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闇と協力者

朝の挨拶で質問責めにあわされてげんなりした表情で教官室で竜輝は額を机に打ち付け突っ伏した。

「ほっほっ、竜輝教官は随分生徒から人気あるようですなぁ」

元警察官である無精ひげを生やした人間の男性であり、学園では情報調査と体術訓練指導員の教官である工藤善次郎がからかうようにしてその肩に手をおいて同情したように微笑んだ。

「私も就任直後はいろんな技を教えてくれとせがまれましたよ。特に男子生徒が多かったのは否めなかった。その点竜輝教官はうらやましい」

「あはは」

 まるで、エロオヤジ発言をする彼の言葉が竜輝の肩を少しだけ軽くする。

 朝の登校後のクラスあいさつはまるで地獄。

 いるんなクラスから生徒が押し寄せ魔法やプライベートのことまでと幅広く質問を敷いてきて答えを返すまで何があっても返そうとしなかった。

 特に、柚葉と愛華と美香。あの3人についての話題がとんでもない。

 昨日の事件などどうでもいいとでも言いたげな感じでその手の話題を持ち出す生徒ばかりである。

 普通は事件のほうが話題性は多いと思ったが甘かったと痛感する。

「事件のことばかり聞かれるかと思えば自分のことばかり聞かれてもううんざりっすよ」

「ほっほっ、生徒も年齢の近いあなたのことが知りたい年頃なのですな」

「そういうもんっすか? 普通はあんだけの事件のほうが気になるもんじゃないっすか? 新米教官の話題性より」

「ここは軍事学校ですぞ、運勢教官。事件など彼女らにとっては目にすることなど多々あるのですな」

 なんとも竜輝にはわからない理屈を述べて彼は書類業務に手を動かし始めた。

 邪魔をするのは悪くあり竜輝も仕事へと取り掛かる。

 授業で使う魔道教材のプリントをホチキス止めする作業及び、人間にも分かりやすく赤丸をつけ要点個所を入れる。

「運勢教官」

「ん?」

 名を呼ばれ顔をとっさに挙げると出入り口で九条責任者が待機しお呼出。

「ちょっといいいでしょうか?」

「はあ?」

 意味もわからず彼女のもとに行き一緒に廊下を出る。

 そこで、ぎょっとさせられた。廊下にずらりと生徒が見物しに来ていた。それも竜輝に向け手を振ってきているからこそ見物というのがわかる。

「まさか、これの問題でお呼出っすか?」

「はい? 違いますよ。ふふっ。別件です」

 『別件』という言葉を発した直後の九条責任者の表情は精悍な顔つきに変わり直感でいやな空気を感じる。

 重々しい足取りで施設管理責任者室に入室。

「やっときましたね、リュウちゃん」

「美香姉さん?」

 責任者室には先客の美香が待っていた。

 更なる不安が頭をめぐり何かあったのだと悟る。

 でも、その何かがあるのであれば竜輝だけを呼び出す要因範囲かとなるがそれも仕方ない。他2名は現在は生徒を装うためにも一般生徒を装う必要があるのだろう。

 この朝の10分休みの間にそれを行っている。

「ごめんなさいねぇー、呼び出したのは昨日から海馬聡教官が行方知れずなんです」

「海馬聡?」

「我が施設内で唯一の男子棟側で実務処理や銃器の製造や社会情勢など教えてる教官です」

「昨日、遅刻してきた教官いましたよね?」

「ああ」

 美香が補足した説明のおかげですぐにピンと浮かび上がる。

 あの事件のことでまとめ作業を終えた後に死体をどうするかという話し合いに及んだ後に体育技館入室してきた30代くらいの男性教官がいたことを思い出す。

「その教官が本日、勤務してこないんですよ。電話もいたしたんですが奥様からの話ですと朝方にも帰宅をなさっていないとのことでしてね」

「それで、昨日の深夜のこの場所の監視映像を調べたんです」

 美香がそう言って端末を操作し空中投影の映像ディスプレイを見せた。

 そこに映ったのは深夜に焼却室に死体を運んでいく白衣の男性教官の姿。

