第十八章:新たな島への到着
第十八章:新たな島への到着
第一場面:戦いの後
小さな船の周囲では、穏やかな波が揺れていた。太陽の光が広大な海の水面に反射している。
ルキは船首に立ち、両手を頭の後ろに回していた。まるで、数時間前に繰り広げられた戦いなど、ほんの些細な出来事だったかのようだ。
一方、リンゴはマストの近くに座り、賞金稼ぎたちが残していった武器を調べていた。反対側では、マキが深く考え込むような表情で水平線を見つめていた。
リンゴ:「なあ、さっきの戦いについて、まだ気になることがあるんだ。」
ルキ:「今度は何だ? 俺たちはあいつらを倒した。それで終わりだろ!」
リンゴ:「お前はいつもそう言うがな……。あの男は、最初から俺たちを恐れていたわけじゃない。お前を捕まえることに、絶対の自信を持っていたんだ。」
マキ:「リンゴの言うとおりよ。彼らは、ルキの懸賞金だけでなく、あなたについて何か知っているような態度だったわ。」
ルキは二人のほうを振り返り、かすかな笑みを浮かべた。
ルキ:「俺の強さを聞いて、試してみたくなったんじゃないか?」
リンゴ:「あの状況を、運試しと呼ぶつもりか? 俺たちは、もう少しで完全に包囲されるところだったんだぞ!」
ルキ:「でも、失敗しただろ? ハハハ!」
リンゴはため息をつき、顔を背けた。
リンゴ:「お前と話しても無駄だな。」
マキは小さく笑ったが、すぐに真剣な表情へと戻った。
マキ:「もう一つ、気になることがあるわ。あの男は意識を失う直前、こう言ったのよ。『この力……まさか、あいつなのか?』って。」
一瞬、沈黙が流れた。
ルキは海に目を向け、それから自分の拳を見下ろした。
ルキ:「聞いていたよ。でも、誰のことを言っていたのかは分からない。」
マキ:「あなたと似た力を持つ人物に、以前会ったことはある?」
ルキ:「俺の知る限り、ないな。」
リンゴ:「なら、誰かと勘違いしたのかもしれない。」
ルキ:「そうかもしれないな。とにかく、そいつに会ったら、直接聞いてやるさ!」
ルキは、その男が最後に口にした言葉の意味を知らなかった。
あの男が、ルキの中にある力を見て、誰かの姿を思い浮かべたことも。
そして、戦いの最中、遠くから彼らを見守り、誰にも気づかれないまま介入した人物がいたことも。
ルキにとって、あの戦いは自分たちの力で勝ち取った勝利にすぎなかった。
その認識を疑う理由など、彼にはなかったのだ。
第二場面:水平線の向こうにある船
ルキたちの船から遠く離れた海上を、もう一隻の船が進んでいた。
船首にはシンゾウが立っていた。彼の表情は、いつもの静けさを取り戻していた。腰には剣が鞘に収められ、海風が衣服の裾を揺らしていた。
そこへ、彼の仲間の一人が近づいてきた。
仲間:「シンゾウ、あの少年たちの船から離れましたが、このまま進み続けるのですか?」
シンゾウはすぐには答えなかった。
ただ水平線を見つめ、しばらくしてから剣の柄に手を置いた。先ほどの出来事を思い返しているかのようだった。
シンゾウ:「あの件は、もう終わった。」
仲間:「しかし、賞金稼ぎたちは今後もあのような連中を追い続けるでしょう。このまま航海を続ければ、もっと危険な集団と遭遇するかもしれません。」
シンゾウ:「分かっている。」
仲間:「それなら、なぜ彼に何も知らせないのですか?」
シンゾウはゆっくりと顔を向け、落ち着いた目で男を見た。
シンゾウ:「今の彼に、知る必要はないからだ。」
男は黙り込んだ。
シンゾウ:「知らせたところで、何も変わらない。彼には、このまま旅を続けさせればいい。」
それ以上、男は質問しなかった。
シンゾウは船首を離れ、仲間たちを残して歩き始めた。
彼には、ルキの前に姿を現すつもりはなかった。また、戦いの最中に誰が自分を見守っていたのか、ルキに知られることも望んでいなかった。
やがて船は進路をわずかに変え、ルキたちが進む航路から離れていった。
