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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION5-LOVING-
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5-14.先入観とは恐ろしい

週一はその現場を見て駆け出した。

女の子がデカい八頭身ハムスターと戦っている。

でも一般人の攻撃はダークキャン・Dに通用しないのは周知の事実。

彼女の攻撃は全然効かず、ハムスターは余裕で彼女をぶん殴ったのだ。

しかも壁際に追い詰めてダッシュストレートを放とうとしている。


「何て凶暴な怪人なんだ!!」


舌打ちする週一。

その姿はピンチに駆けつけるヒーローだ。

でも買い物袋を投げ出すとかしないのが、ウゴクンジャーの限界を覗わせていた。


◇◇◇


ビイは死を覚悟していた。

初めて見た時には単なる動物だと思っていたハムスター野郎が、今は地獄の門番に見える。

怖いことは怖いが、今は諦めの念の方が強い。

腹への一撃はやたらと効いたし、寝不足&空腹でもうダメダメだ。

多分、コイツが来なくてもあと数日で衰弱死しただろう。


メタルハムスターが大きな構えを取るのが見える。

…ああ、ここでワタシ、死んじゃうアルね…。

何だか虚しい。

楽しい思い出といえば、通行人の皆さまを後ろから蹴ったことくらい。

一応仲間のエイってやつもいたけど、アイツとは意見が全く合わなかった。


でも、そう言えば1人だけ尊敬できるような人に逢った。

ウェキスに割られたどんぶりを取り替えてくれた、あの蟹の人だ。

…せっかく命救てもらたのに…ワタシ、ダメなやつアル…。

そう思った時だった。


「ガペェェェッ!!?」


メタルハムスターが妙な悲鳴をあげて吹っ飛んだ。


「!?」


全て諦めてグロッキーになっていたビイはその声に目を見開く。

で、その視界にいたのはハムスターじゃかった。

ビニール袋を片手に転がったハムスターを睨み付ける青年。

白いトレーナーの胸元に輝く蟹の絵。

ビニール袋ってのが何かアレだけど、そんなもんはどうでもよくなるくらい極まっていた。


「怪人め!この僕が相手だ!!」


そう、青年は週一。

ビニール袋の中身はカニクリームコロッケを始めとした食材だ。

それにしてもあれだけ日和やビイに対して脅威だったメタルハムスターが、なぜにコイツのパンチ如きで吹っ飛んだか。


その理由はハムスターの特性にあった。

メタルハムスターは他の怪人に対してのみだが、ダークキャン・Dが一般人に対してのと同じ特性を持つ。

しかし、他の者に対しては…。


「ソ、ソンナ…コノめたるはむすたーガ…!!ム、無念…!!」


構える週一の前でメタルハムスターはぴくぴく痙攣し、そして逝去した。

…一撃かよ。


「って…アレ?」


拍子抜けする週一。

八頭身だし結構筋肉があったんで強敵かと思ったのに、まさか不意打ち1発でやられちゃうとは。

Pマーモセット以下だ。

…そう、何を隠そうメタルハムスターは怪人に対して最強なものの、逆に他の者に対しては可哀相なくらいザコになるのだ。

ひよこの突っつき、幼稚園児のパンチでも大ダメージを負うほど貧弱になってしまうコイツが、園児より若干パワーがある週一のパンチに耐えられるはずもなかった。

だから通行人の皆さんも逃げる必要はなかったんだけど、今までの例から判断して戦いもせずに逃げてしまったのだった。

先入観とは恐ろしい。

そして…その先入観は週一もバッチリ抱いていた。


さっき少女がコイツを殴ったけど効いてなかった。

普通のダークキャン・D怪人は一般人の攻撃を受け付けないことから、この少女も一般人だと考えたのだ。

まさか怪人だとは思わない。

しかもメタルハムスターが自分のパンチだと1発で死んだんだから当然だろう。


「う~ん、何か知らないけどザコだったんだ。一瞬でも緊張して損した。」


彼は小さく溜息を吐くと、さっきまでピンチに陥っていた少女に向き直る。

遠目だったからそれが女の子ってことくらいは分かったが、はっきりとは分からなかった。

でも、見てみてどっかで見た顔だって気付く。


「…あれ?そのどんぶりに拳法着みたいな服って…、」


「カ、カニさんアルか…?」


少女が呟く。

やっぱりそうだ。自分のことをカニって呼ぶ人間はこの世に2人。

そのうち1人は冥介だ。女は1人しか思い当たらない。

しかも冥介はウゴクンジャー蟹だからそう呼んでいるんだけど、こっちはちゃんと蟹令李って言ったのに覚えなかった頭の弱い人だ。


「やっぱり!前に会った中国の人!!」


「カニさんアルぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」


少女は叫ぶと、週一に飛びついていった。

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