血の新学期挨拶
「なれない言葉遣いってのは疲れる」
「あんたねぇ、周りにまだ生徒がいるのよ。今は私だけにしか聞こえない発言だからいいけど」
現在、体育技館で多くの生徒が集まりだしている。
これから行われる新学期のあいさつに向けた集合。
体育技館はどんどんと埋め尽くされていく。この体育技館も普通の体育館とはやはり違った感じがところどころ見られた。特に注目すべきは2つ。そのうち1つは全体的にかなり広い。野球の甲子園とかできそうなレベルの広さがある。その2に鋼鉄製の壁や天井。まるで防弾や防刃使用である。軍の施設でもあるためかそのような補強されてるのであろう。
そんな体育技館で竜輝も2-Aクラスをひきつれて2-Aを列にさせ並ばせている。並び順は自由にしてあり先頭にいる柚葉と竜輝は必然と距離は近く彼女が竜輝の愚痴を目ざとく聞いてしまうのも仕方ない。
「疲れるもんは疲れるんだからしゃーねえだろ」
「一般生徒の前でその口調は絶対やめなさいよ。今のあんたは一教師、運勢竜輝先生なんだから」
「そういう柚葉さんも気をつけるべきではないんすか」
「私は十分に目立たず普通の学生をエンジョイできるから気をつけるべき点はないわ」
その自信はどこから来るんだと思いたい発言である。
「にしても広いな。この施設」
「まあ、そりゃあね。男女ともにいるわけであり、フィリアス人もいるわけだしね」
この体育技館は男女合同施設であるらしく、ぞろぞろと男子のクラスも集まってきている。
だが、男子と女子の間には鉄柵のようなもので仕切りを作っている。
まるで男子を囚人のような扱いである。まさに男女差別の表れか。
「竜輝先生」
ふと、声をかけられ竜輝はそちらを振り向いた。
そこにはすらりとした長身のフィリアス人の竜族の女性が困り顔でいた。
彼女をどこかで見たようなと記憶の渦をめぐってどうにか思い出す。
「鏑木先生、何かご用でしょうか?」
どうにか記憶の渦からその名前を引っ張り出して彼女に疑問を問いただすような返事をする。
「九条責任者がこちらに来るようにと。あとは生徒に任せて私たち教官は移動を」
「あ、すみません」
鏑木先生に言われるがままに竜輝も柚葉の目だけで会話をし、その場から移動をする。
移動といっても体育技館の壁際のいす。
そこにずらりと教官がすわっていた。
「運勢竜輝教官は私の横に座ってくださいねぇ」
九条責任者がにこりと笑顔を向けながら指示を出す。
竜輝にはどうにもその笑顔が苦手で顔が引きつりながら指示に従い腰を下ろす。
椅子に座ったとたんに気づいた。
竜輝に集まる数多くの視線の数々。
生徒や教師側の多くの視線。あれが新しい教官という物珍しげな興味の視線だ。竜輝はその観察の目には慣れてるのでさほど気にはしないがそれでも居たたまれない気持ちにはなった。
「鏑木先生、進行を」
「はい」
鏑木先生が席を立ちあがり、体育技館にずらっと集まった生徒に対して静粛にといった瞬間にシーンと静まりかえる。
そして、最初の挨拶を開始して生徒一同に対しての踏まえた挨拶などを清らかな声で行っていく。
九条は席を立ちステージの壇上に上がりまるでスピーチのように新学期を踏まえて生徒にあてた発言を行い、順番はついに回ってきた。
「それでは、本日より我が教育施設に就任した新任の教官をご紹介いたします。運勢先生」
竜輝は席を立ちあがり、壇上に歩みを進めていく。
集まる視線の中で心配そうにこちらを見つめる3つの視線。
美香、愛華、柚葉3人の視線である。竜輝は心配ないと言いたげに1回首を縦にふり、そして壇上に手をついた。
「ただいま紹介にあずかりました運勢竜輝です。このたびよりこの育成魔道共存連盟施設に総合魔道の教官として配属されました。よろしくお願いいたします。私に何か用事や魔道に聞きたいことがあれば教職員室か高等部2-Aのクラス担任ともなっておりますのでそちらにお越しいただければお答えいたします。みなさんとさほど年齢も変わらない若い身の上ですがそれでも教官として誠心誠意がんばりますのでどうぞよろしくお願いいたします」
2度目のお願いを言い渡した後に深々と頭を下げ軽めの紹介をすます。
盛大な拍手に見送られながら席へ戻る。
教官側からも感涙の言葉をもらい、友好の握手をもらった。
そして、終わりのムードに入っていき新学期の挨拶が終わりをむかえ――
用途したときである照明が突然と落ち体育技館内がざわめきだす。
「いったい何事ですか!」
「わかりませんな! 私がいま照明装置の確認を――」
そう一人の教官が2階へ上がろうとした間もなく照明は元に戻ったがステージは雰囲気ががらりと変わっていた。
生徒側から悲鳴が上がりどよめきが起こった。
なぜならば、先ほどまで普通の壇上席だったその場所は真っ赤に染まりあがった血の海に滴り一人の教官の亡骸が横たわっていたのである。
そうその教官は鏑木先生であった。