ルキはその船に気づかなかった。
その存在について耳にすることもなかった。
そして、シンゾウがすぐ近くの海域にいたことさえ、知る由もなかった。
三人の旅は、賞金稼ぎとの戦いについての認識を何一つ変えることなく、続いていった。
第三場面:島の出現
数時間が過ぎ、太陽が西へ傾き始めた。
船首に立っていたルキは、退屈そうに水平線を眺めていた。そのとき、薄い霧の向こうに何かが見えた。
ルキ:「ん? あれは何だ?」
彼は手を額にかざし、遠くを見ようと目を凝らした。
ルキ:「おい、リンゴ! マキ! こっちへ来て、あれを見てみろ!」
二人が彼のそばへ駆け寄った。
リンゴ:「どうした?」
ルキは水平線を指さした。
ルキ:「島だ!」
やがて、巨大な島の姿が徐々にはっきりと見えてきた。
島には深い森が広がり、そびえ立つ山々の頂は雲の中へと伸びていた。
広大な海岸線には、岩の切り立った崖と砂浜が入り交じり、島の内陸部の大半は鬱蒼とした木々に覆われていた。
マキ:「とても大きな島ね……。こんな場所に、これほど広い島があるなんて思わなかったわ。」
リンゴ:「森も広そうだ。奥には村や町があるかもしれないな。」
ルキは興奮した様子で声を上げた。
ルキ:「最高だ! さっそく探検しようぜ!」
リンゴ:「待て! まだ島の名前すら分からないんだぞ!」
ルキ:「着いてから調べればいいさ!」
リンゴ:「それは答えになっていない!」
しかし、マキは二人のやり取りに加わらず、注意深く海岸を観察していた。そこで、ある異変に気づいた。
マキ:「二人とも、ちょっと待って。何かおかしいわ。」
ルキは動きを止めた。
ルキ:「どうしたんだ?」
マキ:「港に船が一隻も見当たらない。それに、海岸近くの建物から煙も上がっていないわ。」
リンゴは再び島へ目を向けた。
リンゴ:「海岸の近くには誰も住んでいないのかもしれない。」
マキ:「その可能性もある。でも、それだけが理由とは思えないわ。」
船が海岸に近づくにつれ、古びた建物の細部まで見えるようになった。
そこには木造の家々が点在し、小さな桟橋もいくつかあった。しかし、どこにも人影はなかった。
古い小舟が港の柱につながれていたが、その周囲にも人の姿は見当たらない。
本来なら海岸の上空を飛んでいるはずの鳥さえ、一羽も見えなかった。
ルキ:「理由が何であれ、上陸すれば分かるさ。」
リンゴ:「頼むから、また面倒事に巻き込まないでくれよ。」
ルキ:「心配するな!」
リンゴ:「お前がそう言うと、余計に心配になるんだよ!」
船は桟橋の一つへと近づき、三人は上陸の準備を始めた。
目の前に広がる新たな島は、静まり返り、まるで深い森の奥に何かを隠しているかのようだった。
第四場面:誰もいない場所へ続く足跡
ルキは真っ先に桟橋へ飛び移り、続いてマキが降りられるように手を差し伸べた。最後にリンゴが上陸し、周囲を警戒するように見回した。
ルキ:「やっと陸地だ!」
彼は軽く体を伸ばし、砂浜へ向かって歩き始めた。
リンゴ:「あまり離れるなよ。ここで何が待ち受けているか、まだ分からないんだからな。」
ルキ:「どの島に来ても、同じことを言っているな!」
リンゴ:「どの島に来ても、お前が同じことをするからだ!」
マキは微笑んだが、地面に目を向けた途端、足を止めた。
マキ:「二人とも、こっちへ来て。」
ルキとリンゴが彼女のそばに集まった。
砂浜には、無数の足跡が残されていた。大きなものもあれば、小さなものもある。その多くは海岸から建物の集まる場所へ向かい、さらに森の奥へと続いていた。
マキはしゃがみ込み、足跡を注意深く調べた。
マキ:「この足跡は新しいわ。」
リンゴ:「持ち主たちは、まだ島にいると思うか?」
マキ:「その可能性は高いわね。」
ルキは森のほうを見た。
ルキ:「それなら、足跡をたどってみよう。誰かに、この島について聞けるかもしれない。」
