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「第8幕」

「へぇ…そんなことがあったんだ」


「知らなかったなぁ…」


「僕…カジキ…大好きだよ」


子供達は話が老人が語り終えると、今まで黙っていた反動からかはしゃぎだした。


海は夕日が半ば沈み、浜辺は綺麗な真紅の世界へと移り変わっていた。


炎の色よりも紅い世界…老人は寂しげな表情を浮かべながら静かに夕日を眺めていた。


やがて、少年の内の1人が思いついたように手を「ポン」と叩き、


「じゃぁさぁ…この砂浜が'''「紅い砂浜」'''って呼ばれるのってもしかして…」


少年が恐る恐る、老人の表情を覗うようにして尋ねた。


老人は一瞬、はっと我に返り、どうしたものかと迷った後に


「そうじゃ…この浜では多くの血が流れ、長い間人々には「紅い砂浜」と忌み嫌われておっ


た…しかし、このように平和になってからはそのような悲劇があったことを誰も覚えてはおら


ん…」


老人が静かにそう搾り出すように呟くと、少年達は明るい声で


「そうなんだぁ…俺、てっきり夕日が綺麗だから「紅い砂浜」って呼ぶんだと思ってた」


「俺も、俺も!」


「ぼ…僕も…」


子供達達が元気に、我こぞって手を挙げる姿を見ると、老人は微かに瞳に涙を湛えながら


「それでいいんじゃよ…もう、あのような惨劇が繰り返されたりはしないじゃろ…」


と呟き、すっと涙を皺だらけの手の甲で拭うと優しい声で…


「ほぃ…爺のお話はこれで終わりじゃ…もう、日も暮れる…暗くなる前に家に帰るんじゃ


ぞ…」


そう子供達に笑顔を浮かべながら告げると、少年達は元気に手を振り


「うん、爺のお話面白かったよ〜」


「またね〜!ばいばぁい」


と我先にとそれぞれの家へと駆けて行った。


子供達の背中を見送り、手を振る老人…そして子供達の姿が見えなくなると、


再び夕日をじっと見つめていた。


夕日が沈み、世界から紅い色が消えるまでの間…

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