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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION5-LOVING-
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5-13.日和

『はい、私です!』


ディスプレイには、なかなか可愛いけど頭の弱そうな顔の少女が映っている。


「…この時間に電話に出るとは思わなかった。」


ソファに座った冥介はの声にいつものような自信がない。

っていうか、沈んでる。


『冥介さんのは着音が特別ですから!絶対出ます。お仕事中でも出ます!』


少女は力強く言った。

コイツも鈍感人間か?とか思ったけど、さすがに冥介の様子がいつもと違うことに気付いた。

週一とかよりレベルが上だ。


『あの…どうしたんですか?そういえば日和さんの姿が見えないけど…。』


そこで彼女は手をポンと叩いた。

そして悪戯っぽく笑う。


『分かった!冥介さん、ケンカでもしたんでしょ?それで振られちゃったとか?』


「…ああ。図星だ。見事に振られちまったよ…。」


彼は小さく笑った。

ニヒルって言えばニヒルだが、いつものようなパワーはない。力ない笑みだ。

少女はその答えに納得したらしく、苦笑する。


『でも冥介さんを振るなんて…凄い人ですね。』


「いや、…あいつは俺にはもったいない女だった。…それよりお前に頼みがある。」


『何ですか?何でも言って下さい!テレビ出演とかでしたらどの局へでもOKですし、お金だって2、3億くらいなら工面できます!』


冥介はかぶりを振った。


「新曲だ。歌って欲しい。…曲は今日中に送るから、頼む。」


『え…?そんな、新曲のことだったら私がお願いするくらいですよ!』


「いや。これは俺からの頼みだ。歌ってくれればそれでいい。…聞いてくれるか?」


弱気だ。

冥介からこんな台詞が出てくるとは…。

一瞬少女は戸惑ったものの、力強く頷いた。


『はい。もう理由は訊きません。でも…全力で歌います!絶対ヒットさせます!!』


「…ああ、お前ならできるだろう。頼んだぞ。」


ピッ…


冥介は電話を切り、ソファに凭れかかった。

そして机の上に散乱した楽譜とペンを拾い上げ、目を閉じる。


「…日和。俺は…。」


しばしの沈黙の後、ゆっくりと目を開く。

そして堰を切ったようにペンを走らせていった。


楽譜に書かれた曲名は、『WEATHER OF MEMORYS』。


WETHER。


その意味は天気、もしくは…。


◇◆◇


週一はスーパーから笑顔で出て来た。

厨に2800円(どんぶり代とお駄賃)を受け取り、スパーに寄った時にはもう5時をまわっていた。

ということは、お惣菜コーナーにタイムサービスと言う奇跡が起こる。

しかも今日はカニクリームコロッケ4個入りが何と半額になったのだ。

蟹が入った食品は何でも大好物っていう週一は迷わず購入。

ホクホク顔ってわけだ。

他にも卵や野菜ついでに菓子パンなどを買い、もう後は家に帰るだけ。

家に帰ったら可愛いサブ太とアジ美に餌を与え、4時間くらい観察して就寝だ。

そんな幸せスケジュールを立てていた週一の耳に叫び声が聞こえた。


逃げろーとか、ダークキャン・Dが出たぞーとか言う叫び声。

今日はもうウェキスと戦って疲れてるんだけど彼も一応ウゴクンジャー。

バッグは持ってないんだけどダークキャン・Dに対抗できるのは自分しかいない。


「…はぁ…。こんな遅い時間に…。もう帰りたいのになぁ…。」


溜息を吐くと、彼は声のしてきた方向に走り出した。


「追イ詰メタゾ!ココニハ埃モごみモナイ!!貴様ノ逃亡技ハ通用セン!!」


大通りから少し離れた通りでメタルハムスターが叫ぶ。

どうやら通行人の皆さんはコイツの出現によって逃げ出したようだ。

身長180cmの8頭身ハムスターは正直怖いし。


「ど、どうしてこの通りには埃やゴミないアルか!?」


対峙しているのはヒヨコ柄のラーメンどんぶりをかぶった少女、クリティカル定食・ビイだ。

まだこの2人は逃亡劇を繰り広げていたらしい。


「ココハホンノ数時間前マデ近所ノ学校ガ奉仕作業ヲシテイタノダ!」


「うぅ、何て間が悪いアルかぁぁぁぁぁ!!」


「天ハコノめたるはむすたーニ味方シタノダ!!今度コソ息ノ根ヲ止メテヤル!!」


襲い掛かるメタルハムスター。

迫り来る拳をビイは半身を捻ってかわす。

そして相手の顔面に裏拳をお見舞いした。…効かないんだけど。


「やっぱり効いてないアルぅぅぅ!!」


「ダカラ大人シク死ネ!!」


ハムスターがビイの腕を掴んだ。

今まで全部かわしていたんだけど、流石にそれも限界。

ビイは目を見開く。


「し、しまたアル!!」


ドスッ!!


拳がビイの横腹にめり込んだ。

彼女は吹っ飛び、アスファルトに転がる。


「あぅ…ごほっ…!!」


腹を押えて咳き込むビイ。

ダークキャン・Dをクビになったその日から彼女は何も食べていないし睡眠だってろくにとっていない。

ダークキャン・Dは失業手当なんてくれないのだ。

それどころかメタルハムスターの執拗な追撃っていう嬉しくないプレゼントをくれた。

もうそろそろ限界だった。


「ドウダ?コノめたるはむすたーノ攻撃ハ、怪人ノ防御力ヲ完全無効化スル。貴様ノ攻撃ハ効カズ、俺ノ攻撃ハ常ニくりてぃかるひっと。絶望シタダロウ。」


「ワタシ、まだ死にたくないアル…。見逃して欲しいアルぅ…。」


よろよろと上体を起こし、後ず去る。

立ち上がろうにも限界を超えてる身体は言うことを聞いてくれない。

完全シカトだ。


どんっ


背中が壁に付く。

もう後がない。


「…デハ、留メトイクカ。」


ハムスターが腰を落とし、ゆっくりと拳を脇に構える。

日和に対してのと同じ構えだ。

例の如く拳にはダークキャン・D怪人の防御力を完全無視するオーラみたいなもんが溢れている。

こんなものを喰らったら…。


「くりてぃかる定食・びい、貴様ノ命運モココマデダ。」


タッ!!


地面を蹴り、メタルハムスターはビイに突っ込んで行った。

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