3-16.思いがけない繋がり
消えていくファントム茸の遺体を見詰めながら青年はビーム果物ナイフに鞘を近付ける。
すると刃は一瞬で消滅した。
手を切る心配がないオドロキの安全設計だ。
「…終わり…ましたね。」
後ろから声が掛かる。
青年は笑顔で振り向いた。
「そうみたいだね。」
コノハに近付き、手を差し出す。
コノハはそれに掴まって立ち上がった
「どうして彼が消滅したかとか、この武器は何なのかとか、聞きたい事はいろいろあるんだが…まずは君の身体の状態だね。大丈夫かい?随分と多く怪我をしているようだけど。」
「平気です。画鋲が刺さっただけですから、血はもう止まりました。」
彼女はそう言うと…唐突に頭を下げた。
「ご迷惑をおかけしました。本来ならアレは私が始末をつけなければならなかったところを…。貴方の貴重な時間を裂いてしまったことを思うと、遺憾です。」
それに…。
彼女は思った。
地球侵略にやって来た自分が人間などに助けられたなんて、ダークキャン・Dとしてどうしようもない汚点だ。
情けなくて情けなくて…ダメだ。
「迷惑だなんて思ってないよ。まあ、パソコンは壊れちゃったけど、君を救えた。僕は自己満足かもしれないけど良かったと思うし、あれで君を放って逃げたら一生悔やんだと思う。だから変に悪く思う必要はないんだよ。」
「…。」
コノハは顔を上げる。
青年はやっぱり穏やかな笑顔でいた。
「それにしても…服もボロボロだね。血も付いちゃってるし。…良かったら家か警察まで送ろうか?」
「いえ、私は…、」
そう言ってカイネやウェキスも持ってたあのスイッチを取り出す。
でもあろうことか壊れていた。
何度も転ばされてるうちに壊してしまったようだ。
「…夜には仲間が迎えに来てくれると思います。」
「夜、か。それまでは?」
「こんな格好では目立ってしまいますから、どこか人の来ないような場所にいようと思います。…どこか、そういう場所を知りませんか?」
アジトに連絡しようにも、例のスイッチが壊れてるから不可能だ。
まあ、夜になれば誰かが心配して迎えに来るだろう。
カイネが来たらたっぷり嫌味を言われるだろし、ウェキスだったら笑われるだろう。
どちらも嫌だが…仕方ない。
「そうだね…、」
コノハの言葉を聞いた青年は少し考え、そして言った。
「そんな場所は知らないけど、目立たなくなる方法はあるよ。要はボロボロの服を着てなければいいんだから。…ところで君、この街は詳しいかい?」
「いえ、初めて来ました。今後のために道を知っておこうと思ったものですから。でも、それが目立たなくなる方法と関係が?」
彼は頷く。
「じゃあ夜まで僕とデートしよう。目立たないよう服を買って、街を一緒に探検しようか。僕にあった予定は…なくなったみたいだしね。」
一瞬壊れたパソコンを見る。
「え…?ですが私が街を知ろうとする目的は、」
言おうとするコノハの手を青年は取った。
爽やかな笑顔とは裏腹に結構強引かも。
でもコノハはそれを振り払おうとはしなかった。
彼女は思った。
地球侵略にやって来た自分が人間に助けられたなんて、ダークキャン・Dとしてどうしようもない汚点かもしれない。
情けないことかもしれない。
…でも、助けられた時にどうしてか知らないが、ちょっと体温が上がった気がした。
キノコに再び向かっていく青年を見た時、なぜか知らないけど胸が少し痛かった。
その後に戦ってる彼の背を見たら、手助けしたくなった。
そして気が付いたらビーム果物ナイフを使ってと叫んでいた。
その『なぜか』の正体を確かめるのもいいかもしれない。
「あ、自己紹介がまだだったね。僕は厨。蟹令李厨。」
「私はダークキャ…いえ、私はコノハといいます。ええと…木下、コノハ。」
青年、厨が微笑む。
それにつられ、コノハも…微笑んだ。




