4-4.知らない親友
「ふぅ。やっと終わった。」
基本政治学の講義を終えた週一は、無駄にでかい講義ホールのドアを出て大きく伸びをする。
今日はこれでもう講義はない。
時間もまだ2時を少し回ったところだ。
彼は立ち上がり、あんまり人のいない廊下を歩き始めた。
基本政治学はテストには重きを置かず、出席点で戦うっていうアウトローなやつだ。
脳味噌に自信がない週一みたいなのにはうってつけだけど、バイトやらお遊びやらで忙しく、大学へ来る暇(←本末転倒だけど)がない人は出たがらない。
やっぱり大学生は後者の方が多いってわけで、この講義に参加してる学生は少ないのだ。
「よっ、蟹令李。」
コンビニでも寄ろうかとか考えてた彼の肩を茶髪鼻ピアスの学生が叩いた。
あからさまなチャラ男、あんまり人を覚えない週一でも記憶に残っている男だ。
「えっと、権下くんだったっけ?」
あんまり自信なさげに週一は訊ねる。
コイツとは別に親しくないはず。なのになぜ呼び捨てで呼ばれるのだろう?
「そうそう、権下 久。ヒサって呼んでや。」
「…ええと、ヒサくん。何か用?」
「呼び捨てでいいって、ブラザー。ところでよ、四神女子高に通ってる妹いるだろ?」
…四神女子高。この地方じゃかなり有名な進学校だ。
お嬢様学校ってことでも有名だけど。
いや、男どもにはそっちの方での知名度の方が高いかも。
「妹が…?」
週一は眉を顰めた。
確かに妹はいる。でも言っちゃ何だが“週一の妹”だ。
…つまり頭悪いってこと。
だからそんな有名進学校に行けるわけない。
ヤツは共学の3流高校で女子高生ライフを満喫しているはずだ。
「僕の妹は演日高校だけど?」
「でもこの前一緒に歩いてたじゃん。じゃあアレは誰なん?」
…この前っていつ?
あいにく僕にはそんなお嬢様の知り合いなんていませ~んって言おうとしたその時、週一はやっと彼が言ってる人物に気付いた。
「ああ、歐邑か。違うって、あれは妹じゃないよ。」
「妹じゃない?まさか彼女!?スゲーよ、蟹令李!どうやってGETしたんだよ!?」
やたら驚く権下。
まあ、確かに週一みたくパッとしないヤツに彼女がいるっていったら驚く。
それも相手がお嬢様って言われてる人種だったらなおさらだ。
「あのさ、言っとくけど僕は歐邑とは、」
そんなしっぽりした仲じゃ御座いませんって言おうとしたが、その先の台詞はいきなり腕を掴んできた権下によって遮られた。
「それなら余計に好都合!なァ蟹令李、お前のそのコネで俺に四神の女の子紹介してくれよ?な、いいだろ?俺たちゃ親友だろ?」
…それが目的だったようだ。
ちなみにコイツとは親友でも何でもない。
今日初めて喋ったくらいだし。
「それは無理だよ。ごめんね。」
だから週一は即答した。
別に知り合いじゃないからってわけじゃない。
沙紀にそんなこと頼めないからだ。
頼んだら殺される。何か知らんけどそんな予感がした。
「ホントごめん。じゃあ、僕はもう帰るから。」
そう言って歩き出した週一だったが、
「…待てや。」
「ん?」
ボコッ!!
うって変わってドスの効いた声に振り返った週一の頬に権下の拳が炸裂した。
「ぶっ!?」
尻餅をつく週一。
権下は屈むと、そんな彼の胸倉を掴んだ。
「てめえ、どういうことだ?あン?俺には紹介できねえってのか?」
さっきまでのニヤニヤ顔から今では立派な不良の顔になってる。
茶髪に鼻ピアスっていう見た目通り、悪いのは頭だけじゃなかったようだ。
「な…、」
少し鼻血を出し、口元からも血が出てる週一は頭の中が真っ白って状態だった。
一応正義の味方をやってるけど、基本的に人畜無害な軟弱青年だ。
こういう状況は慣れてない…というか初めてだ。
幽霊見たわけじゃないけど金縛りにあってる週一に権下は凄い剣幕で言う。
「おら、調子こいてんじゃねぇぞ!?ブッ殺されたくなかったらなァ、今週中に四神の女を紹介しやがれ!いいな?断りやがったらてめえの、」
ドカッ!!
衝撃音と共に週一の視界から権下が消えた。
で、代わりにハイヒールを履いた美脚が目に映る。
どうやらこの脚が権下君を蹴飛ばしたようだ。
「…?」
まだグロッキーが治ってない彼は、その脚の先を見て…驚いた。
「カ、カイネ!?」
だったのだ。
金髪碧眼にモデルみたいなナイスバディ。
でも服装が軍服みたいな制服。額にあるよう分からん紋章、その全てがダークキャン・D四天王のカイネだった。
彼女は吹っ飛んだ権下を憮然として見下ろしている。
「な、何だてめぇ…!?コイツの知り合いか!?」
沙紀でさえやられたカイネの攻撃だ。
権下は立ち上がるけど脚がガクガクしてる。
「さあな…通りすがりの正義の味方、とでもしておくか。」
…オマエ、悪の四天王だろ。
そんなツッコミがどっかから飛んできそうだったけど、あいにく飛んでこなかった。
【初登場キャラ】
・権下 久




