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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION1-集え!正義の味方-
7/69

1-5.最強(自称)の戦士

「…すごく惜しいことをした気がする。でもどこかでホッとしてる僕はヘタレだろうか?」


綾の少し後ろを歩きながら、週一は1人で心中告白をしていた。

ちなみに鞄を持たされたりはしていない。

逆に(人質?として)彼の鞄は綾が持っていた。

と、自分の将来を危惧する週一の耳に、叫び声が飛び込んできた。


「!!?」


綾も聞こえたようで、彼の方に振り返る。


「ダークキャン・Dだ!」


2人は頷き合い、声の聞こえてきた方へ駆けて行った。


------------------------------------------------------------

「ぐわーっしゃっしゃ!泣け叫べ踊れ歌え!!」


イッちゃってる声で、チョコボールみたいなのが叫んでた。

真っ黒くて丸い身体に顔についてて、足が伸びている。手は見当たらなかった。

…そんな、変な奴だ。

そいつの周りには戦闘員の皆さん…正式名称はチンパンGっていうヤツらがワラワラしていて、通行人の皆さんを追い掛け回している。

中には逆に犬や猫に追いかけられているダメ戦闘員もいた。

あんまり緊張感のない場面だが、ダークキャン・Dの侵略行為はこういったものがほとんどだから仕方ない。

これでも一応、警察や軍の武器は通用しないし、より親近感のある恐怖を人々に与えるという意味ではきっと凄い効果があるのだろう。

たぶん。


「そこまでだ!」


ヒーロー登場の声に、敵さんたちは一斉に振り返る。

そこには太陽をバックに、週一と綾が立っていた。


「接着!」


週一がバッグに頭を突っ込み、綾が麦藁帽子を被る。

しょぼい変身の光とともに、ウゴクンジャー蟹と甲虫が姿を現した。


「進化の道筋逆走し、脊椎蹴って無脊椎!下等生物戦隊!ウゴクンジャー!!」


で、お決まりのポーズ。

でも2人しかいないから、何かアレだった。

しかし決めるところはビシッと決めるらしい。

週一は指を怪人へと突き付けて言い放った。


「怪人め!このウゴクンジャー蟹と、新たな仲間甲虫で成敗してやる!」


「あぁ~ん?」


完璧に人を小馬鹿にしたような感じで怪人が彼らを見る。


「そう言やぁ、ただ騒がしいだけのアホがいるって聞いたよなぁ。お前のことだろ?」


怪人は真っ直ぐ週一こと蟹を見ていた。

正解だった。


「!!調子が悪かっただけだ!!」


毎度のように敗北を喫していた(しかも戦闘員相手に)蟹は、負け惜しみの典型的台詞を吐いた。

…それにしてもチョコボール相手に言われるのはムチャクチャ悔しかった。


「いつも調子が悪いってか?じゃあ、今日も悪りぃんだろ~なぁ。おい、チンパンG!」


怪人が6人くらいの戦闘員を呼ぶ。

そして言った。


「あのタイツ2人組をボコボコにしてやれ。」


------------------------------------------------------------

…で、10分後。


「楽勝♪」


生身でもチンパンGを倒してた甲虫が、転がってる戦闘員の皆さんに片足を掛け、勝利ポーズを決めていた。

蟹の方はマンホールに半分突っ込まれて伸びていたが。


「話と違うじゃねぇか。…ま、チンパンGごとき倒されても怖くねぇけど。」


知らない間に任務を終えたらしい怪人は帰り支度をしながら呟いた。


「な、何やってるの?」


武器とか片付け始めている敵さん達に気付いた綾が尋ねる。


「あ?帰るんだよ、俺。だって任務終わったし。通行人排除できたしな。」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?じゃ、じゃあ私達って!!!」


「さあ。平和の役にたってねぇことだけは確かだな。」


「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ムンクになった綾、馬鹿笑いするチョコボール。と、その時。


ガコッ!


飛んできたレンガが怪人の手前数10センチの所に落ちた。


「…?」


ムカつく笑顔が消え、怪人の表情に疑問符が現れる。

…なに?このレンガ?不意打ち?でも当たってないけど…?

甲虫も沈黙する変な空気の中、男の笑い声が響いた。


「は~っはっはっは!!お前達の思い通りにはさせんぞ!!」


もう、思い通りになっちゃったんですけど?と言いたい皆さんを尻目に、路地裏のポリバケツ後ろから青いロングジャケットの青年が飛び出した。

ビルから飛び降りるとかじゃなくて物陰から飛び出すあたりがエセヒーローっぽくて悲しかった。

青年がなまじ美形だったから、余計に悲しかった。


「何だお前は!?」


一応怪人は尋ねる。

無視して帰ってもよかったが、それではせっかく登場した彼に対して失礼だ。


「フッ、俺は八又乃冥介やまたの めいすけ、ウゴクンジャー最強(自称)の戦士、ウゴクンジャーヒュドラだ!!」


…ウゴクンジャーヒュドラ。

確かに蟹や甲虫よりはかっこよさそうだ。

でも、コイツらは下等生物戦隊。

綾は何かやな予感がしていた。


「接着!!」


青年はペンを取り出し、何を血迷ったか、自分の腕にヒュドラと書いた。


カッ!!


あれが変身方法だったらしい。

凄いアホだった。

バッグを被るのと同レベルのアホさだ。


「…さあ、俺が来たからにはもう安心だぞ、甲虫&蟹。」


白煙の中から、新たな戦士ウゴクンジャーヒュドラが現れる。

でも、安心っていうか、もう済んじゃってるから意味ない。

それにピンチじゃない時に現れる新キャラって…。

ゆっくりと歩み寄るヒュドラ。

蟹や甲虫より強そうなタクティカルフレーム。

…でも、色はピンクだった。

額には伝説上の怪物ヒュドラじゃなくて、実在の微生物ヒドラのレリーフが施してあるし。


「そっちの…ヒュドラだったのね…。」


何か哀愁漂う声で甲虫が呟いた。

しかしヒュドラは気にする様子もなく、堂々と怪人に歩み寄る。


「貴様の犯した罪、天が許してもこの俺が許さん!成敗してくれる!」


「もう帰って寝たいんだが…このアホ共を泣かしてからにするかな。」


チョコボールは溜息を吐いた後、ヒュドラに向き直った。


「来るがいいタイツ3人組!この怪人・カオスチョコボール様に勝てるかな!?」


…やっぱし見た目どおり、こいつはチョコボールだったようだ。

どこがカオスなのかは不明だが、ネーミングセンスが皆無ってことだけは確かだ。

それがカオスたる所以なのかもしれない。


「えいっ!」


と、甲虫の声と同時にヒュドラの横を何かが飛んでいく。


バコッ!


「ぐえ。」


石が頭に直撃し、ぶっ倒れるカオスチョコボール様。

何が起こったのか理解できてないヒュドラが呆然とする中、チョコボールはプルプルと震えながら上体を起こす。


「と…飛び道具なんて…酷い…」


そして彼は静かに息を引き取った。

【初登場キャラ】

・カオスチョコボール

・ウゴクンジャーヒュドラ

八又乃冥介やまたの めいすけ

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