第2章 銀の少女と、日本の選択
ミヤコは日本政府と契約を結びました。
「普通に暮らしたい」
その一言のために、彼女は自分の力を一部提供することにしたのです。
しかし——
世界は彼女を静かに見過ごしてはくれませんでした。
他国の影が、すでに動き始めています。
地震から三日後。
都心の地下施設にある、厳重に警備された会議室。
着物姿の銀髪の少女、ミヤコは静かに正座をしていた。
色白の肌と清楚な佇まいが、蛍光灯の下でも淡く輝いている。
向かい側には、日本政府の最高責任者である鷹峰撫子首相と、数名の幹部が座っていた。
鷹峰首相は鋭い視線をミヤコに向け、静かに切り出した。
「君の要求は理解した。
日本国籍、住居、スマホ、そしてコンビニでのバイト……これらを認める代わりに、何を提供してくれる?」
ミヤコは少し視線を落とし、控えめな声で答えた。
「……不治の病を、治せます。
それと……日本国内だけですが、防衛のお手伝いも、できます」
部屋の中に緊張が走った。
防衛省の官僚が、抑えた声で尋ねる。
「防衛とは、具体的にどの程度のものだ?」
ミヤコは少し困ったように微笑んだ。
「……地震くらいなら、止められます。
ミサイルも……たぶん、大丈夫です。あとは……」
一瞬、誰もが息を飲んだ。
鷹峰首相は、長い沈黙の後、静かに頷いた。
「わかった。
君の要求は飲もう。ただし、条件がいくつかある」
こうして、日本政府とミヤコの極秘契約が結ばれた。
国籍の付与、専用住居の提供、スマホの使用許可、そしてコンビニバイトの許可。
ミヤコはそれらを聞き、ほんの少しだけ嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます……
普通に、暮らせるんですね」
契約からさらに数日後。政府が手をまわしたおかげで
ミヤコは、都内のごく普通のコンビニエンスストアでバイトを始めた。
着物ではなく、制服に着替えた彼女は、レジ打ちを丁寧にこなし、品出しも素早かった。
銀髪と色白の美少女ぶりが目立つため、開店早々から客足が明らかに増えていた。
店長の男性は、嬉しそうに言った。
「ミヤコちゃん、本当に真面目だなあ。助かってるよ」
ミヤコは小さく頭を下げ、柔らかい声で答えた。
「……ありがとうございます。
普通に働けるのが、嬉しいです」
休憩時間になると、彼女はバックヤードでスマホを取り出し、アニメの最新話をチェックしたり、推しのVTuberの配信をこっそり見たりしていた。
ごく普通の、どこにでもいる少女のような時間。
しかし、そんな穏やかな日常の裏側で、
すでにいくつかの「影」が、ミヤコに忍び寄ろうとしていた。
他国の工作員、そして特殊部隊——。
ミヤコはそれを感じ取りながらも、ただ静かにため息をついた。
「……なるべく、穏やかに済ませたいんですけど」
彼女は魔力も瞬間移動も使わず、
非殺傷性の柔らかい魔法で相手を無力化しながら、静かに逃げ続けるつもりだった。
普通の生活を守るために。
2章、お読みいただきありがとうございます。
ミヤコの「普通の生活」が少しずつ始まりました。
控えめで真面目な彼女が、コンビニで働く姿……なんだかほっとしますね。
ただ、穏やかな日常の裏で、他国からの接触が徐々に近づいています。
次章では、ミヤコが初めて他国の工作員と遭遇することになります。
彼女は魔力も瞬間移動も使わず、どう対応するのでしょうか?
引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。




