緑川公園にて
呑み過ぎた、呑まれすぎた。頭がぐらぐらする。
「夜風に当たって帰るか…」
私はこうなったとき、いつも行くところがある。
緑川公園だ。
私の住む黒部ニュータウンの西側に沿うように存在するこの公園は、
公園というには大きめで、ちょっとしたテーマパークぐらいはあり、
小川や蓮の花咲く池がありアヒルボートや釣りなどで楽しむことができる。
まぁ、たいしたものは釣れないだろうが…
休日なるとは、読書する老人夫婦や家族ずれでピクニックにくる人などでいっぱいになる
ここら辺に住む人の憩いの場である。
私だって若い頃に息子と娘を連れてきたことがある。
あの頃は楽しかった…
いきなりだが、夜の公園に行ったことはあるだろうか。
夜の公園というのは昼とはうってかわり、どこか少し神秘的で、恐ろしげで、美しい、
昼とは全く違う顔を見せる。
昼が表なら、夜が裏そんなふうに例えたならつたわらないだろうか。
私がそんな夜の公園の小池沿いの道ををちょうど通った時だった。
「コポッ…」
どこからか音が聞こえたが、酔っているためか方向感覚がにぶっている。
「呑みすぎたか、変な幻聴が聞こえるぞぅ…大丈夫だよなぁっ…
この年になって恐いとかあるはずないよなぁ」
少し声が震えている事に気づき、自分がふるえていることに気づいた。
はやりの歌を口ずさんでみた。
今年の忘年会のために少しずつ練習してきた歌なんだ。
こんなときにお披露目になるとは思ってもみなかったが…
私の中ではここ数年の中で1番の完成度だと思っていたこの歌も
この公園の闇に吸い込まれていった。
「コポッ…コポコポツ」
音は鳴りやまないようだ、もう許してくれよ。。
そんな私の思いとは裏腹に音は鳴り続ける。
「ゴポッ、コポコポッ」
要約決心が付いた私はくらくらする頭をおさえて、音源を探してみた
… どうやら池のようだ。
恐る恐る音を発している池を見た、
そこには無数の月の光で輝く波紋のけしきがひろがっていた。
「すごい…きれいだな…」
波紋と波紋がぶつかり、幾何学模様のようになっている。
その上に綺麗な大きな蓮の葉と、花がならんでいる。
私はしばらくその光景を息と音の原因も忘れて眺めていた。
美しい。こんなに美しいのは子供が生まれる前に行った厳島神社の日の出以来か…
しかし、それともどこか違う神秘さ漂っている。
それが私をひきつけているんだろう。
あれからいくら時が流れたのだろう、なぜか池から目が離せなかった。
なにをきっかけにしてか、
突然魔法が解かれとき。人間の危険察知能力というものが私を一瞬冷静にさせた。
「風が無いのになぜ、波が立つんだ…」
なぜそんなことに気がつかなかったのだろう。どう考えても不自然なのに。
その思考があたまをよぎった時、瞬く間に身体に緊張が走った。
いや、これは緊張ではない恐怖なんだろう。これが純粋な恐怖なんだ。
分かったときには、私は地に伏せていた。
酔いと恐怖の目眩で吐いた。