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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION4-広がるセカイ、繋がるセカイ-
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4ー8.詮索不要

ディスプレイには厨の姿が映っている。

ほんの数分前に帰宅した週一は、兄から掛かってきた電話を取ったところだった。


『シュウ、実は今日いいことがあってね。』


笑顔で言う厨だが、いつも穏やかな笑みを湛える彼だからそれが嬉しいことに関係してるかどうか不明だ。


「それで電話を?ちゅう兄、僕今からレポート書かなくちゃなんないんだけど。」


レポートってのは社会情勢学のやつだ。

少し前に出題されたのだが、題材が『オイラーの公式を現行以外の方法で証明せよ』ってやつ。

どうせ高校時代の数学教科書に書いてあるだろうってナメてたら、実はおっそろしく難しいヤツだった。

で、今日から気合でやるってわけだ。

理系でもない週一にそれが解ける確率はゼロっていうかマイナスだが、一応頑張る気でいる。


『レポートか。懐かしいな。でもまあ、聞いてくれ。…実は僕に恋人ができたんだ。』


…それってやっぱり…、


「へえ、凄いじゃん!彼女イナイ歴=人生のちゅう兄に…。」


驚く週一。

でも自分も彼女イナイ歴が実年齢だってことはすっかり忘れている。

それにしてもあれだけの容姿を持ちながら今までずっとフリーだったとは。

まあ、蟹令李家の人間は週一同じく鈍感っていうかアホだ。

多分、多くの想いに気付かずに生きてきたのだろう。


『鍋のコレクションをやめて1週間、熱中できる物がなくなって充実した毎日を送れなくなっていたんだ。でもこれで前より素敵な日々を送れそうだよ。』


コイツは蟹じゃなくて鍋に興味があったらしい。

と、いうことは週一も蟹離れができればマトモになれるのかもしれない。

まだ無理だろうけど。


「そっかぁ…。で、どんな人?」


『木下コノハさんって言うんだ。落ち着いた雰囲気の綺麗な人だよ。小さい頃に事故で右目を失ったそうだけど、それで翳を落とすこともないしっかりした人さ。』


…やっぱり。

あの時の告白は見事成功してしまったようだ。


「何だか良さそうな人だね。僕も一度会ってみたいや。」


多分、会うだろう。

だって敵だし。

でもそんなこと週一が知るわきゃない。

兄の幸せGETを素直に祝福してる。


『ははっ、そのうちね。…まあ、言いたかったのはそれだけだよ。ごめんな、ノロケ話なんか聞かせて。』


「いいよ、その代わり今度ご飯おごってよ?ちゅう兄だけ幸せとは許せん!…なんちゃってね。」


『OK、また今度な。…じゃあ。』


電話がプチって音を立てて切れる。

週一は息を吐くと、それをスタンドに戻した。


「…ちゅう兄に彼女ができるなんて。幸せそうだったなぁ…。よし、僕も…、」


彼女を作るぞ、とでも言うと思ったら、


「僕も、蟹缶食べて幸せになろう!」


違った。

…幸せはまだまだ来そうもない。


--------------------------------------------------

「ええと…何だこりゃ。」


テーブルの上に積まれた物体を見てウェキスは呟いた。

クマのぬいぐるみ、ネコのぬいぐるみ、犬のぬいぐるみ、ネギのぬいぐるみ…。

若干ワケの分からないぬいぐるみも混じっていたが、それらはまさしくぬいぐるみの山だった。


「見て分からんか?ぬいぐるみだ。」


例の黒いスーツから元の軍服っぽい服に戻ったカイネが料理の本を片手に言う。


「いや、それくらいは分かるって。俺が言いてぇのはコレをどこから持って来たかだ。まさか買ってきたんじゃねぇだろうな?想像したくねぇな。」


カイネがぬいぐるみを買う姿を想像し、ウェキスは眉を顰める。


「そんなわけあるか。ゲームセンターとか言う場所で取ったのだ。…後で私の個室に持っていく。邪魔かもしれんが、少し我慢しろ。」


「…ゲーセンで、ねぇ…。それも想像つかねぇ。」


大きな溜息を吐くウェキス。

ゲームセンターで連コインしながらクレーンゲームに熱中するカイネの姿を想像しようとして…失敗する。

と、ドアが開きコノハが入ってきた。

服装はまだ厨とデートしていた時の服だ。


「今、帰りました。」


それだけでも驚きなのに、出掛ける時にはなかった指輪を装備してた。

葉っぱをあしらったレリーフに翠の宝石がくっついてるファッションリングみたいな指輪だ。

ものすんごい高価って感じじゃないけど、それなりに値を張りそうに見える。


「あー、どうせ答えは想像ついてんだが訊ねてみる。コノハ、それは…?」


「買いました。詮索は不要です。」


ぴしゃって言われ、質問したウェキスは溜息を吐く。予想していた答えだけど、ちょっぴり落ち込んだ。


「お前もどこかへ行っていたようだな。…何かいいことでも?」


ぬいぐるみを袋に詰めていたカイネが訊ねる。


「…秘密です。」


そうは答えたものの、コノハの声はウェキスに対したものより穏やかだった。

少しだけ弾んでいたかもしれない。


「…フン。詮索はせんが、惚けおって。」


カイネは口元を綻ばせた。


「分かるのですか?戦い以外に興味がない貴方が?」


「いつまでも昔の私のままだと思うな。」


コノハも少しだけ微笑む。


「そうですか。…そういう貴女も、惚けていませんか?」


「…ふん。」


意味ありげに言葉を交わす女2人。

完璧に蚊帳の外って感じなウェキスは、再び大きな溜息を吐いた。


「あ~あ、キヨスクの野郎が生きてたら俺らも男の会話ができたのにな…。」


ちなみにキヨスク(大根)は今、社会情勢学研究室の植木鉢の中でしっかりと根を張っている。

…四天王キヨスクじゃないけど。

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