4-3.ダブル作戦の結果
「たあっ!」
ボグシッ!
あんまり迫力のない掛け声と共に繰り出されたパンチがPマーモセットの腹にHITする。
「キイッ!!」
電子音交じりの猿みたいな悲鳴をあげてPマーモセットは吹っ飛び、少しもがいた後消滅した。
マジで弱い。だって蟹ごときのパンチで倒せるんだから。
「てやっ!」
ポクッ!
「キィィッ!!」
…凄い戦いだ。
ある意味。
ちなみに蟹が1体倒してる間に蝶は10体くらい倒している。
それでも1000体は多い。
数が一向に減らない。
「ったく!数だけはやたらウジャウジャと…!!」
Pマーモセット3体を一気に蹴飛ばしながら蝶が悪態を吐く。
相変わらずもの凄いお嬢さんだ。
まあ、Pマーモセットはザコなんだけど…3体まとめてはやっぱ凄い。
『弱音とはらしくないな。…蟹、蝶。待たせたな。』
多分拡声器を使ってるだろう声が突然響いた。
冥介だ。
「八又乃さん!?」
屋根の上を見ても彼の姿はない。
ポリバケツの裏とかにもいなさそうだ。ならどこに?
って思ったら、エキセントリックな場所から現れた。
…ハンバーガーショップからだ。
「…せっかく人が食事をしていた所を…。許さんぞ、色違いチンパンG!」
「Pマーモセットとか言うらしいですよ。でもどうしてハンバーガーショップに?確か哲学研究室にいたはずじゃ…?」
「ずっと前に出たぞ。その足でここに来ていたんだ。まあ、そんなことはどうでもいい。さっさとそのPマーモセットとやらを片付けるぞ。」
冥介は上半身を捻り、マントみたいに長いジャケットを旗めかせた。
そして地面に拳を叩き付ける。
カッ!!
眩い光が彼を包んだ。
「接着!!」
光が晴れ、ウゴクンジャーヒュドラが姿を現した。
…でも疑問が残る。
ヒュドラの変身はあんなじゃなかったはず。
光だってしょぼかったはずだし。
「何か…変身がいつもと違うんじゃないですか?」
だから蟹は訊ねた。
バッグを頭に被るっていう酔狂な変身方法も、ヒュドラや甲虫が同レベルだからガマンできたのだ。
なのにあれじゃ納得いかん。
「ああ、日和に閃光弾を作らせたんだ。近々、後ろで爆発を起こす予定だぞ。今日和に研究させている。」
…ヒュドラらしい理由だった。
日和の姿が見えないと思ったら、小物作りに追われていたとは。
アホらしい。
「そんな些細なことはどうでもいい。今は戦闘中だ、ぬかるなよ。」
ヒュドラがPマーモセットの群れに突っ込んで行く。
蟹も気を取り直し、再びザコ退治に向かって行った。
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「これで終わりッ!!」
蝶の声と共にPマーモセット3体が吹っ飛ぶ。
「グランドストリーム!!」
何やら大仰な技名を叫び、ヒュドラがPマーモセットの頭をヒュドラブレードで殴った。
「でやあっ!とうっ!」
気合の抜けそうな掛け声で蟹の2連続パンチが2体のPマーモセットにヒットする。
ドサッ…
合計6体のPマーモセットが地面に崩れ、消滅していった。
「…ふぅ、やっと片付いた。」
「まあ、こんなものだろう。…変身解除。」
「動いたらお腹減ったよ。でもこの通りに人が来るのって、まだまだ掛かるだろうなぁ。」
3人のウゴクンジャーが思い思いの感想を述べた後、変身を解除する。
1000体もいた敵は全て消滅。キーキーうるさかった通りも、今はし~んと静まり返っている。
「ウェキスが言ってた何とかキノコを探さないと。予想外に手間取ったからね、暗くなる前に探さないと面倒だ。」
ウゴクンジャーには敵が出現したって報せてくれる便利な本部は存在しない。
だから敵の姿を探すので一苦労だ。
「そうだね。センパイは八又乃さんと住宅街方面を。あたしは駅の方を見てくるから。」
沙紀がてきぱき指示をする。
この中で一番年下なのに、一番偉そうだ。
実際、一番役に立ってるから文句は言えないが。
「分かった。歐邑も気を付けて。」
「住宅街か。…俺としては廃工場が怪しいと思うんだが…。」
ヒーローが怪人と戦う場所は採石場とか廃工場と思ってる冥介が不満げに漏らす。
「廃工場なんてこの辺にはないですよ。…行きましょう。」
「なら採石場が怪しくないか?」
「…とにかく、行きましょう。」
こうして3人はどっか別の地区で暴れているだろうファントム茸捜索に駆け出して行った。
尋ね人はすでに厨が倒しちゃっていないってことは…多分ウェキスも知らない。
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「ただいまっと。」
所変わってダークキャン・D要塞の幹部特別室(通称:居間)。
ウェキスはソファで本を読んでいたカイネに近寄って行く。
「ん?何の本読んでんだ?」
「詩集だ。この星で最も優れていると評判だったので読んでみている。」
「へぇ、詩集ねぇ。お前そういうの好きだったか?」
カイネは本をパタンと閉じた。
「いや。詩人は嫌いだ。あることないこと誇張するのは好かん。情報は真実のみを伝えればそれでいい。…やはり私はこちらだな。」
そう言って『ハイキング料理全集』を読み始めるカイネ。
…詩が嫌いだっていうのはタクティカル女カイネだから分からんでもないが、料理の本はもっと合わないだろう。
ウェキスは苦笑し、椅子に腰掛けた。
「Pマーモセット1000体、ギャグで作ったはいいが置き場がなくて困ってたんだけどよ、使いどころがあって助かったぜ。今頃コノハがファントム茸を引き連れて暴れてるだろうし。今日の作戦は大成功だな。」
やっぱりウェキスは知らなかったようだ。
ファントム茸はコノハを裏切り、今はもう彼岸を渡りきってるはず。
上機嫌なウェキスを一瞥し、カイネが呟いた。
「ファントム茸…。あいつが言うことを聞くのか…?」
彼女の心配、当たってました。
おめでとう。




