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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION4-広がるセカイ、繋がるセカイ-
66/150

4-13.片割れの行方

カチャッ…


ノック音と共に聞こえてきた声に、厨はアパートのドアを開いた。


「ええと、アナタ、カニさんの兄上の厨さんアルか?」


そこに立っていたのは所々がちょっぴり破れた拳法着を着た少女だった。

なぜか頭にヒヨコ柄のラーメンどんぶりを被っており、妙な言葉遣いをしている。


「カニさん…ああ、蟹令李の兄は僕だけど。」


「よかたアル。間違えなかたアルネ。これ、弟さんからお届けものヨ。」


少女はそう言って紙袋を差し出した。

袋にはチャイニーズ=オワンってロゴが入っている。

そこで厨はピーンときた。

…このエセ中国人日本語を喋る娘は、あの店の店員に違いない。

だから頭にどんぶりを被っているのだろう。

チャイニーズ=オワンだけに、拳法着の中国人風ということか。

陶器っていう意味のチャイナと中国をかけるとは、なかなか心憎い演出。


「ありがとう、確かに受け取ったよ。それで代金は?」


「カニさんはもう払たて言てたアル。あ、それと伝言アルヨ。…2000円は今度来た時にちょうだい、だそうネ。」


「はははっ、分かった。確かに伝言承ったよ。」


穏やかな笑顔で言う厨。少女もにっこりと微笑み、ぺこりと頭を下げた。

それなのにどんぶりが落っこちないのは謎だったが…。


「それじゃ、ワタシはこれで失礼するアル。」


「お仕事ご苦労様。」


厨も軽く会釈をすると、再びドアを閉めた。


◇◇◇


『シュウ、どんぶり届いたよ。ありがとう。』


画面の兄は笑顔で言った。


「そっか、良かった。少し心配だったんだ。あの子がちゅう兄のアパート分かるかって。一応説明はしたんだけどね。」


『大通りをそのまま行けばいいだけだからね、誰でも分かるはずさ。それにしてもあの店、店員を雇ったんだね。変わった制服だったよ。』


…制服じゃない。あれはあいつの私服だ。


「店員じゃないんだけど…。」


『え?』


怪訝そうな声を出した厨に週一はかぶりを振った。


「何でもないよ。何にせよ良かった良かった。んじゃ、切るから。」


『ああ。それじゃあ。』


電話を切った週一は大きく息を吐く。


「ま、これであの子も満足だろ。恩返しできたんだし。」


そして再びあと少しでアパートって道を歩き始めた。


「そう言えば、何て名前だったんだろ?リーとかチャンとか?」


答え、ビイです。

正解が聞ける日は果たしてくるのだろうか?

今のところ、未定。


◇◆◇


ビイが倒れていた場所から50mほど離れた裏路地に彼女と同じく拳法着を着た青年が壁に凭れかかって座っていた。

クリティカル定食・エイだ。

もう結構時間が経っているのに消えてないのは、彼のどんぶりに入ったひびがビイのものより小さいからだ。

ちなみに週一が目の錯覚だと思った透けてる現象は、怪人の消滅現象だ。

ビイはあの時、マジに死にかけだったってこと。

そしてエイもヤバい状況になっていた。


「…これは、ダークキャン・Dの怪人?」


そんな彼を発見したヤツがいた。

そいつは驚いたような声を漏らしながらも鉄の笑顔を揺るがすことがなかった。

そう、日和だ。

元ダークキャン・D怪人リバースドール。

手に大量の花火が入った袋を持っていることから、冥介の変身小物の材料を買出しに来たのだろう。

裏で変な色の煙がドカーンってやつか。全くもって無駄である。


「ッ!?な、何アルか…?オマエ、何者アル…!?」


エイは力を振り絞って立ち上がる。

そして構えた。


「私は日和。ダークキャン・D製の怪人です。もっとも、今はもう主を違え、あなた方と敵対する身ですが。」


「敵ということネ!?…だったら勝負アル!!」


飛び掛るエイ。

日和は元は動くドールっていう強力な怪人だったが今では役立たずのダメ怪人。

彼の動きに反応できず、蹴りを腹に受けた。


ボコン!


「!?」


コアがある位置にHITしたようだ。

空洞がある音が鳴り響き、彼女は吹っ飛んだ。

そして…。


「ちょっとぉ~、酷いじゃないですかぁ。」


…動くドール時代のアホ口調に戻ってしまった。

内部のメモリーカードが少し破損してしまったのだ。

せっかく頭良くなったのに。


「ああっ!言語機能がダウンしちゃったじゃないですか!他の箇所はだいじょ~ぶみたいですけど…怒りましたよぉ?」


日和はエイを笑顔で睨み付けると、どこからか角材を取り出す。


「やる気に…なったアルね…!喰らうがよろし!!」


今度は跳び蹴りを繰り出す。

日和はやっぱり反応できず、今度は胸に直撃した。

しかしコイツの身体は木製。痛みなんぞない。


「ていっ!!」


ガードを全く考えないカウンターがエイの喉に極まった。


「かふっ!?」


跳び蹴りなんかするから着地に失敗して地面に叩き付けられるエイ。


「追撃ですぅ!」


日和はそんな彼の頭をゴルフみたく角材でぶん殴った。

で、ひびの入っていたどんぶりは粉々に。


「これくらいで許してあげますね。私ぃ、ご主人様のお使いで通りかかっただけで、ホンキでやり合うつもりはないですから。まぁ、どんぶり越しだからそんなにダメージないでしょ?」


それは違った。

クリティカル定食の弱点は頭のどんぶりなのだ。

私って心が広いなぁとか思ってた日和だったが、彼女の目の前でエイの姿は薄れていく。



「…あれ?」


「ま…まさか…このジブンが…弱点を狙われる…、なんて!!」


苦しげに言うエイ。

日和は笑顔のまま、?って感じだ。


「ど~なってるんですかぁ?」


「む、無念…アルぅぅぅぅぅ…・。」


バシュン!


そしてエイは消滅する。

後には少しバカに戻った日和が、やっぱり頭にハテナマーク乗っけて立っているだけだった。

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