 室内で死体を燃やして数秒後、映像がぶれ出しブラックアウトする。

「おい、くらくなったぞ?」

「いいからこのまま見ててください」

 早送りをして数分後、映像に映ったのは何者かの後ろ姿とその手に持つ丸い何か。

 いや、それが何かすぐにわかった。竜輝は何度も暗殺を経験してきたりしたからこそその物体は見慣れている。

「生首」

「海馬聡教官ですねぇ」

「っ!」

 九条責任者が青ざめた表情で目を伏せて一言現実味のなさを際立たせることを告げる。

「なぜそうだと断言できるんすか?」

「長い間ワタクシのもとで働いてきたもの顔の形くらいはわかります。間違いなく彼でしょう」

「裏庭のほうで彼の血痕が見つかってます」

 美香が端末を操作し中庭の写真を見せた。

 確かに赤いシミのようなものが映ってる絵だ。

 美香を疑うわけではないが本当に血痕なのか疑わしいのもある。

 疑心暗鬼に駆られてると扉がノックされる音が響く。

反射的にびくつきながら扉を見据えた。美香と九条責任者は誰だかわかってる様子で九条責任者は入室を許可した。

 入ってきたのは――

「失礼いたします。大学部2年蓮杖鈴呼び出しにて着任したのですが‥‥」

 竜輝が登校初日に施設正門で出会った門番をしていた美女。

 たしか、その理由は風紀顧問という施設内の問題対処係りのような役職を行ってるからだと記憶している。

「蓮杖さん、こちらへ」

 彼女は九条責任者の指示に従い九条責任者の前へ。つまり竜輝と美香の傍らに並び立ち二人に挟まれる形となる。

「なんでしょうか?」

「実は昨日の問題で施設内ではいろんなことが危険になる恐れがあるわ。だからね、今からそこにいるあなたと同じ大学部2年の運勢美香さんと一緒に学内パトロールを行ってほしいの。午後からは運勢教官も一緒に回ってくれるからねぇ」

「それは確か昨日伝えていた件ですね」

「ええ、そうよぉ」

 竜輝は朝方美香たちと交わした言葉を思い出す。容疑者を観測するのにもうひとり仲間がいるから安心してという内容だった。

 それはこの彼女ということか。

「‥‥九条責任者、お言葉ですがこの新任の者たちを信用していいんでしょうか? 私にはまず疑うべきはこの2名だと存じます」

「ふふっ、大丈夫よ。彼と彼女は信用できるわ。ワタクシを信じなさいな」

「‥‥九条責任者がそういうのであれば信じますが‥‥」

こちらを疑心に満ちた瞳でにらみつける彼女の目は痛いほどに心を射抜かれる。

 なにもやましいことなどないのに。

「では、行くぞ。運勢美香」

「堅苦しいのはやめてほしいです。美香だけで結構ですよ」

「なら、いこう美香」

 そう言って二人は出ていく。

 例の容疑者観察というところか。

 というのも容疑者とはつまりは生徒全員である。

 学内パトロールというのはそういうことなのだ。

「あのぉ、それで俺は戻っていいんすか?」

「あ、そうね。待って頂戴。あなたを呼び出したのはもう一つあるんですよぉ」

 そう言いながら九条責任者がなにかを手渡す。それは小さい四角型の機械。

「これは?」

「生徒ひとりひとりにつけた交渉へ遠隔で言語を発信し物事を教えることができる伝達通信機です」

「つまり、トランシーバーみたいなもんすか」

「そうですね」

 なぜ、そんなものを渡すのかは彼女の言う言葉が適してる。

 魔法においては空中浮遊してしまった際にこちらも浮遊して一緒になんて教えるわけにもいかない場合が生じたりする。

 そういうときの対応策ようだ。

「ありがたく頂戴いたします」

「ええ、では授業のほうお願いいたします。1次元目は1年生の合同魔道実技ですから」

「はい」

 そのまま竜輝は説明を受け退室していった。

 授業開始のチャイムが鳴り響く。

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