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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION6-悪の再臨と謎の少女-
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6-2.諦めが肝心

「…明らかにこれは湖じゃないよね。」


湖、というか水溜りの前で週一は呟いた。

前回来たときより時間が掛かったんで不思議だったが、どうやらいつの間にか水は引いてしまったようだ。

あの深かった地底湖は奥へと続く道になり、現在3人がいる行き止まりは元地底湖の最深部か。


「迷子になっちゃったんですかねぇ…。」


憬教授が呑気な声で呟いた。

でもここまではほとんど1本道。

迷子になれるヤツなぞどの世界を探したっていないだろう。


「洞窟が違うとか…?」


綾も困惑しているようだ。


「そんなわけないって。確かにこの洞窟のはずだよ。元は湖になってたんだけど…。」


「地底湖ってそんな簡単に干上がるものでしょうか?」


入り口も、通路も見覚えがあった。

ぜったいここだ。ここ以外なハズはない。

でも現に湖が消えている。


「…でも水が引いたなら神殿とか出てきてるはずだよね?。」


綾が首を傾げる。3人は仲良くう~ん?って唸って考え込んだ。

数分後、早速思考を放棄したのはやはり綾だった。


「ま、どうしようもないし、帰ろ帰ろっと。」


「神殿がないならいても意味ありませんしね。」


「そうですよね。きっと引っ越した的なアレですよ。」


全員の意見が一致した。

あの神殿の正体、光の話の続き、なぜか神殿にいたチンパンGっぽい戦闘員。

知りたいことは山ほどあったけど、まあメンドいから諦める。

ヒーローにとってはあるまじき行為だけど、まあ、コイツらはヘタレ戦隊だからそれもOK。

そんなわけで3人はさっさと引き返すこととなったとさ。

…早っ。


◇◆◇


普通のヒーローだったら何とかして解くだろう謎も、ウゴクンジャーの前では単なるミステリー。

すぐに諦めて迷宮入りさせてしまう。

で、3日くらいで謎があったこと自体を忘れるのだ。ある意味凄い。


まあ、そんなアホ共はうっちゃっておいて、ダークキャン・D要塞ではついにソースカツ丼が完成していた。

…こっちもどうでもいいことなんだけど。


「よくやったな、コノハ。初めてにしては上々だ。」


カイネはテーブルに置かれた2つのどんぶりを見て頷く。

やたら美味そうなのがカイネ、その横の普通なのがコノハ作だ。

コノハのもいいけど、カイネはすでにシェフレベルにまで到達している。

毎日料理ばっかりしていたからだろうが、悪の四天王としては…。


「ですが…貴女には及びません。」


「私はすでにプロの域に達しているからな。幾つもの有名店のシェフを隠しカメラで撮影し、その技を盗んだ。伊達に1日20時間を料理関係に費やしているわけではない。」


…凄ぇ。

アホだけど。


「20時間…。私には無理かもしれません。」


コノハが呟くと、カイネは小さく笑った。


「無理にここまですることはない。今の腕でも、充分人に出せるレベルだ。」


「…本当ですか?」


「自分の作ったそれを食べてみれば分かる。お前は筋がいい。ある程度までならそれほど練習しなくても上達するだろう。」


「カイネ。…ありがとうございます。」


つい最近までいがみ合ってたけど、料理を通じて仲良くなった四天王2人。

そんな2人にウェキスは心配そうに訊ねた。


「なあ、ところで何でどんぶり2つなんだ?俺の飯はどこに?」


「知らん。」


「存じません。」


…やっぱり。

彼は大きく溜息を吐くと、ソファに寝転ぶ。

そして呟いた。


「今日も要塞購買弁当か…。怪我人に手料理をくれる優しい女はいねぇのかなァ…。」


可哀相な男の心の叫びだった。


◇◆◇


「蝶か。どうやら3人は出掛けたようだぞ。」


大学の社会情勢学研究室前に来た沙紀は、ドアの前にいた冥介に出会うなり言われた。

彼が指差すドアには張り紙がしてある。


「こう書いてある。『お出掛けしてきます。ご用のある方は、ピーっという音の後に要件、住所、氏名を20秒以内に話すといいことがあるかもしれませんね。By柱都 憬』…。後ろの一文が意味不明だが、そういうことらしい。」


確かに意味不明だ。

でも憬教授が人と大分ズレてるのは周知の事実だからあんまし気にならない。


「無駄足だったみたいだね。あ~あ、センパイでも叩いてストレス発散させようとしたんだけど、残念。」


「俺も完成したウゴクンジャーのテーマ3『気絶する蟹』が完成したから聞かせてやりたかったんだがな。いないなら仕方ない。」


何だか悲惨な曲を作ったようだ。

多分、その曲を聞いても週一は喜ばないだろう。


「…まあ、確かにセンパイはよく気絶するけどね。その曲はちょっと…。それより八又乃さんはどうすんの?待ってて戻ってくる保障はないけど…。」


「そうだな、今日はもう帰るか。暇だったんだが、」


ガラッ!!


突然隣の研究室、哲学研究室のドアが開いた。

例のタンバリンしかできない音楽サークル部員、水那方さんだ。

相変わらず牛乳瓶の底みたいなブ厚い眼鏡を掛けてらっしゃる。


「八又乃師匠、お暇でしたら是非私に音楽の指導を!」


いつの間に師匠になったのだろうか。

冥介は彼女を見ると、ニヒルに笑った。


「…ほう、しばらく見ないうちにいい目になった。俺の言った通りに音楽知識を深めたようだな。」


巨大な眼鏡の上からじゃどう頑張っても彼女の目は確認できないんだけど、沙紀は突っ込まなかった。

冥介のハッタリはいつものことだから。


「はい、師匠がおっしゃられた本を全て読破しました!」


何だか水那方さんってば熱血になってる。

でも気配がゼロっていう特性は失われていない。

地味で存在感ゼロっていう本質は変わってないようだった。


「よし。いいだろう。…俺の練習は厳しいぞ。」


「はい!お願いします!!」


冥介は沙紀に向き直る。


「と、いうわけだ。蝶、俺はこれから指導をしてやらねばならん。…ではな。」


突然の展開についていけないでいた沙紀を後目に、2人は哲学研究室に消えていった。

残された沙紀は溜息を吐き、鞄を乱暴に肩に掛ける。


「…帰ろ。」

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