5-5.規格外品の排除
週末…。
シーズンじゃないから客のいない潮騒海岸で戦っているヤツがいた。
「シネ!」
身長180cm、八頭身の二足歩行ハムスターが電子音っぽい声と共にパンチを繰り出す。
なぜかそいつの身体はシルバーで、金属光沢があった。
「嫌アル!」
拳をかわし、頭にヒヨコ柄のラーメンどんぶりを被った少女が蹴りを放つ。
ガッ!!
ハムスターの横腹にヒットしたものの、効いちゃいないようだ。
「貴様ノ攻撃ハ効カン!死ヌガイイ、くりてぃかる定食・びい!だーくきゃん・Dヲ裏切ッタ報イ、死ヲモッテ贖ウノダ!!」
そう、この八頭身ハムスターと戦ってるのは例のエセ中国怪人、ビイだった。
「ワタシ裏切てなんかないヨ!そっちが解雇したネ!!」
「うぇきす様ハ、オッシャッタ!役ニ立タナイ怪人ハ、だーくきゃん・Dガ責任ヲ持ッテ処分スルト!!役ニ立タナケレバ、裏切リモ同ジ!!コノめたるはむすたーガ、オ前タチノヨウナ規格外品ヲ全テ排除シテヤル!!」
メタルハムスターっていうようだ。
メタルは強そうだが、ハムスターって時点でダメだ。
メタルライオンとかメタルタイガーとかいなかったのだろうか?
「そんなの勝手アル!て言うか、ワタシの他にも狙われてるヒト、いるのカ?」
効いちゃいないんだけど、顔面に一撃蹴りを喰らわせ、ビイはメタルハムスターから距離を取る。
ハムスターは首をコキコキやると、余裕の表情(って言ってもハムスターだからよく分からんが)で答えた。
「りばーすどーるトカイウ人形ダ。今ハ日和ト名乗リ、アロウコトカうごくんじゃーノ仲間ニナッテイル。ヤツモイズレ消ス。」
「うぅぅぅぅ!冗談じゃないアルヨ!メタルハムスターだかメタルモルモットだか知らないアルが、ワタシはウゴクンジャーなんかに味方してないアル!先にその日和とかいうの倒せばいいアル!!ワタシは無害だから見逃すよろし!!」
さすがは自己中卑怯怪人のクリティカル定食・ビイだ。
「ダメダ。うぇきす様ハ責任感ノ強イオ方。例外ハ認メン!!」
飛び掛ってくるメタルハムスター。
ビイは舌を鳴らし、思いっきり拳を振りかぶった。
「分が悪いアル!ここは退散させてもらうネ!!奥義・發剄逃亡陣ッ!!」
ボンッ!!
砂浜を本気でブン殴る。
凄まじい砂が巻き上がり、彼女の姿を隠した。
「!!」
思わず目を手で覆うメタルハムスター。
砂埃が止み視界が開けた時には、すでに潮騒海岸にビイの姿はなかった。
「…逃ガシタカ。マアイイ。マズハりばーすどーるカラ始末スルカ…。」
◇◇◇
冥介は溜息を吐き、空を仰いだ。
彼のすぐそばには日和がおり、露天に並べられた怪しいアクセサリーに見入っている。
「…まだ決まらないのか?」
「目移りしちゃって困ってますぅ。」
どうやら日和の買い物のようだ。
ダークキャン・D怪人、しかも人形のくせにアクセサリーなんてアレだが、彼女も傍から見れば人間そのもの。
頭の上に光り輝く輪っかが浮かんでいるけど、怪人なんて誰も思わないのだ。
「いくつでも買ってやるから、さっさと終わらせろ。」
「ダメですって!ご主人様にそんな買わせるなんてダメダメですぅ!」
「健気だな。だが3時間も待たせるほうがダメダメだと思うが。」
バージョンダウンに伴い、冥介の呼び方もマスターからご主人様へ戻ったようだ。
「う~ん、迷いますねぇ。こっちの方が尖ってるけど、こっちの丸いのも捨てがたいし、」
その時だった。
周りから悲鳴があがり、通行人の皆さんがダッシュで逃亡を始める。
この街ではよく見かける光景…そう、ダークキャン・Dの出現だ。
また性懲りもなく出てきたらしい。
「…日和。」
「はい。お買い物は後にしましょう!」
2人は頷き合い、人の流れと逆方向に走り始めた。
◇◇◇
「…探シタゾ、りばーすどーる。」
誰もいなくなった十字路にそいつはいた。
冥介と日和は身構える。
「私、もうリバースドールじゃないですよぉ?日和って言うんです。」
「黙レ、規格外品ガ。我ガ名ハめたるはむすたー。我々ヲ裏切リ、うごくんじゃーニ与スル貴様ヲ処分シニ来タ。」
黒目しかない目をパチクリしながらメタルハムスターが1歩にじり寄る。
冥介は日和を庇うように前へ出た。
「日和は傷つけさせない。お前の相手は、このウゴクンジャーヒュドラだ。」
何かをポケットから取り出し、握り締める冥介。
日和は頷くと彼の背後に何かを設置し、少し離れた。
「接着!!」
拳を地面に叩き付ける。その瞬間、凄まじい光が彼を包んだ。
…変身を派手に演出するための閃光弾だ。
しかも今度は…、
「進化の筋道逆走し、脊椎蹴って無脊椎!下等生物戦隊、ウゴクンジャーッ!!!」
ドーン!!
ポーズを極める彼の後ろが爆発した。
予告していたアレが完成したようだ。
その無駄な努力には恐れ入る。
「ウゴクンジャーヒュドラ、推参…。」
ヴンッ…
手にしたヒュドラブレードからピンク色の光の刃が伸びる。
切れないんだけど強そうだ。
「うごくんじゃーカ。小癪ナ。…Pまーもせっと、相手ヲシテヤレ。」
メタルハムスターの声と共にどこに隠れてたのか教えて欲しいくらいたくさんのPマーモセットが現れる。
チンパンGじゃなく、Pマーモセットだ。
こいつらならヒュドラでも倒せる。
でも彼は後ず去った。
「多勢に無勢、か。…日和、応援を呼べるか?」
「ちょっと今は無理っぽいですぅ~。携帯、持ってないですし…。」
「…少々きついが、やるしかないか。」
ヒュドラがブレードを構える。
日和もどこからか角材を取り出した。
「ご主人様、私があのでっかいハムハムを倒しますね。わらわらいるPマーモセット、お願いします。」
…2人を囲んでいるPマーモセットの数はおよそ30、日和の提案も最もだ。
それにどうせハムスター野郎なんてザコだろう。
そう思い、ヒュドラは頷いた。
「よし、行くぞ!!」
「はい!!」
それぞれの相手に向かっていく2人。
そんな中、メタルハムスターの口元が意味ありげに歪んだ。
まあ、ハムスターだからあんまり表情分かんないんだけど。
【初登場キャラ】
・メタルハムスター




