教師としての初動
蓮杖鈴に教職員棟にまで案内されて別れて以降竜輝らはそこで説明を一通り終えた。
その後は竜輝たちは現在、学園長室で話を受けていた。
この育成魔道共存連盟施設の総責任者、いうなれば学園長に当たる三十路の金髪碧眼の女性――九条カサネは書類を竜輝に手渡した。
「――では、運勢竜輝教官には今後我が校の高等部二年の担任をやってもらいましょう」
話はとんとん拍子で進んでまず、担任に任命をされる。
いきさつは、現在の学校も新学期に入るために各学年の担任も変わる上に昨年度において教師も大部分が転属してしまったために特に高等部には空きが生じたらしかった。
しかも、柚葉が高等部2年に転入生としてやってくるので二人が一緒のほうが何かといいだろうという彼女なりの計らいである。
「それからですが、各学部の魔道担当の教師にもなってもらいますので、今から体育技館で全校生徒に挨拶を願いますねー」
「挨拶‥‥っすか」
ここ数日間でどうにか敬語を身につけた竜輝はかたくなな感じの口調ではありつつもどうにかまともな感じの応対をする。
「大学部のお二人もできればクラスのあいさつは行ってください。今オリエンテーションを行ってる最中ですので今すぐにでも言ってくださるとうれしいわ。鏑木教官、彼女たちを案内して頂戴」
鏑木教官と言われたフィリアス人の竜族の銀髪の30代後半の女性が軽い会釈をしながら愛華と美香を連れ学園長室を出ていく。
「あなた方二人は同じクラスに配属となりますのでワタクシとまいりましょうかしらぁ」
「はぁ」
雄々しい感じで立ち上がる彼女。
元は軍人であったが今は引退しこの連盟施設の管理責任者の教官を任されてるが歴戦の猛者という威厳は今なお体からにじみ出ている。
二人は九条の後についてくように学園長室を出て廊下を突き進む。
その間に何名もの教師がこちらの様子をうかがい人間の男子でありそれも若いのがいるということにぎょっとしていた。
なぜ、担任が竜輝で分かるかといえば、現在の竜輝の首元には連盟施設の教官である記しの教官パスカードをストラップに入れて首から下げていた。
「竜輝先生、ここからが女子等ですからくれぐれも女子たちに対しての対応を考えてください」
外廊下を挟んだ向こう側の出入り口がみえた。
そこに入る直前において無駄な注意を九条管理責任者は入れてくる。
竜輝は別にセクハラをしにこの連盟説にきたわけではないというのに心外である発言にも近い。
そんな竜輝の気持ちなどいざ無視で扉は開かれ女子棟へ入っていく。
女子棟というのもこの連盟施設はもともと男女共学ではあるようだが、性犯罪や男子と女子の魔道の習得率制を踏まえて教育する場所を分けていた。
といってもほぼ隣接しているのだが棟は別々で分かれており女子棟の隣に男子棟がある。
でも、なぜ竜輝が女子側の担任にされたのかといえばそれも国の命令とやらで結局は潜入のエージェントの人数がほぼ女子で構成されてるものなので女子棟の潜入が優先されたのと、敵側のボスが女性だからというのが大きな理由である。
「監督教官、おはようございます」
一人一人の生徒が九条監督責任者にそれぞれの呼称を使い挨拶をしていく。
やはり、その辺は軍事施設なのであるなぁという実感を沸かせる礼儀正しい教育施設だと想起させる。
だが、まあ今挨拶する生徒はほぼ遅刻者なので九条責任者が早く暮らすに行きなさいと忠言していた。
「ここがそうですね」
神々しい感じの金属チックな表札が壁に入りつけてある。
『2-A』という明記。
ここが今日から竜輝が担任となり柚葉が転入生として入る場所。
九条責任者が教室の扉を開く。
教室の中は普通のあの木製のいすと机が縦に5列5セットずつに並んでいる配置だった。
教室内の人数は全部で25人。普通の学校に比べると若干少ない。
「え?」
「人間の男?」
「うっそ、あれが教師」
入った瞬間に注目の的である竜輝は居心地の悪さを感じ早くも任務を放棄したい状態に駆られた。
「みなさん、本日から2-Aのクラス担任は新任の運勢竜輝先生が担当いたします。彼は魔道の総合担任ともなりますので魔法に関してわからないことがあれば聞いていただいてください。では、先生あとはお任せしました」
「え、あ、はい」
とにかく、はじめての教師仕事に若干緊張を抱きながら周りの視線を一身に浴び緊張の汗をたらす。
深呼吸をしてさほど年齢が自分と変わらない少女たちを見回し黒板に自分の名前を書いていく。
数ある、自分の中に知識として組まれた新任教師がまずやるべき手順を踏まえていく。
「今日からこのクラス担任になった運勢竜輝だ。担当は総合魔道。魔法に関してわからないことがあれば聞いてくれ。それから、もうひとつ――」
そう言って傍らに立った彼女、柚葉雪と目配せを行いながら彼女の紹介を行う。
「俺と同じように今日からこのクラスの仲間になる柚葉雪だ。みんあ仲良くしてやれ」
「柚葉雪です。よろしく」
クラスも挙動不審な状態が続く。
それはそうだ。一気に新たな担任教師としてしかも若い自分らと大して年齢も変わらない男子が来た上に絶世の美少女が転入生としてきたのである。
「以上で、何か質問があれば今のうち言っておいてくれよ。このあとは全員体育技館で新学期の挨拶があるからなー」
などと、記憶にある小説なんかのような新任教師をまねた行動を行いながらはじめの教師の一歩を竜輝は踏み出した。