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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION5-LOVING-
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5-7.いわゆる華道ってやつ

ピンポ~ン。


週一はインターホンを鳴らした。

と、いつものように塀の上にあった監視カメラが動く。


『蟹令李様ですね。』


例の如く女の人の声が帰ってきた。

葦和良さんっていう、あの和服美人の使用人さんだ。


「ええと、沙紀さんに呼ばれて来たんですけど…。」


『はい、覗っております。どうぞ、お入り下さい。』


カチャって音がすると、門がゆっくりと開き始める。

もうこのやりとりも3回目だ。

最初と比べると随分とすんなり入れるようになっている。

ほとんど顔パス。

葦和良さんの口調も警戒から了承、今では歓迎にさえ達していた。

でもそういうことには鈍感10000tの週一はのほほん顔で入っていった。


今日は土曜日。

Pマーモセットと戦った日に今日ここへ来るよう約束…というか強要されたのだった。

来なかったら背負い投げって言われたら来ないわけにはいかないだろう。

他の人が言ったなら冗談って線も考えられるが、綾とか沙紀とかそういう凶暴女が相手の場合はマジなのだ。

油断してはいけない。


「今日は蝶滋郎さん、いないんだ。」


いつも中庭にいるはずの沙紀の親父さんが今日は見当たらない。

だから週一は困った。

見渡す限りのやたらめったら広い庭園。

建物もあるけど、その数が半端じゃない。

多分、茶室やら離れやら色々なんだろうけど、どこに行ったらいいのか全く不明だ。

僕はここで迷子になるかもしれない…とか思っていると、左向かいにあった建物から人が出て来た。


「…へぇ…。」


思わず声を漏らす週一。


品の良さそうな薄紫の着物を着た女性。

西洋のお嬢様が高飛車ドレス女なら、こっちは純和風のお嬢様だ。

清楚で慎ましやか。

大和撫子って生き物だ。

週一としてはオーッホッホッホって笑い声のお嬢様よりこっちの方が断然いい。


「蟹令李さん。お待ちしておりました。」


微笑む和服の女性。

年齢は週一と同じか、それより下だろう。

でも醸し出してる雰囲気のせいで大人びて見える。


「え?僕のこと知ってるんですか?」


もちろん、こんなお方とはお知り合いになった憶えは御座いません。

週一と交流のある女性といえば綾に沙紀、水面に憬教授、他にはカイネと日和の4人以外には家族しかいない。

しかもそのうち2名は人間じゃないし。カイネに至っては敵だ。…虚しい。

まあ、そのどれもが清楚とか慎ましやかとかとは無縁って方々。

でもこの家にいるってコトは沙紀関連なはずだけど、使用人にしては若いし。

母親だったら蝶滋郎さん犯罪だし。


「え?…はい。よく存じておりますよ。立ち話も何ですので、こちらへどうぞ。」


女性は控え目な笑顔で言った。


◇◇◇


離れっぽい建物に案内された週一はあんまり広くない和室に座っていた。

彼の前にはあの女性が座っており、花を生けている。

いわゆる華道ってやつだ。

どうやら週一が来る前からやっていたらしく、一区切りつけるまで待って欲しいとのことだった。


 「…。」


無言でその様子を見ている週一。

芸術とかそういうのは全く全然これっぽちも分からない週一だが、彼女の仕草は何とも優雅だ。

ピアニストみたいに細い指で器用に花を生けている。


「…長らくお待たせし、申し訳ございませんでした、蟹令李さん。」


生け終わったみたいだ。

この生け花…何か知らんが芸術的なんだろう。


「終わったんですか?ええと、何て言うか…凄いですね。」


彼のボキャブラリーでは賛美の言葉が他に見付からなかったようだ。

女性は口元を軽く抑え、やっぱり控え目に笑った。


「ふふっ、お構いなく。こんなの分かりませんよね。華道と言っても所詮は人工の美です。野に咲く花の美しさには敵いませんから。」


「え?あは、あはは、すいません。僕、芸術とかその辺ダメなんです。ピカソとかの絵を見てもラクガキにしか見えない男だし。何億もするオブジェとかもガラクタにしか見えないし。」


バレてたようだ。

苦笑しながら言った週一は、ちょっと真面目な顔に戻ると続けた。


「でも…その生け花は綺麗だと思います。芸術的なものは全然分からないですけど、何て言うか…花が生きてるような、いや、花は枯れてないから生きてるのは当然だけど、ええと…?」


文章整理能力がないから上手く言えない。だからやっぱり最後は誤魔化し笑いだった。


「あはは、上手く言えないですけど、うん、とにかくグレイト。」


「いえ、蟹令李さんは…とても素晴らしい感性をお持ちだと思います。飾らず、奢らない、そんな印象を感じます。」


女性は笑顔で言う。


「ははっ、ただ脳味噌ボンバーなだけですよ。」


そこで週一はまだこの女性の名前すら聞いてないのに気付いた。遅いけど。


「あの…、それであなたは?歐む…じゃなくて沙紀さんのお姉さんか何か?」


だったら納得がいく。

雰囲気こそ全然違うものの、顔立ちは沙紀に似ている。

母親っていうには若すぎるからきっと姉だろう。


「え…?」


女性が驚いたように声を漏らす。

そしてくすっと笑った。


「いえ、歐邑家には沙紀以外の子はおりませんよ。」


「ええと、ならあなたは従兄妹さん?」


かぶりを振る女性。

彼女は微笑みながら言った。


「私が歐邑沙紀、本人です。」

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