「第2幕」
夜明けの城内にある兵舎を1人の青年が駆けて行く。
向う先にあるのは王城の前に広がる広場であった。
鎧を「がしゃがしゃ」と鳴り響かせながら走った。
その青年の顔は微笑んでいた。その脳裏に浮かぶのは美しい王女の姿。
青年は始めて見かけたときから王女に恋していた。
叶わぬ恋とは知りながら、それでも王女の傍にいたいと思い、今日まで研鑽を積み、
辛い仕事にも耐え、手柄を立てて近衛隊の一員としての地位にまでに上り詰めたのだった。
しかし青年は王女には王女に相応しい婚約者がいることは知っていた。だが、青年はその一途
な想いを胸に秘めたまま、今日まで来たのだ。その婚約者は青年の眼から見ても文句のつけ
ようが無い素晴らしい人物であった。
そして近衛隊に着任時に頂いた王女の言葉「私達と…この国の民を守ってくださいね」
その言葉を聞いたとき、青年は「この方の為に、この命を捧げよう…」
そう誓ったのであった。
そして今日、初めて近衛隊に特命が下されることとなった。詳しい内容は聞かされていない。
だが、おおよその検討は付いていた。おそらく「あの魔物」だろう
青年の脳裏に首尾よく手柄を立て、王女に「よく頑張りましたね」と褒めてもらう情景が
浮かんだが、首を振り払いその自分の浮かれた頭を冷やす。
「気を引き締めなければ…」
そう呟き、雑念を振り払うと誰よりも早く集合場所へとたどり着いたのであった。