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暗闇の殺人

 白い壁や鋼鉄の素材でできた大きな施設――育成魔道共存連盟施設の某棟の内部で夜中に一人銀着の袋に包み担架に乗せたあるものを運ぶ教官が一人いた。

 時間は夜の10時である。

 この時間帯になると施設内も午前中から午後にかけての賑やかさはなく、殺風景とした状態となる。

 その殺風景な施設内の廊下を担架の車輪の音だけが響く。

「はぁー、なんでぼくっちが」

 担架に乗った物を運ぶように頼まれてしまった教官は大仰にため息をつく。

 でも、彼が人選として選ばれたのはある意味罰である。

 遅刻が多い不良教官である彼は九条責任者の怒りを買いこの死体の始末を言い渡される。時間まで指定を受けた夜勤作業。

 この後に控えたパトロール業務も彼は憂鬱である。

「なんで――」

 俺がという言葉は再度漏れたためいきにかわる。

 ついにある部屋の前にたどり着いた。

『焼却室』と扉に書かれている。

 九条責任者からの命令で殉職した鏑木教官の遺体を焼却するために訪れた部屋。

 部屋の扉を開け放ち、担架を引いてはいっていく。

 中はやはり変わらず暗闇に閉ざされている。電源のスイッチを手繰り寄せ見つけると魔力を流し込み電灯がつく。目の前に大きな黒っぽいゴツイ形を焼却炉へ死体を放りいれ魔力の火を流し込み火に死体があぶられていく。肉の焦げるようなにおいと腐臭が漂い始める。

 扉を閉め焼却炉の先――煙を排出する外気と連結した天井を見た。

「ん?」

 煙突箇所がボコボコと異様な音を立て始め首をかしげる。

「ちっ、故障かよ」

 空中魔法で浮遊し、高さ5メトール弱の連結部天井に触れる。

「あつっ」

 魔力の水気を纏った素手で触ったはずが熱量が半端なくやけどを負い反射的に素手を抑えた。

「どうすっかなぁ」

 煙が部屋に漏れ出しまずい状態になっていく。

 すぐに窓をあけ空気の入れ替えを行う。

「ふぅー、明日にでもこの剣を知らせますっか、めんどー」

 愚痴りながら焼却炉のほうへ振り返った瞬間、視界が外の景色を逆さに見出した。

 先ほどまで焼却室の景色が一転し外気に移り変わる現象などありはしない。

 次第に意識は薄れ最後に見たのは鏑木先生が血まみれの刀をもった姿で自分の胴体を担ぎあげて焼却炉にぶち込む姿。

「な‥‥んで‥‥」

 疑問と混乱が渦巻きながらの死した彼の首は動向を開き口をあんぐりと開けた哀れな姿。煤にまみれた鏑木教官は焼却室から窓を使って外へ出ると中庭に落ちてる首を拾い上げ魔法によって砂に変化をさせるとそのまま砂を口から吸い込んだ。

「あひっ」

 不気味な笑いが闇の施設の中庭に響いてく――


 ******


 昨日の騒動から一転した朝の登校。

 賑やかな生徒の会話が昨日のことなどなかったかのように感じられる。

「まるで、平和な感じで話し合って不気味よ」

 不快感を顔に出しながら竜輝の右隣を平然と歩く柚葉。周りの生徒はその光景に興味津々なのもお構いないといった感じであることに竜輝は眉間にしわを寄せながらどういうつもりだよという感じで一生懸命歩幅を速めて距離を作ろうとねばる。

「コラッ。おいてくなアホ!」

 スパンと小気味の良い音をたて後頭部を叩かれ竜輝はしかめっ面で頭部を抑え柚葉をにらみつけた。

 「なんで距離を作ろうとするかなこの馬鹿。昨日のことがあるんだからツーマンセル行動は必須って伝えたでしょ」

「だからってなぁー、教師と生徒、しかも新任教官と転入生の隣あわせの登校はいろいろと噂が立って目立つことになるだろ」

「それでも、しかたないってのよ。昨日の事件でわかったでしょ? 相手はこちらの存在をもういち早く知っていたってことっての。となれば、私たちは一人になれば即座に殺されるわよ」

「そうですね」

「竜輝くん、これも仕方ないの。こういう場合は現場の状況など気にせずまずは身の安全の確保が優先なの」

 後方から同じように愛華と美香のタッグが後をついてくる。

 昨日の件で竜輝たちはいろんなことを知ってしまい状況の変化を行うこととなった。

 まず、通常通りの学内生活を行い相手を見つける手段が昨日の事件のせいであらゆる施設内のところに監視カメラを設置し逐次生徒や教官の行動を観測生活を行わせる。

 これは自分らもその映像の観測対象に当てはまるが仕方はない。

 つづけて、自分らの存在が知れてしまったことがあるという予測。

 昨日の事件は竜輝たちに向けた挑戦上ではないかというのが政府が導き出した結果論である。もしかしたら、どこかで情報が漏えいし竜輝たちが学内潜入してきたのがバレた可能性である。

 最後は容疑者の観測に一人がつくこと。

 これは施設内業務をさぼりながらその一名に観測者を1日間つけるという所業を行う。

「いろいろとこちらも動き憎くなりましたよね。そのために一般的に生活を行い、施設の学業終了時間にすべての確認作業へ移るべきでしょう」

「本当だったら、いちいち生徒に聞き込み調査とかこまめに行ってく感じがよかったんだけどそれが現状できなくなったわよね、まったく、犯人のせいでめんどくさい限りよ」

 本当だったらという作戦案が実に有効だったかはどうかともかく動きにくくなったのは確かである。

 竜輝たちの素性がバレてるとなると行動範囲も制限されるのだ。

 たとえば、ひとりになる行動の回避のために体育なども常に合同のもののみ参加でとかになる。

「そういえば、ツーマンセル行動必須とかいうけど容疑者監視の時は一人だけだろう?危険になるじゃないか。どうすんだよ」

「その辺は大丈夫ですよ。ほかの仲間が援護しますから」

「ほかの仲間?」

「はい」

 いったい誰だろうかとおもいつつも彼女たちは何も答えをくれるわけもなくそのまま施設へとはいっていき教室へ向かった。

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