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共存の世界の景観 後編

 この共存の世界での生活をしていくための洋服を買ったはいいけどひとつ竜輝には疑問があった。

 それは服の一部に明らかな国外産の生地の衣服。

 紺色のお堅い社会人が常日ごろから来ていそうなイメージの洋服。

 スーツである。それにネクタイやワイシャツといった社会洋服一式が揃えてある。

 普通の私生活を行う上で確かにスーツは必要あるかもしれないがそれは、3着も購入した意味合いがわからない。

 未だ17歳という年齢である竜輝は地球で該当するのは高校3年生という立場に当たる。

 つまりは学生である。

「美香姉さん、なんでスーツなんか買うんだ?」

「必要になりますから購入したんです」

「まあ、そりゃあそうかもだけど3着もなんてまるですぐに汚れちまう可能性があるから呼びで購入した感があるんだが」

「文句あるの? 馬鹿」

 なんか突っかかりがある柚葉に気押されながら右手にぶら下げた袋の中身を確認する。

 スーツは同じものを3着購入していた。

 予備のために余分に2着購入したというような感じである。スーツを購入するように勧めたのは美香であり、竜輝はいらないと言ったが彼女は「絶対必要になる」という強引な押しで購入をしてしまう。

 けど、なんでそこまで押したのかわからない。

 現在はその理由が分かる場所に今向かってるなどと説明をしてくれたが一体どこに向かっているというのか。

 秋葉原の区域にあるというその場所。

 中央通り沿いから大分離れ路地裏のほうを通ってきていた。

 2駅分ほど歩いた距離であるひとつの大きな門構えをした施設の前に足を止めた。

 最寄駅は湯島駅だったところから10分ほどのところにある施設。

 周りではその施設の内部からにぎやかな若い女の声が響いてる。

 時間も時間帯なのでその施設の門から出て家へ帰るという女性も何人かいた。

 どの若い女性も身だしなみの整った「制服」を着用していた。

 門前の傍らにかかる金ふちの名義は『都立女子育成魔道共存連盟施設』という表示。

 そう、そこは学校である。

 門前で傍観者のように立ってる竜輝たちは注目の的であちこちからひそひそ話が聞こえてくる。

「美香姉さん、ここって学校だよね?」

「そうですよ。あなたがこれから通うところとなります」

「は?」

 耳を疑うかのような言葉。

 明らかにそこは学校であったがなぜ、教育施設という名前なのかは不明にしても学校でもそこは女子学校に違いなかった。

 なにかの聞き間違いだと思いたい。

「私があなたを救いに行ったのはこれが理由よ。政府は目的もなくあなたを救いだしたりはしなかったのよ。本当だったら昨年から救出できたはずだったのよ」

 傍らに歯噛みした柚葉ふが立ち門前を見上げながら囁いた。

 道中でこちらを見据える教育施設の学生が何人もいる。

 人間だったりフィリアス人だったり。

「現在、政府は先の未来でのことを考え各種ある教育施設でも共存プラン導入を考えた。けど、現状それをスムーズに進行して問題ないかという議論がだされてるのよ」

「な、なんで?」

「教育者が不足してるんですよ。魔法を教えられる教育者の不足です。特に人間です。両方の立場からモノを教えられることが一番良いのが教育方針というものですから。けど、この世界では魔法を教えられる人間がいないのが実情です。そもそも魔法を学んで間もない人間ばかりですからね。フィリアス人を教師にしたところで人間側の主観を知りもしない彼らじゃあダメなのです。共存の学園を作ったとしてもそれがリスキーだったんです。現状この学園内でもフィリアス人の教師がその悲痛の叫びをあげてます」

 柚葉と美香コンビの説明を受け学校内を遠目に観察した。

 学校の校庭だろうか所で部活動の姿が垣間見えた。

 ボールを使った競技、サッカーだろうか。

 それに魔法を応用した特殊なスポーツである人間がひとりだけ魔法をうまく扱えずに周りから浮いている。それに対して教師が何かをささやくがその生徒は顔を伏せどこかへ去ってしまう。

「現在、共存の施設はここだけだけど未来では増やしたいと考えてるそうです。でも、魔法という教育は大変難しく、特に人間ではまだ扱えないものも多数います。ですが、魔法を結局は今の世界では学ばせる必要があるために人間のみの学校でも教育免許取得のフィリアス人が教育者として教えてはいるけど結局は人間だから物覚えが悪い状態ですからね。特に男子は生命エネルギーが低いからなのか男子の魔法習得率は格段に低いです」

 生命エネルギーそれは魔法を扱う際につかう力の素質のもの。

 男性はとくにそれが低い。

 それは生理学的な問題でもあるだろう。

 女性は子を産むという新たな生命を生み出す体をもってるが男性にはそれがない。

 だからこその生命エネルギーの少なさではないかといわれてもいる。

 これはフィリアスの世界の書物で竜輝が知ったことであるがこの世界でもそのことは知れ渡っているのはわかった。

 だが、そもそも魔法を広め始めたことが大きな間違いだと竜輝は思ってしまう。

 魔法はフィリアス人だからこそできるものでもあるのだ。フィリアス人は男女問わず最初から膨大な生命エネルギーをもち特に寿命が平均150歳という長寿のものが多い。修族によっては平均が1000歳を超すのもいる。

 なのに生命エネルギーが少ない人間が魔法を習得するなど夢の話。

 けど、竜輝はあの世界でそれを習わねばならない立場にあり習得した。

 だが、この地球では変わったばっかで環境がフィリアスと違うのだ。

 フィリアスは魔法環境、つまり自然そのものが生命エネルギーにあふれてるが地球は昔から環境問題があるように生命エネルギーが枯渇してる。

「まあ、そういう面も見て男子と女子で共存の施設は分けているのよ。他にも人間の女子がフィリアス人の男子に性的暴行を受けないようにという配慮で共存の教育施設の多くは男子と女子の別棟で分けてあるのよ」

「ふーん、で何が言いたいんだ?」

「それで、言いにくいことなんだけど共存の施設は今じゃあここだけなんだけどその新たな共存施設増設に向けあなたにはここの教師になってもらいたく思いあなたを政府は――」

 そのあとの柚葉の言葉は竜輝を呆れさせ耳から記憶からシャットダウンさせる内容のものだった。

 結局は利用される人間なのか。

 そう、思い竜輝が意識を取り戻した時は病室にいつの間にかいるのだった。

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