、あそこには政府の秘匿財産であるこの世界の共存を担う維持装置、魔力エネルギー回路があるからである。いつどこで、この財宝が眠ってる情報が露見したのかは分からないがそれでも侵略派もあの施設のどこに眠ってるのかはまだ見当は付いてないだろう。だからこそ、早急に彼らに壊されないようにするためにも――」
ちらりと、真剣なまなざしが楓におくられた。
「久遠時楓支部長、彼らには早急に監視をさらに強化するように伝えてくれたまえよ」
「はい」
楓はその話を聞いて不安に掻き立てられた。
妙な胸騒ぎが起きて息苦しくなる。
(あの子たち何もなければいいですのだけど)
そんな気持ちを胸にしながらも会議は進行していく。
前方にいるフィリアス人の人物目が合う。
「では、続けてフィリアス人の共存派代表から話を聞かせていただけますかな」
どっかりと腰を上げたのは大柄な体格に体表全体が毛におおわれ、似合わない漆黒のスーツに身を固めたライオンのような顔つきをした男性のフィリアス人である。彼はフィリアス人の共存派代表、フィリアスにある文明国家、「グリアス王国」王子、アンドロフ・グリアスという人物である。年齢は40過ぎだと人間の年齢換算にすれば値するという話だ。実際の年齢は500。
楓は記憶の中でその細かな情報を掘り起こして彼を見つめる。
「フィリアス人共存派代表、アンドロフ・グリアスというもんだ。このたびの席を借りて相手の新たな情報を提示させていただきたく思う」
アンドロフは獣人族という種族らしいふてぶてしい声色で申し立てを開き、手元でなにやら操作を行うと映像が切り替わる。
そこにはどこかのマップが表示された。
「これは我々フィリアスの世界のマップであり現在、侵略派の領土進行図を示したものであるんだ。これを見てわかるとおりだがまずまず現段階において侵略派の数は増したと言えるんだ」
地図はまるでアメーバが他のようなギザナミの形状をした地図表記である。それが赤と青で区分けされていた。赤が侵略派であろうことはわかり北側から赤がどんどんと年号を進めてく旅に侵食していく。
「我々陣営ももうすでにフィリアスでは力はなくこちらに移住する決断を行っているんだ」
その発言にはさすがのこの円卓会議のVIP陣が慌てふためき、動揺しながら「どういうことだ?」「では、地球の人口が増加するのか?」「経済がまた不安定になるぞ」と未来の心配が懸念される発言がなされていく。
「静粛にしたまえ」
一喝した伊井熊の台詞に皆がおとなしくアンドロフの言葉に耳を傾けた。
「ゴホン。移住の件に関しては我々も了承願う一方で我々もできればかえりはしたいんだ。話はそれたが本題に移るんだ。相手の数名の情報が割れてんだ」
ページが切り替わり表示されたのは画像はないものの名表だけ出てくる。
名前もわずか10名分だろう。
「これはクマで我々も推測だ。相手は用意周到に今まで他者を操り影武者を仕立ててきた国であるから我々も情報にほんろうされ今まで答えにたどりつけなかったんだ。どうにか頑張って導き出したのがこの名前だ」
映像に出された名前は共存派代表と書かれたもの。
「この人物は本来数年前に亡くなってるんだ。亡国の姫様だ」
さすがの情報に皆がコイツ何言ってるんだムードだった。
「皆の気持ちわかるんだ。僕の部下があらゆる調査を行い、この姫様の目撃があったことを指摘したんだ。姫の名前はネサ・ジョクーカ皇女だ」
フィリアス人特有の特殊な名前であり、一瞬だけ聞きおぼえがある感じがした楓であったがでも名前には一切見覚えも聞き覚えもないはずなのである。そのようななめの人物に知り合いなどいないはずなのに。
「彼女は悪魔族だ。他者を操ることにたけた十分な極悪人だ。過去には領土戦争のために敵国内部に自らの仲間を潜入させたり自らが潜入して国をノット他経緯もあるほどの狂気性だ。十分に今回の内部犯行に結び付くんだ」
などと語られ、全員が納得の意識を見出した。
そうなると、彼女の可能性は有力となろうがけど、それだけでは甘い。
「けどよぉ、あまくないんじゃねぇか? 彼女という確証はないんだったらぁ、彼女じゃない可能性もあるわけだぁ。それにお宅らはこいつの顔を知ってるってわけじゃねぇンだろぉ?」
志伊崎大臣は案の定痛いところを指摘した。
財務大臣も「確証がないのにその人物が犯人だろうと指摘するのはどうなんだい?」という当てつけた発言までされアンドロフの顔は次第にこわばり始めていく。
「私の話信用できないんだか?」
険悪なムードに変わりかけたところで――
「アンドロフ代表、このたびの情報をありがたく使わせていただく。ありがとう。まず、先に環境のことの話し合いもしたらどうだろう?」
「ん? そうだな。そうしたほうがいいだか」
伊井熊のうまいそらし法でどうにか場の鎮静化に成功した。
これにより話題は環境問題に転じ、今後の魔法化社会にどう地球は改善すればよいかという話へとなっていった。
その際にも楓の頭の片隅にはアンドロフが出した侵略派代表格の名前が逐次離れなかった。