リンゴ:「待て! 足跡がどこへ向かっているか、よく見てみろ。」
リンゴは地面を指さした。
足跡の大半は、海岸から森へ向かっていた。しかし、海岸へ戻ってきたと思われる足跡は、ごくわずかしかなかった。
リンゴ:「大勢の人間が海岸を離れて、島の奥へ向かったようだ。だが、なぜ誰も戻ってこない?」
マキ:「理由は分からないわ。でも、普通の事情かもしれない。」
ルキ:「それなら、助けを必要としている人がいるのかもしれないな!」
リンゴ:「それとも、森の中に危険な何かがいるのかもしれないぞ!」
ルキ:「ここで言い争っていても、何も分からないだろ!」
ルキは向きを変え、森へ続く道を歩き始めた。
リンゴはため息をつき、マキと顔を見合わせた。
リンゴ:「未知の場所へ向かう前に、一度くらい立ち止まって考えることはできないのか?」
マキ:「無理でしょうね。」
そう言うと、彼女もルキの後を追った。
リンゴも渋々ながら二人についていった。
三人が海岸から遠ざかるにつれ、波の音は次第に聞こえなくなっていった。
第五場面:森が隠しているもの
三人は、高い木々に囲まれた細い道を進み、森の中へ入っていった。
木々の枝の間から差し込む陽光が、地面に金色の筋を描いていた。それでも、奥へ進むにつれて森は徐々に暗くなっていった。
ルキは先頭を歩き、木々や岩を興味深そうに眺めていた。マキは彼の近くを歩きながら、周囲の様子に注意を払っていた。
一方、リンゴは時折後ろを振り返り、海岸へ戻る道がまだ分かることを確かめていた。
リンゴ:「この森、静かすぎると思わないか?」
ルキ:「動物があまりいないんじゃないか?」
マキ:「それが理由だとは思えないわ。」
彼女は突然立ち止まり、手を上げて二人にも止まるよう合図した。
マキ:「聞いて。」
三人は息を潜めた。
最初に聞こえたのは、風が木々の葉を揺らす音だけだった。
しかし、やがて森の奥から微かな音が届いてきた。
ドン……ドン……ドン……
何か重いものが木を叩いているような、規則的な音だった。
リンゴはマキを見た。
リンゴ:「今の音は何だ?」
マキ:「分からないわ。」
ルキ:「あっちから聞こえてくるみたいだ。」
彼は木々の間に続く細い道を指さした。
リンゴ:「待て、ルキ! 何の音なのかも分からないんだぞ!」
しかし、今度のルキはすぐには走り出さなかった。
彼はその場に立ち、音に耳を澄ませた。それから拳を握りしめた。
ルキ:「もし誰かがいるなら、何が起きているのか確かめよう。」
三人は警戒しながら歩き続けた。
やがて木々の間隔が少しずつ広がり、その向こうに、海岸近くで見たものよりも大きな建物の影が現れた。
ルキは道の端で足を止めた。
そこには大勢の人間が通ったことを示す、はっきりとした足跡が残されていた。
しかし、周囲には人影がまったくなかった。
そのとき、再び別の音が聞こえてきた。
今度は木を叩く音ではなかった。
建物の向こうから、かすかな人の声が聞こえたのだ。
謎の声:「……急げ! もう時間がない!」
ルキ、リンゴ、マキは互いに顔を見合わせた。
リンゴ(小声):「やっぱり、この奥に誰かいるんだ。」
マキ:「それも、何かを隠しているようね。」
ルキは小さく笑みを浮かべ、一歩前へ踏み出した。
ルキ:「よし……この島で何が起きているのか、確かめようぜ。」
しかし、彼らがさらに近づこうとした瞬間、声は突然途切れた。
そして、再び静寂がその場を支配した。
三人は動きを止めたまま、頭上の枝を揺らす風の音に耳を澄ませた。
島の奥で何が待ち受けているのか、彼らにはまだ分からなかった。
そしてルキは、この新たな冒険が、これまでに経験したどの出来事とも違う戦いへとつながっていくことを、まだ知らなかった。
つづく……
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