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共存の世界の景観 中編

 中央通り沿いの各店の面影はあるもの変化は多少あった。

 たとえば、最新の物販の広告表示。

 先ほどのカフェテラスであった広告と同様にプロジェクトマッピングに酷似した映像投射技法。

 それから、店のフィリアス人たるエルフ店員がコスプレをしながら宣伝を行っている。

 まるで、その物販に合わせた格好をしてるのでより、客の目を引く。

 特に店員にはかわいい子が選ばれてる。昔ならいざ知らずどうでもいい男や女性が抜擢されて客寄せに回っていた時代がそこにはもうない。

 客寄せにはほぼ美男美女のフィリアス人をコスプレして客寄せするというシステムがあった。

「今の世の中どの店でもとくにフィリアス人に客寄せを行わせ共存のあり方を証明する傾向があるんですよ」

 などと説明をしてくれた義姉は笑顔でフィリアス人から広告などをもらいうけていた。

 一つのアニメグッズ店舗に入ると驚くことにすべての書籍というものが空中浮遊してる。

 デジタルの映像である。

 本だけに限らずすべてのものが空中浮遊したデジタル映像であった。

 紙媒体というものがもう存在していないようである。

「紙の本はないのか?」

「いつの時代の話よ? そんなの昔に廃刊なったわよ、あんたバカ?」

「じゃあ、菓子類やキーホルダーなんかはどうすんだ? ああやって、映像じゃあものがねえ」

「そういうのは一度あのデジタルの映像をタッチして自分の端末にドロップアウトすんのよ。そんなのもみてわかんないわけ?」

 傍らから呆れ気味に柚葉雪が説明しながらある一つの乙女グッズらしき物販物をタッチして光のエフェクトが出るとそれを指に吸いつけるようにして自分の携帯電話に持っていく。

 『端末の画面に購入が完了されました、店員にコードをご提示ください』

 という表記がなされる。

「この世界の物販物の買い方を見てなさいよ。あんたみたいな馬鹿にわざわざ私が教えてあげるんだから」

 そう言いながら彼女はそのまま会計レジに向かう。

 みれば他のいろんな客たちが同様に行っていた。

 本にいたってはドロップした後にレジにはいかない客が多い。

「ちゃんとみてた?」

 彼女が手に店の袋を掲げて戻ってくる。

 中のものを見せれば映像の物と一緒のものが入ってる。

「ああ」

「現代、なるべく、店を広くするためだとか電子文明や魔力電動が主流になったことで物販物は基本倉庫にしまうようになってるんです。魔法っていうのは万引きも容易にできてしまうってのもありますから」

 ご丁寧に美香が補足説明を行ってくれた。

「あ、ああ。でも、本とかだけってのはどうすりゃあ?」

「まぁだみてわかんないわけ? 本は昔もあったでしょ。電子書籍ってやつ。ここではほぼ電子書籍の販売が主流でさっきのようにドロップすればすぐダウンロードができるわけ。店で買う特典なんかももらえたりするからこうやってわざわざ赴いて買いに来る客も多い。今では一般的な本屋はつぶれてるわ――ったく、なんで私がこんな説明‥‥」

 よく見れば限定版の書籍などでは付属物があるので購入の際はレジに来てくださいと記載があった。

「魔法ってのはいろんなことが発展してもしまったから犯罪もいろいろと容易なことになってるんです。特に万引きは容易になりましたからた。だからこそ、こうやって電子の販売が主流というわけです。そういう文明の発展でいまでは昔はアニメは子供がいるもんだとか言われてたけど今じゃあアニメは普通に一般人の文化でもなってます。柚葉さんがアニメ好きなように」

「ちょっと、美香どういう意味? 私がDQNと一緒とでも言いたいわけ?」

「そういうわけでは‥‥」

 などとがやがやとにぎわう会話をしながらいろんな店の中をまわる。その際に現代の売買説明も受けながら2,30分めぐってしばらくしてある場所にきた。

 服屋である。

「えっと、ここには何しに?」

「りゅうちゃん、ここに戻って来たの久々で自分のお洋服ないですよね? ですから、一緒に買いましょう」

「いやいや、俺金ないよ」

 先ほどから見て回っていただけなのも竜輝は手持ちの金などないからである。

 わずか7歳の時に拉致されてるのでこの日本の金などもってはいない。

 興味があって買いたいものはいくつもあったが我慢してもいた。

 それは金がないためでありそもそも皆が持っている携帯電話も持ってはいない。

「金なら私が軍事顧問から預かってるわよ。ほら、買うわよ」

「ちょっと――」

 中に入ると早速店のフィリアス人の女性店員が出迎えた。

 色黒の顔にとんがった耳が目立つ種族。ダークエルフである。

「何かお探しですか?」

 心地よい笑顔で出迎えるダークエルフの店員をみて竜輝は顔をこわばらせながら目線をそむけた。

「えっと、メンズもの服を探してるんです。何かお勧めありますか」

 美香が店員にそうおすすめを聞くと店員は心地よく「はい」と言いながら普通の店員のように衣服を進めていった。

 その環境を見て次第に竜輝の心この共存の文明を受け入れ始めていた。

 善悪、フィリアス人にもそのようなものが存在するのだという事実。

 よく考えれば竜輝だって決して全員に悪いように扱われてきたわけではない。

 特に王族の人物にひどい仕打ちを受けてきたのである。

「あの、どうかなされたんですか!」

 突然、店員があわてた様子でこちらをうかがっていたことに気づいた。

「え」

「りゅうちゃんどうかした?」

 ふと、傍らにあった鏡に自分の泣いた表情が映っていた。

 涙。

 それはほほを伝い、落ちていく。

 心が痛みを感じて無意識に涙を流していた。

「馬鹿ね、なに柄にもなく感激と化しちゃってんのよ」

「んなっ! 感激とかそういう‥‥」

「しかたな――」

 柚葉はハンカチを取り出し竜輝に手渡そうとしたがそれよりも素早く――

「あの、お客様よろしかったらこれをお使いください」

 やさしく店員がハンカチを差し出す。

 竜輝は驚きながら店員のほうを見てありがたく受け取った。

 気遣いすらしてくれるこのフィリアス人に感銘を受ける。

 いや、この店員だけではない。

 ここに来るまでの間にどのフィリアス人も世界に溶け込み人間と共存して生活をしていた。

「っ!」

 柚葉竜輝の脇腹をど突き、その場から少し離れていく。

「あいつなんだ?」

 愛華と美香は彼女のその姿を見て少しだけ、気持ちがわかり苦笑い。

「美香姉さん、おれ間違ってたよ」

「え」

 美香はこちらを見て竜輝にそのあとの言葉を問い詰めらる。竜輝は恥ずかしいのでまぎらわすように店員にハンカチを返しながら――

「もうしわけないです。最近花粉症ぎみで。店員さん、なんかおれにあうふくとかってありますかねぇー」

 ごまかすかのようにして店員の話に乗っていった。

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