表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

デウス・エクス・マキナの円卓のなかで

 シリウスという少女がいる。


 黒くうつくしい長い髪に、サファイアブルーの瞳。

 ラヴェンダーアイスのワンピースを着た少女は、一週間ぶりのライヴハウスに立つ。


 そうして、細い喉から絞り出すようにうたう。


 煙草の煙や、アルコールの臭いが充満した小さなライブハウス。

 若い男女、中年の男女。さまざまな年齢の人間が、集まる。


 毎週日曜日。

 19時に、シリウスは歌う。

 白いカンバスに色を塗りたくるような声で。

 雪解けの水のように、透明なトーンで。

 少女のような、変声期が過ぎていない少年のような声で。


 喧噪があふれるライヴハウスのなか、シリウスが歌う瞬間だけ、ここは楽園になる。

 アダムとイヴが禁断の果実を食べる前の、あるいはパンドラが匣を開ける前の楽園に。




 赤い靴を履いた少女は、残酷なほどに美しいメロディを口ずさむ。

 煙の灰色も、アイリスの色をしたアルコールも、彼女には見えていない。


 ただ、白く輝く月だけが彼女の目に映っている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