4ー10.独占インタビュー
「そうなのよ!生中継って条件で独占インタビューできるの!」
この人は普通じゃなかった。
携帯電話で捲し立てる朝倉。
局に連絡しているようだ。
あんなデカい声で叫ばなくてもいいのに…電話相手が可哀相だ。
「そう、それでいいのよ。ええ、ええ。任せときなさいって。じゃあ、楽しみに見てなさいね?」
彼女は偉そうに言うと電話を切った。
そして田辺とウェキスに向き直る。
「デスクはOKですって。じゃあ田辺、撮り始めなさい。はい、3、2、1…、」
田辺が慌ててカメラを朝倉に向ける。
彼女はその途端、さっきまでの高圧的な表情から一転し、真剣な表情を作った。
「みなさん、朝倉喜美です。今日は数ヶ月前に地球にやって来た侵略者、ダークキャン・Dの怪人への独占インタビューに取り付けることができました。これはとてつもなく危険を伴う行為です。私は今、震えています。しかし私はレポーター。みなさんに正しい情報を提供するためなら我が身を省みない決意です。」
「別に危険じゃねぇって。それにお前、震えてねぇじゃん。」
横からウェキスが言う。
朝倉はウェキスを一瞬睨んだが、再びカメラに視線を戻した。
「この道の向こうに怪人が2体います。…それでは決死の取材、始めます。案内してくれるのは近所に住むフリーターの田中さんです。」
そしてカメラはウェキスを写した。
…勝手にフリーターの田中ってことにされてる。
「田中…。まァいいや。んじゃ付いて来い。きっと視聴率取れるぜ?」
不敵な笑みを浮かべて言うウェキス。
朝倉&田辺はそんな彼の言葉を信じ、彼の後について歩き始めた。
...彼の真意には気付かずに。
「よぉ、まだ論争してんのか。いい加減他の地区に行くとかしろよな。」
言い合ってすでに2時間の怪人に歩み寄りながらウェキスは言った。
2人はそれに気付き、頭を下げた。
「マスター。でも、ジブンはこの卑怯者に正々堂々と戦う素晴らしさ、どしても理解させたいアルヨ。」
クリティカル定食・エイ(青年の方)はビイ(少女の方)を指差して訴える。
「何言てるアルか。勝つことが全てヨ?ワタシが正しいネ、マスター?」
ビイも負けじと言い返す。
ウェキスは大きく溜息を吐いた。
「ったく…。まァいいや。論争でも何でも気の済むまでやれ。だが少し休憩だ。…こいつらがお前たちの取材をしたいんだとよ。」
「取材?別にいいアルヨ。その代わり、後で蹴らして欲しいネ。」
「そゆこと言うと、また逃げられるヨ。背後を見せたら蹴ればいいアル。」
眉を顰める朝倉&田辺。
「オイオイ、2人がビビッてるぜ?…ほら、OKだってよ。取材、するんだろ?」
ウェキスの声に我に返った2人はエイとビイを写し始める。
「え、ええと、彼らが怪人、クリティカル定食のエイとビイです。それでは彼らになぜこのような行為を行うのか訊ねてみましょう。」
朝倉がマイクを2人に向ける。
「あなた方ダークキャン・Dの目的とは?やはり侵略なのでしょうか?」
「侵略?ワタシには関係ないアル。ワタシは人間蹴れればそれでいいヨ。それよりこれ、映てるアルか?ドレス、着てくれば良かたアル。」
ちなみに2人の格好は白黒の拳法着みたいな服だ。
「ビイはやはりダメネ。ジブンみたく正々堂々戦うていう、崇高な目的ないアル。」
…ダメだ。
こいつらに侵略者たる自覚はない。
「…。」
予想外の返答に朝倉と田辺は困ってる。
対照的にウェキスは可笑しそうに笑い、カメラの前に出てきた。
「言い忘れてたが、ダークキャン・Dの姿も声も写せねぇんだ。だから今頃お茶の間にはな~んもねぇ空間と、1人で喋ってる眼鏡ね~ちゃんだけが映ってるんだ。」
そう、ダークキャン・Dは自衛隊のレーダーでも映らない。
現代のいかなる兵器も通用しないって特性は、ステルスも兼ねてるようだ。
「なっ!?じゃ、じゃあ私に取材させてくれるって言ったのは…!!」
「嘘じゃなかったろ?それに視聴率はとらせてやる。…カメラマン、レポーターをしっかり写しとけよ?」
ウェキスがニヤって笑う。
田辺は疑問に思うことなく朝倉にカメラを向けた。
「生中継だったら編集できねぇだろ。」
チンッ…
訳が分からずにいる朝倉の周りを風が吹き抜けた。
ウェキスはいつの間にか鯉口の切られた背中の双剣を収める。
次の瞬間、朝倉の服が細切れになって地面に落ちていった。
…綾と沙紀にやった例のセクハラ剣術だ。しかも今度は手加減抜き。ってことは…?
「ッ!?きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
朝倉の絶叫。
生中継のストリップショー。
確かにこれで視聴率はとれるだろう。
朝倉レポーターの大活躍で。




