四話目
あの後、私はすぐに起きた。
村の人に囲まれ村まで運ばれていた。
担架の様なもので運ばれていた。
洞窟にあった物で見つくろったらしい。
ブーストを使った事により体の疲れはピークになっていた。
ブーストとは、身体能力を上げる魔法で、めったに使う人いない。例によって、疲労がとてもきついからだ。
(そうだ)
彼女は・・・
首だけを動かし、もう一つの担架が運ばれているのが見えた。
しかし、顔には白い布がかぶせてあり、担架にじんだ赤い血液が滴り落ちていた。
その横には、子供が一人泣きじゃっくっている。
あの人の子供かな?
そう思うと、心がきつく縛られていく感覚がした。
そのあとの事はあまり思い出せなかった。
だが、きずいた時には隣で泣きじゃくっていた子供が私をなだめていた。
お母さんの首が一部無くなった。
「お母さん!!」
気付いた時には駆け寄っていた。コボルトを倒したお姉ちゃんのレイピアで縛ってあった縄を切って駆け寄った。
心臓の音が弱くなっている。
目もうつろになってる。
お母さんは首を食べられていてはっきりと声が聞こえなかった。
「かーよーーーがーーーーでーるように」
「なに、お母さん」
「幸せでいてね」
血を吐きながらもそれだけはっきりと聞こえた。
そのあと、心臓の音がやんだ、聴こえるのは私の鼓動だけだ。
悲しい、心臓が止まりそう、でも止まらない
もう、私だけ
その瞬間、甲高い叫び声が森に響き渡った。
実際、何分叫んだかわからなかった。
十分、二十分・・・、いやもしかしたら数十秒だったかもしれない。
村の知り合いに肩を叩かれるまで叫び続けた事しかわからなかった。
村のみんなで二人分の担架を洞窟にあった物で作った。
一つは、お姉さんので、
もう一つは母さんの分、
私は、お母さんの横についていった。
お母さんの姿を見ていると、涙がつらつらと出てくる。
「うわーん」
誰かの泣き声が聞こえた。
あたりを見回してみると、その声がもう一つの担架から聴こえてきたのがわかった。
担架を運んでいたお兄さんも、驚いていた。
だって急に泣き出すのだから無理もない。
「私が殺した・・・私が・・・私が!!」
担架が沈んでいてよく見えなかったけど泣いているのはわかった
悲鳴に似た叫びが村への帰り道で響いた。
その時のお姉さんは戦っている時より弱く脆く見えた。
「お姉さん、泣かないで」
そう呼びかけてお姉さんの担架に近寄っていった。
私は身長がそこまで無いから担架を覗き込む形になる。
まだ、泣いてる彼女を覗き込むと
かわいいと思った私がいた。
白い頬を赤くし、目を細めながら涙を流してる。
よく大人の人が言う「泣いている君も好きだ」って理由がよくわかってしまう。
(ダメダメ!!)
自分を心の中で叱咤しながら
「お姉さんは悪くないよ」
と何回も連呼した。
村について、お姉ちゃんは一晩泊って帰るらしい
部屋は、私の家の開き部屋になった。
家は、私以外いない。
二人で住んでいるときは普通だったのに、今じゃあ家が広く感じる。
お父さんも三年前病気で死んじゃってる。
お姉さんは、隣の部屋で寝ている。
相当、力を使ってたってお医者さんから聞いた。
隣の部屋には、お姉ちゃんがいるのに、孤独感が広がるばかりだ。
(誰のせい?)
頭の中で艶めかしい悪魔の声が聞こえてくる。
(ねぇ、誰のせい?)
「私のせい」
(違うでしょ?誰のせい?)
「違う?」
(そう、お母さんは誰が殺したの?)
「…コボルト」
(実際、そうだけど決断したのは?誰?)
「違う!!お姉ちゃんは悪くない!!」
(決断をしたのは…彼女でしょ)
「・・・」
(コロシタクナイノ?)
本性を出したかのようにドスの聞いた声で心に響いてくる。
「殺す?」
(アナタノオカアサンヲコロシタノヨ?)
「殺す」
疑問が肯定に変わる瞬間、悪魔の口が少し上がったような気がした。
(セイカイ)
憎悪 嫌悪 憎しみ 苦痛 苦しみ
様々な黒い感情が混ざり合った。
そこからの行動は速かった。
ナイフを持って、隣の部屋へ移動するだけだ。
あとは、胸にナイフを刺すだけ。
(タメラウナ)
「ためらうな」
少女はためらうことなく復唱した。
心ここになしといった表情をしていた。
ナイフを彼女に振り下ろした。
しかし、スッとナイフは止められた
「何してんだ!!貴様!!」
声を荒げた声で発声した。
でもそれは、私の顔じゃなく、お腹に叫んでいた。
ナイフを止めたのは、やられるハズの本人だった。
しかし、その時の彼女は彼女ではなかった。
強い、もとの彼女になかった威圧
いや、これがもとの彼女
「初めの一撃」
彼女は、私の胸に手をかざし、何かの呪文を唱えた。
何かが少女の中から出てくる。
蛇に似たような赤黒い色をした物体が体を這って体外へ出てくる。
それを察したように彼女は、少女の持っていたナイフを持ち、その蛇を半分にぶつ切りした。
意識が戻っていく。
黒い感情がパキパキと音を立てて崩れていく。
気付かないうちに牢に入れられた心臓は出張するように通常運転を始め出した。
自分がした事に涙が出てくる
「お姉ちゃん、ごめん」
「ああ、いいさ」
私は強くひき寄せられ強くはぐされた。
「あれは体内に入っていたずらをする悪い蛇だ。思考をゆっくり誘導させて思い通りにさせる悪い蛇だ。仕方ないさ」
そういったお姉ちゃんは、男勝りでとても強く感じた。
「もう一人の私もお願いな」
「・・・うん?」
お姉ちゃんは一人じゃないの?
「すまない、少し寝せてくれないか?」
「あ、うん」
そう、返事をするとお姉ちゃんは静かにまた寝息を立てた。