6-7.謎の少女と辻体当たり
プシュ~ッ
電車の扉が開く。
この時間帯、学生は学校だしサラリーマンの皆さんは会社ってことで、あんまり乗客はいない中、街には不釣合いな服を着た少女が降り立った。
茶色の長袖ジャケットに、同色のスカート。
ボーイスカウトとかその辺がしてそうな服装だ。
もう結構暑いのに、下には黒い服を着込んでいる。
ピィーッ!!
短い電子音が鳴り、彼女は胸ポケットから携帯電話を取り出した。
「…はい、こちら鎖雪。依頼の受諾は完了、現在任務遂行中です。」
事務的で、やたらと自信のある声。
彼女自身、可愛らしい顔立ちをしているけど目つきは鋭いキャリアウーマンだ。
まだ高校生くらいなのに…。
「ターゲット“ステフィ”の行動範囲から推測し、現地区B~Dブロック内に逃亡中と判断。発見次第保護します。」
彼女はそう言うと、携帯を切った。
ゆっくりと深呼吸し目を細める。
そして空を仰ぐ。
「…そういえば、この街ってシュウがいるんだっけ…。」
シュウ?それってもしかして…。
「久し振りに、逢いたいな…。」
呟く鎖雪っていう少女。
…コイツの正体は一体?そしてシュウってやっぱりアレのことなのか?その関係は?
その答えは後ほど。
◇◆◇
「今?アパートにいるよ。なかなか仕事に区切りがつかなくて。君は?」
パソコンに向かった厨は、いつも穏やかな表情のまま携帯で話している。
相手は多分…。
『私も家にいます。厨さん、逢いたいです。』
やっぱりコノハさんでした。
少し前から付き合い始めたコイツらは、いつもこうやって電話し合っているのだ。
アツアツなのはいいことだけど、もう少し自分の立場を考えて欲しい。
何てたって、片や正義のヒーローの実兄、片や世界征服を目論む悪の四天王だし。
「僕も逢いたいよ。そうだ、明日は1日休もうと思うんだけど、空いてるかな?」
『え…?お仕事、いいのですか?』
「ああ、今週は忙しくなりそうだけど…君に逢えるなら。」
『厨さん…。』
聞いてる第三者が恥ずかしくなるような会話だ。
でも主観のみで世界が見えてる今の2人にはそんな些細なことは気にならない。
『じゃあ、明日お邪魔しますね。厨さんが好きだって言ったソースカツ丼、腕によりを掛けて作りますから。』
カイネに料理を習っていた理由はやっぱりコレだったようだ。
厨は微笑む。
画面に映ったコノハも微笑んでいた。ラブ×2だ。
「楽しみにしてる。じゃあ、明日。」
『はい…。早く明日になって欲しいです…。』
ピッ…
通信が切れ、厨は携帯をスタンドに置いた。
そして再びパソコンに向かう。
「…コノハ、気に入ってくれるかな。」
パソコンのディスプレイには、木の葉が美しく舞い散っていた。
◇◆◇
別に何かを話し合うでもなく、無駄な時間を社会情勢学研究室で過ごしたウゴクンジャーの面々は帰路についていた。
って言っても、憬教授はまだ夜間の講義があるとかで大学。
冥介は誰かが俺を呼んでいる可能性も一概には否定できないとか何とかワケ分からんことをのたまった後、どこかへ消えていった。
だからまともに帰り道を歩いているのは3人だ。
「ふふふふふふふ…、サイン、アイのサイン…。」
夢見心地っていうより麻薬でトんでるって表情で呟き続ける綾。
足取りは軽やかだけど危なっかしい。
「だからセンパイは弱すぎるんだって。チンパンGに勝てないなんて、せっかくウゴクンジャーであいつらにダメージ与えられる体質になったのに意味ないよ?」
少し前からダークキャン・D怪人についての会話になり、たっぷりと週一を詰めてくる沙紀。
事あるごとに彼の背中をバシバシ叩く。
…家路への道程を女性2名に挟まれて歩いていく。
華の女子大生と旬の女子高生。
両手に花って言えば聞こえはいいし、事実、男だったらかなりGOODなシチュエーションだ。
でも、コレはちょっと違う。
どっちもトゲがあるには痛すぎるほどの凶暴女だ。
逆らったら投げられるか殴られそう。
だから週一君も幸せとは程遠い顔をして歩いていた。
事実、さっきからバシバシ叩かれてる背中が痛いし。
そろそろ叩くの止めてよプリ~ズって懇願しようと思った時だった。
ドンッ!!
沙紀ではない何者かが彼の背中に思いっきしタックルをかましてきたのだ。
「ぶっ!?」
吹っ飛びそうになる週一。
でも、その何者かはタックルと同時に彼に抱き付いたらしく、アスファルトとファーストキスをせずに済んだ。
突然のことに驚く3名。
綾と沙紀は同時に振り向き、週一に突っ込んで来た人間ミサイルをその目に映した。
「辻体当たりっ!!…驚いた?」
そこにいたのはセーラー服を着た少女だった。
週一を開放し、屈託のない笑顔でを向けている。
…何だか凄い沈黙が流れた。
何故に週一が女子高生にいきなりタックルされたのか?
何だよその辻体当たりって?辻斬りのパクり?
そしてコイツは誰なのか?
女子高生型に造られた新たなダークキャン・Dの刺客?それとも頭の可哀相な女の子?




