4-2.Pマーモセット
「歐邑か。いきなり叩くなよ、びっくりするじゃないか。…って、何でここに?」
「ああ、ミナを見送ったついでに大学へ顔を出そうと思って。そしたら研究室閉まってるし。一足違いだったみたい。」
沙紀は苦笑する。
「さっきまで煎餅齧って座談会っぽいことしてたんだけど…。まあ、また明日にでも来なよ。多分みんないるだろうし。」
「暇だったらね。それよりセンパイ、これ渡しとく。」
そう言って胸ポケットから水面が電話で言っていた指輪を取り出す。
ウゴクンジャークラゲに変身するためのチェンジユニットだ。
「ん?ああ。あの後10分くらい第2のウゴクンジャークラゲ候補を考えたんだけどね。結局決まらなくて。歐邑にはやってくれそうな人の心当たりない?」
指輪を受け取りながら週一は訊ねる。
沙紀はかぶりを振った。
「ないね。高校の友達は部活とかあるからダメだし。憬サンは?」
「自分はチーフだから戦えないって。そっか、なかなか難しい課題だな。」
うんうん頷くと、指輪をポケットに入れて歩き始める。
彼の少し後を沙紀も歩き出した。
「…そういえば歐邑って部活とかやってないの?この時間、高校の前とか通るとみんな部活やってるようだけど?」
「部活ねぇ。始めは弓道でもやろうと思ったけど、家での稽古が忙しくて。レベルの低い部活なんかやってるより、そっちの方がいいかなって思ってね。」
「家での稽古?ピアノとか英会話とか?」
あんまり習い事のジャンルを知らない週一にはその発想が限界だった。
というか塾と間違えている。
沙紀は笑った。
「楽器は触ると壊すから無理。それに英会話は学校の授業であるし、それだけで充分に理解できるしね。あたしがやってる稽古ってのは、華道と薙刀、それと古武道。」
「…華道?」
週一が眉を顰める。
薙刀や古武道はしっくりくるけど、沙紀が華道なんて…。
彼の脳内に桜の枝をへし折って剣山に突き刺し、爆笑する沙紀のイメージが浮かんだ。
「合わないだろ、華道は。」
「センパイ、今あたしが木の枝を突き刺して笑ってるような想像したね?」
「うん。図星。」
答えて週一は頭を抱えた。
殴られる!って彼の本能が叫んだのだ。
でも女の鉄拳は飛んでこなかった。
「…?」
恐る恐る頭から手を下ろす彼を沙紀は苦笑して見ている。
「まあ、そう思うのは無理ないけど。あたしだって今のまま華道なんてやったら暴れるよ、多分。脚が痺れるし、何よりあのお高くとまった雰囲気が気に食わない。」
「やっぱり暴れるんだ。」
「今のままで、ならね。…そうだ、今週の土曜に家に来なよ。暇だから家で花でも生けてるだろうし。教えてあげてもいいよ?」
週一はまた想像した。
沙紀が杉の枝をへし折ってきて剣山に突き刺し、自分にも同じような無謀な行為を強要するイメージだ。
「遠慮…しようかな…。」
ちょっと苦笑いで答える。
でも沙紀は許してくれなかった。
「また変な想像して。…大丈夫だって。来なかったら背負い投げするよ?」
「…かつて綾にもそうやって脅された気がするのはデジャヴだろうか?」
げっそりして週一は呟いた。
いや、デジャヴじゃない。バトルヘアカラーの時に確かに脅された。
その時は四の字固めだったけど。
僅差で正解だ、おめでとう。
「ふぅ、空港から電車乗り継いで来て、何か疲れたな。センパイ、小腹が空いたからハンバーガーでも食べに行かない?」
溜息吐いてる週一の肩をポンと叩き、沙紀は言った。
「まあ…どっちにしろ冷蔵庫空っぽだからコンビニ弁当食べようと思ってたことだし、そこで僕は夕食分まで食べよっかな。」
「決定。じゃあ行こっか。」
「了解。」
もうあんまり人のいなくなった大学私道を2人は再び歩き始めた。
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「…って、何だよコレ…。」
ハンバーガーショップに到着した週一は絶句した。
沙紀に至っては言葉を失っている。
目の前には、色違いのチンパンG。
まあ、チンパンGはザコだからいい。問題は数だ。
「一体、何体いるんだろ…。」
答えは1000体。
でも目測だけじゃ数え切れない。
そいつらがハンバーガーショップのある通りを占拠し、道にラクガキしたり壁にラクガキしたり犬にラクガキしたりと、好き勝手…というかラクガキをしていた。
「よお、どうだ?この数、気持ち悪ぃだろ?」
突如上から声が掛かり、2人はそっちを向く。
八百屋の屋根の上にウェキスがニヤニヤ笑って立っていた。
「うっ!あの時のセクハラ双剣野郎!!」
「電話で見た四天王!!」
身構える2人にウェキスは少し眉を顰めた。
「ウェキスだ。憶えろよな、それくらい。…まあいい。この地区を占拠してるのは戦闘員、Pマーモセット。数は1000体だ。チンパンGより弱ぇ完全無欠のザコだが、この星の人間の攻撃は効かねぇ特性はちゃんと持ってるぜ。ま、お前らじゃねぇと倒せねぇってワケだ。さあ、どうする?」
「そんなの倒すに決まってるじゃないか。チンパンGより弱いなら僕だって勝てるかもしれないし。」
当然って顔で言った週一だが、沙紀はウェキスを睨んだままいる。
「…何が狙い?」
「ははっ、相変わらず鋭いな。そっちの蟹君とは大違いだ。…じゃあ教えてやる。今回はダブル作戦だ。すでにコノハが怪人ファントム茸を率いて他の地区を襲ってるはずだぜ。」
「ッ!!」
舌打ちし、沙紀は腕で十字に交差する。
「センパイ、綾さんと八又乃さんに連絡を。」
「綾は何でも見たい番組があるとかで…多分電話しても出ないと思う。八又乃さんは携帯持ってるかどうかさえ不明だよ。」
「…どっちも役に立たないね。分かった。あたし達だけでやるよ!…接着!!」
例のちょっとカッコいい変身ポーズをして、沙紀はウゴクンジャー蝶に変身する。
「じゃあ僕も接着。」
週一もバッグを被って変身した。
それを見下ろしながらウェキスは笑う。
「威勢がいいねぇ。俺の出番はここで終わりだ。ま、がんばんな?」
シュイン…
屋根の上から消えていくウェキス。
蝶はフンって鼻を鳴らすと、通りに溢れる1000体のPマーモセットに向き直った。
「センパイ、さっさとこのザコを伸して…何とかキノコを探すよ!?」
「よし!僕に任せろ!!」
相手がチンパンGより弱いってことで大張り切りな蟹が拳をグッって握り締めた。
【初登場キャラ】
・Pマーモセット




