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訓練

 2027年4月7日

 朝方、時刻は4時である。

 寝ぼけ眼をこすりながら竜輝は前方を歩く柚葉についていく。

 朝、突然の冷水を浴びせられとび起きれば彼女が桶を片手に立っている状態だった。

 何事かと思えば、さっさと着替えてついてこいとのお達しであり例の如く未だに部屋の割り当てがなされていない竜輝はあの病室で着替えを済まし彼女についてきていた。

 恰好は買い込んだスーツ着用。

 それが彼女の推奨した服装であるからである。

 なぜ、この衣服を進めてきたのかは竜輝にはいまだにわかってはおらず困惑する頭で彼女の後をただひたすら追いかけた。

「なあ、どこ向かってんだよ? 朝っぱらからすげえ眠いんだが」

「うるさいわね。今後は平均的にこの時間帯には起きてもらうんだから慣れなさいよ」

「あ? ――っんだよそれ」

 彼女との会話もいつの間にかこう慣れ親しんだ感じになっていた。

 助け出されてからもう何週間もたってるかのような感じであるが実際のところは数日しかたっていない。

 ほんの数日なのに長年の付き合いかのような感じで会話をできるのも外出などを行ったからか。

 随分と彼女にも世話になりっぱなしである。

「時折口が悪くなるけどあなた敬語を覚えなさいよ。軍事顧問に対しても毎度毎度あんな口のきき方は許されないのよ」

「そんの知るか。こんなの俺の自由だ。政府のせいで俺はひどい目にあわされたってのも同様なんだから」

「それはちがうわよ」

「あん? なにが違う?」

 つい、彼女の発言は竜輝の頭にくるかのような発言でありムキになて牙をむく。それが彼女の感情に火をつけ首元をつかまれ床にたたき倒された。

「がふっ」

「あら、わるかったわ。でもね、たちばをわきまえなさいよ、あとそう怖い顔でにらまないでくれる?」

 彼女は平然とした表情でも体を笑いをこらえるかのように小刻みに震わせていた。

 柚葉は彼の鷹のような鋭く座った眼をみるたびに思う。

 まるで、なにか異形の化け物であるかのように幻覚させられる殺気をぶつけられる異質な空気をあびる感覚。

 それがあまりにも恐怖を通り越して柚葉笑いが生まれる。

 最初に会った時もそうであるが竜輝にはそんな柚葉の気持ちなど知らない。

「はぁー、にらむのは悪かった。たしかに年齢でいえばあんたはまだ政府所属じゃなかったはずだし、あんたに八当たるのは間違いだな。わるい」

 意外にも紳士的対応で竜輝は謝りながら言速した。

「まあ、それはいいとしてどこに向かってる? それだけ教えろよ」

「トレーニングルームよ」

「トレ――なんだって?」

 未だにフィリアスの生活のほうが人生で長い竜輝は長い日本単語をうまく聞き取りづらくありすぐに記憶帳にはピンとこない。

 なにより、中年オヤジさながらにカタカナに疎くある。

「訓練室。あなたを今日そこで軍事訓練するわ。暗殺するにも軍特有の技術を身につけさせる必要があるわ」

「くんれんだぁ? ――っざけんな! 俺は十分訓練を積んできた。いまさら軍の訓練なんか」

「独学で戦闘技術を学んで来ただけのあなたは弱いことをまだわからないの? 愛華に押し倒されたのもう忘れたわけ? 本当に物覚えの悪いおやじね」

「っ! オヤジじゃねえ!」

 それは数日前のことを思い浮かべる。

 なぜ、あのことを彼女が知ってるのかは謎であるが。

「それに、あなたは私にもあの武道大会で負けてる。それがプロとアマチュアの差よ」

「くだらねえ。俺は部屋に戻って寝――」

 竜輝は立ち上がり踵を返し部屋に戻ろうとするが体が突然宙に浮きあがってまた地面にたたきつけられる。

 鋼鉄製の床にたたきつけられたことで激痛が走り肺からの酸素が遮断されるように苦しくなる。

「あがぁ‥‥ぐぅ‥‥ぁ‥‥?」

 見上げるとこちらを見下ろす彼女が見据えながら一言告げる。

「今のも軍の訓練で身につける技よ。あんたみたいな馬鹿でもさすがにわかったでしょ。あなたは未だに感覚に疎い。今の私の技の気配に気づかないままに倒された」

「殺気のない技なんてよめるかよ‥‥くそっ‥‥」

 体がうまく起き上がれない。

 激痛がやむまではこのままだろう。

「このまま運ばせてもらうわよ馬鹿」

 竜輝の一人称をバカ呼ばわりする。

 そのとき、ふいに彼女が屈みこみ、竜輝の顔にスカートのすそが入り込んだ。

 彼女が即座に自分の失態に気づきばっと抑えた。

 だが、遅く竜輝の網膜にはしっかりと焼き付いていた。

 赤いレースの下着が。

「今の赤いのは‥‥」

「しねぇ!」

 竜輝の顔面は彼女のこぶしにより陥没するかのようにたたきつけられ意識を消失した。


 *******


「まず、基礎体力作りから始めるから」

 という彼女の言葉が数十分前に言われて竜輝は白いコンテナのような箱の中の部屋で腹筋、スクワット、腕立てなどの基礎体力を積むための筋トレを3セット100回分を強いられた。

 それを現在行ってる途中であり、彼女のきついまなざしが突き刺さりながら汗水たらして行っていた。

 でも、竜輝にしたらこんなことたやすいものでフィリアスにいたころも基礎体力を身につけるために筋トレは欠かさず行っていた。

「終わったぞ」

「基礎トレーニングはやってたみたいね。変態のくせに」

「あれはお前の失態だろうが‥‥見たくて見たわけじゃぁ‥‥」

「なんか言った?」

「‥‥」

 案外、女のすごみってのは強烈であると竜輝ははじめて知った。

「んなことより、技を教えろ。俺は確かに弱いことは認める」

「はぁー、その命令口調さえなければいいのだけど。まあいいわ。教えたあげる。ただし、これから私のことは先生と呼びなさいよ」

「はあ? なんで年下のお前を――」

 そう彼女は意外にもあの潜入任務作戦の際に知ったが竜輝よりも年下である。

 15歳という年齢でありまあ、2歳も年下ってわけだった。

 何より衝撃なことは彼女は愛華よりも軍位が上であり、幼少のころから政府の軍事学校に入ってたという。

「反論、1っ回!」

 その時視界が暗転する。

 だが、今度はすぐに竜輝も対処した。

 中に持ち上げられた体をうまく使い、受け身を取るように地面にたたき伏せられる前に右手をのばし床に手をつき、衝撃を逃し宙返りをした。

「っ! へぇー、技の応対速度の吸収率は早いのね」

「あんたこそ今のはあぶねえ! 突然投げ技仕掛けてくんな」

「これは背負い投げの軍事応用ってやつよ。それよりも今のできるならまずは技を体に覚え込ませなさい」

「は? どういう意味だよ?」

「続けていくわよ」

 そうして彼女のスパルタな学習講座が始まる。

 物理的に体に技をたたきこまれそれを覚えて行けというなんとも無茶ぶりな方法で。

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