育成魔道共存連盟施設
訓練後、シャワーを浴び終え世界共存同盟軍の軍事棟――つまりは訓練室やら軍事顧問室がある竜輝が居座ってる病室のある軍事病棟とは別棟の1階フロントフロアに到着する。
そこには二人の人物がいる。
如月愛華と運勢美香の死んだと思っていた幼馴染の二人。
その幼馴染とあともう一人あとから来る彼女とで今日これから出勤する。
出勤――いや、登校である。
「おはようなの」
「おはようございます、りゅうちゃん」
「ああ。ふぁ~あ、眠い」
大きな欠伸をしながらフロントフロアを見回す。高級旅館のような雰囲気を醸し出す木材室で固められた洋間性のフロントフロア。
受付センターもあったりしている。だが、時間外なのか現在は受付に人はいない。
時刻は7字前後なので仕方ない。
「すごいクマだけど大丈夫なの?」
「朝から強暴女にさんざんいじめられただけだ」
「え、どういういみなの?」
ひんやりと凍えそうなほどな冷たい空気が立ち込め始める。
竜輝は背筋を凍らせながらその変わった空気の意図が理解できない。
「なんで怒ってんだ?」
だが、確実に理解できたのは愛華の表情がどんよりとしていながらもその顔が怒りに満ちてるということ。
「強暴女ってどこのビッチなのっ」
「びっち? ああ、ビッチか‥‥ビッチっ!?」
竜輝はカタカナが苦手である。
何度も言うように異世界暮らしが長いほどにこちらの英語に属する単語も疎くあり今の単語もすぐにはピンとこない始末であったが理解して驚く。愛華の突然の口の悪さの変貌。
「私も知りたいですねぇー、りゅうちゃんをいじめる人はころ――――じゃなくってお仕置きしないとですねー」
いつも笑顔の美香もこの時ばかりは目が笑っていなかった。
笑顔の中にうっすらとにじみ出る黒さが竜輝の体を震わせた。
「落ち着けって二人とも」
「そうよ。いじめてるとか心外よ。訓練してあげてただけよ」
やっと、到着した柚葉雪がそう言葉を割りいれたことで二人の空気が落ち着きを取り戻し始めた。
「くんれん‥‥なの?」
「ええ、そうよ。軍事顧問からの命令でね。美香も知ってるでしょ? なんで同じように取り乱してんのよ」
「っ~」
美香は顔を真っ赤に染めあげながら先に外へ出て行った。
「はぁー、すぐ恥ずかしくなると逃げるのよね美香」
「なんか、助かった」
「あんたもあんたよ。誰が強暴女ですって?」
助かってはいなかった。
新たな悪魔を呼んだらしい。
「あはは」
一つこぶしが竜輝に振り下ろされるのだった。
******
学校は湯島駅近くにあるので、竜輝たちは同盟軍の棟から徒歩と電車を利用して1時間かけ到着する。
門にはまだ登校には早い時間帯なのでまばらにしか生徒が入門していない。
ある一人の生徒が門の前にたっており、その生徒がこちらに目を光らせる。
「ん? 君たちは転入生かい?」
長髪にスレンダーな体つきそして見る者を引き付けるかのような魅力ある美貌を兼ね備えた美女が腰に携えた銃をもち近づいてくる。
竜輝は一瞬でその彼女にビビってしまう。
竜輝が知ってる地球では銃刀法違反という法律が存在していたのだ。彼女はその犯罪者に属している状態。
そんな彼女が近づいてきたわけであり驚いてしまうし動揺をした。
彼女は竜輝のそんな反応に気づいたのか笑いながら――
「ああ、君は知らないのか。我が校は政府管轄の軍事訓練行でもあるからな特例で銃器の所持が許されてはいるがそう日常的にぶっ放したりはしない。これは生徒を守るための護身用さ」
などと説明をしてくれる。
何人もの生徒がその間に彼女に挨拶をしていた。
どの生徒も彼女を「おはようございます。風紀顧問」と呼んでいる。
「――っと、申し遅れたな。ワタシは都立女子育成魔道共存連盟施設の風紀監査顧問をやらせてもらっている大学部2年蓮杖鈴というものだ。よろしくな」
3人のうち代表して美香が握手をした。
「私たちは本日よりこちらにそれぞれ学部は違いますが転入します。話は先生方から?」
「ああ、聞いている。どうぞ、来てくれ。職員室まで案内しよう。何分我が校は男女別で棟があるために広いんだ。職員室棟というものまで存在して――」
と長々と説明をしてくれる彼女の背を追いかけながら竜輝はあたりを観察していた。
確かに学校自体はかなり広いようだった。
遠くにはフェンスで仕切られたグラウンドが存在していてそこでは銃の射撃訓練が行われていた。グラウンドもかなり広いようだ。
学校も6階のあるV字型の棟が二つ並んで存在している間にひとつ大きな棟がある。その場所に足は向かってるようだがほか生徒は男女ともに別々に向かっている。
「ワタシどもが入ってきたのは女子棟の門だが、本来は男子は裏門からの入室が義務付けられてる、これも犯罪数を減らすためであるんだ。左側が男子が座学をするための棟で右が女子になる。それで、中心にあるのが教職員棟であるのだが――だれが、教員なのか私はまだ聞かされていないのだがどの御人かお伺いしてもよろしいか?」
その時話を全く聞いてなかった竜輝は自分に感じた濃密な視線にやっと、振り返った。
「えっと、なに?」
「この男性が‥‥だと‥‥」
先ほどまで笑顔を振りまいていた彼女の表情が一気に冷たいものに変化していく。
「ふふっ、そそそうか」
激しく動揺した彼女はそのまま案内を継続してくれたがそのときに竜輝に向ける目は冷たいものに変わっていた。
数分後、竜輝たちは教職員室に到着したのであった。