5話 けじめ
すみません、遅れました!
「……えっ?」
えっ?
「アラベルさんいいの?」
「人間を住まわせるのですか!?」
セリアは笑顔でアラベルに聞いていたけど、サレナさんは、アラベルさんに、信じられないと言わんばかりの様子だった。
「勇者だぞ?それに子供1人で街に置いていくのか?」
「ですが、里の者が認めてくれるかどうか…」
「勇者と知れば、すぐに認めるだろう」
「それはどうでしょうか?帝国の勇者のせいで勇者の評価がかなり低くなっていますからね」
…帝国の勇者?
そしたら、他にも勇者がいるのかもしれない。
「アラベルさん、帝国の勇者ってなんですか?」
「……帝国の勇者か。あいつは、勇者の中でも異質で、勇者らしからぬ勇者、帝国の犬だ。帝国の命令に従い、人を容赦なく殺す。それも無表情で、だ。村をいくつも消しているやつで、悪魔と呼ぶ奴もいる。
…もしあったらすぐ逃げろ、あいつは帝国一の力を持つ」
話を聞いてるだけでも
もしかしたら、僕と同じ転生者かもしれない。
違ったら確実に殺されるし、転生者だったとしても殺されるかもしれない。
でも、1度話をしたい。
少なくとも今の力じゃ瞬殺だろう。
「で、どうする?
衣食住はもちろん、エルフは魔法に特化しているから、魔法の特訓もできるぞ」
実際、こっちのデメリットは里の人が認めてくれるかどうかだけだ。
「はい、お願いします!」
「里に住むの?やった!」
「……わかりましたよ…」
セリアも喜んでいる。
サレナさんは仕方なくといった感じだが。
「動ける?」
サレナさんが聞いてきた。
「はい、大丈夫です」
「そう、なら今から街に行くよ」
「い、今からですか!?」
「当然だろう」
こんな簡単に決まっていいのだろうか?
でも、転生してから、人間を見ていない。
…異世界の街を見ておきたかったし。
街にはサレナさんと2人で行くことになった。
街には冒険者ギルドがあるらしく、サレナさんはCランクだそうだ。
ギルドの冒険者にはランクがあって、上からS、A+、A、B+、B、C+、C、D+、D、E、F、Gの12ランクがあるんだそうだ。
「そういえば、街の名前はなんですか?」
「ん?街の名前はアルカロ。この街、というかこの国の街には、メルリアという女神に関係する者の名前をつけているんだそうだ」
そうなのか。
そういえば、地球の神様の名前、聞いてなかったな。
もしかしたら、勇者召喚のときに会えるかもしれない。
まあ、生きていたらだけど…
魔王ってどんな姿なんだろう?
人の姿をしているのか、それとも翼や角が生えていたり、めちゃくちゃ大きかったりするのだろうか。
そんなことを考えていると、最近聞いた、不快な声が聞こえてきた。
見ると、ゴブリンが3体、こっちに向かって走ってきていた。
「ギャヒ!」
「ギュフ!」
「ギョヘ!」
相変わらず気持ちの悪い声だ。
〈索敵〉は使っていない。
…忘れていたわけではない。
鳥肌が立ってきたが、さすがに前みたいにはならない。
僕はもう戦うと決めたんだ、ゴブリン程度に怯えていては前に進めない。
「ここは私がやろう」
「いや、僕にやらせてくれませんか!」
「……わかった、でも戦えないと判断したら止めさせてもらう」
「ありがとうごさいます」
サレナさんは少し後ろに下がった。
ゴブリンたちはあと5mくらいまで来ていた。
《ゴブリンA》
種族 ゴブリン
LV.3
HP 30/34
MP 0/0
《ゴブリンB》
種族 ゴブリン
LV.3
HP 34/35
MP 0/0
《ゴブリンC》
種族 ゴブリン
LV.2
HP 15/26
MP 0/0
最初のゴブリンと大して変わらないようだ。
だが、数は3体でもう目の前まで来ている。
それなら使うのは、〈氷魔法〉。
時間がないので、〈詠唱破棄〉も使う。
「【アイスニードル】!
けっこうMPを取られたが、ちゃんと発動した。
氷で出来た大きめの針が前方広範囲にばら撒かれて、ゴブリンたちは足を止めた。
今のうちに、〈雷魔法〉を使う。
こっちも〈詠唱破棄〉。
「【サンダー】!」
手から電気が飛んでいき、一番弱いゴブリンに当たるとゴブリンは黒焦げになって倒れた。
《ゴブリンC》
種族 ゴブリン
LV.2
状態 死亡
HP 0/26
MP 0/0
倒せたみたいだ。
すぐに、〈光魔法〉を発動!
もちろん〈詠唱破棄〉。
「【ライト・レイ】!」
手から光の玉が生まれ、そこから細い光線が撃たれゴブリンの頭部を撃ち抜いた。
さらに、向かって来ていたゴブリンに〈氷魔法〉を放つ。
「【アイスランス】!」
氷の1mの槍が喉に刺さり、ゴブリンは倒れた。
《ゴブリンA》
LV.3
状態 死亡
HP 0/34
MP 0/0
《ゴブリンB》
LV.3
状態 死亡
HP 34/35
MP 0/0
ちゃんと全部倒せたみたいだ。
…あまりいい気分ではないが、ゴブリンの死骸を見ても問題はないみたいだ。
「…すごいな、よく頑張った!」
「ちょっ!?」
頭を撫でられる。
変な気分だが、嫌じゃない。
「さ、行くとするか!」
「はい!」
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マコト、という少女は女の子なのに、自分のことを僕と言っている。
急に里に住むことが決まったが、アラベルさんは
やると言ったら絶対にやり遂げるので、大丈夫だろう。
だが里の者に説明しなければならないし、
どうせなので街に先に行くとした。
この森は、魔物は出てもゴブリン程度なので、私がいれば問題ないだろう。
すると、タイミングよく?ゴブリンがこちらに来ていた。
やろうと思ったがマコトは何かを決意した表情で、自分がやると言った。
使う魔法は下級だが、威力が高く、狙う所も良かった。
でも、全然子供の感じがしない。
…だが、ゴブリンを倒し終えたマコトの表情は悲しそうで、今にでも泣きそうだった。
どんなに才能があろうが、強かろうが、彼女は人だ。
かわいい女の子だ。
「……マコトを里に住ませるなら、私たちの家に住ませようかな」
「何か言いませんでした?」
「いいや、なにも」
自然と、嬉しくなった。
スキル追加しました、と言ってもまだ意味はないですが。