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下等生物戦隊ウゴクンジャー  作者: 深爪リオ
SECTION3-出会いと別れ-
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3-12.ウゴクンジャーのリーダー

妖しげな民族楽器からいくらするのか分からない巨大な楽器。

一応ここは哲学研究室なんだけど、そういう雰囲気ゼロって空間の真ん中に、グランドピアノが居座っていた。

そこから紡ぎ出されるのは素晴らしい旋律に、週一&綾はちょぴり嘆息する。

椅子に座って弾いているのはどうやら男性のようだ。

まるでマントのように長いジャケットを着て…マントみたいなジャケット?


「や、八又乃さん…?」


「蟹か。」


正解だった。

ピアノを弾いていた男は手を止めると振り返る。


「どうだ?まだ60%だが、『ウゴクンジャーのテーマ3』だぞ。まあ、駄作だがな。」


「そんなこと…、凄いじゃないですか!まるでプロが作ったみたいです!」


「ホント!!八又乃さん、こんなことできたんだ!」


声をあげる週一&綾。

冥介は眉を顰めた。


「だから俺は作曲家だって言ったろう?これくらいできて当然だぞ。」


…そうだ。

いっつも暇してるみたいだったからすっかり忘れてたけど、冥介は作曲家だと言っていた。

それにウゴクンジャーのテーマを作るとも言っていたような…。


「甲虫も一緒か。ということは講義はもう終わったんだな。では社会情勢学研究室へ戻ろうか。」


立ち上がり、彼は部屋の隅に置いてあった荷物を取る。


「あ、あの!」


そんな彼の背中に声が掛かった。

冥介と同時に週一と綾もそっちを向く。

何とも影の薄そうな眼鏡のお嬢さんが立っていた。

…例のタンバリンしかできない子だ。


「…ええと、あなたは確か水那方さん…だったっけ?」


あんまり自信なさそうに綾が訊ねると、そのお嬢さんは頷いた。

どうやら彼女はずっとここにいたらしい。

存在感ないから全然気付かなかったけど。


「今の曲…初めて聞いたんですけど…?」


気付いた今でさえ、しっかり知覚していないと気配すら感じさせないツワモノだ。

多分、武術に秀でた人間なら彼女が『できる!』と勘違いするに違いない。

それくらい気配がゼロだ。

暗殺者になれるだろう。


「当然だ。昨日俺が作った曲だからな。」


「え…?作ったって…凄い!」


地味に驚く水那方さん。

目を見開くくらいすれば表現力UPなのだが、牛乳瓶の底みたく厚い眼鏡のせいで声色以外に驚いたって知る術は皆無だ。


「別に普通だろ、これくらいは。というか駄作だ。」


「いえ、凄いです!私、音楽サークルの先輩が作った曲を聴いたことがあるんですけど、段違いです。次元が違います。とにかく凄いです!」


「だから凄くないと言ってるだろう?いいか、凄いというのはだな…。」


荷物を取った冥介だが、それを再び床に置くと椅子に座る。

そしていきなりの展開に脳味噌がついていけないでいる週一&綾に言った。


「先に行っていてくれ。俺は彼女に本当の腕を見せてやってから行く。あんな駄作を凄いと言われたら、この八又乃冥介、一生の不覚だからな。」


----------------------------------------------

「でも初めて見たよ。八又乃さんが音楽やってるの。作曲家っていうのもまんざら冗談じゃなかったみたいだ。」


まだ憬教授の来ていない社会情勢学研究室で週一は言った。

ここに通うようになってもうかなり経ったので、勝手は知っている。

冷蔵庫から出したミルク(アイスミルクソーダではない)を飲んでご機嫌だ。


「うん、上手かったよね。まあ、作曲家八又乃冥介なんて聞いたことないからマイナーだろうけど、それでも上手いし。」


「多分、CMとかゲームとかのBGM作ってるんじゃないかな?…そう言えば日和はどこにいるんだろ?八又乃さんにいっつも付いてたのに。」


週一はそう言うとミルクを飲み干す。

と、彼のポケットから間の抜けた着信音が鳴った。


「っと、誰からだろ?」


プライバシーとかその辺の配慮はゼロの綾が除きこむ中、蟹のストラップが付いた個性的な携帯電話を開く。

ディスプレイには紫の蝶が舞っていた。沙紀だ。


「あ、歐邑だ。…もしもし。」


『センパイ?綾さんもいるんだ。あたし今、空港にいるんだけど。』


ディスプレイに沙紀の顔が映る。


「ダークキャン・Dが攻めてきたとか?行きたいけどまだ先生が来てないから、」


『そうじゃなくて。ミナが急に旦那さんの実家に行くことになったんだ。何でも旦那さんの実家が産婦人科だそうで、そこなら入院費とか全部タダだからそっちで産むことにしたんだって。あたしはその見送り。』


…随分と唐突な話だ。

多分、タダって言葉に動かされたんだろう。


「そっか。でも店はどうするって?」


『引き続き親戚とバイトに任せておくって。…あ、本人に代わるね。』


画面が揺れ、旦那様とべったりくっついてる水面が映る。


『蟹令李さん、それに綾さん。というわけで、しばらく行って来ます。蟹令李さんにはこの指輪を預かっていてもらいますね。ウゴクンジャーのリーダーだし。』


そう言ってウゴクンジャーの変身道具を差し出す。


「僕がリーダー?何で?」


『レッドがリーダーって昔から決まってるの。…でも、帰ってきても子育てで忙しいだろうから、その指輪は蟹令李さんの信頼できる人に託して下さい。あ、それと憬さんにはメールでさっき送りましたから、伝えなくていいですよ。八又乃さんは…適当に言っておいて下さい。』


「まあ、八又乃さんは…ね。うん、適当に言っとく。」


『ありがとう、蟹令李さん。』


やたらと幸せそうな笑顔で水面はお礼を言った。

彼女イナイ歴が実年齢っていう週一には酷な笑顔だ。

でも週一君はバカだから気にしなかった。

代わりに綾がちょっぴり僻んだ。


『…それと、』

【初登場キャラ】

・水那方さん

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