2-19.四天王『双剣のウェキス』2
「何だ、ヤローか。わりぃけど俺はヤローには興味ないんでね。」
ウェキスはパチンと指を鳴らす。するとどっから湧いて出たのかチンパンGが2体現れた。
「チンパンG。相手してやれ。情報によるとそいつは大したことないらしいからな。」
戦闘員2名は斬れそうにないプラスチック製みたいな剣を取り出す。
これで殴ろうって腹だ。
ヒュドラが少し後ず去る。
「…多勢に無勢か。一個小隊でなければこのヒュドラを倒せんと踏んだわけだな。敵ながら…流石に切れ者だ。」
…自分に都合のいいようにしか解釈しないのがヒュドラの特徴だ。
チンパンGなんて綾や沙紀なら1分間で10体は倒せるんだけど、なぜかピンチっぽく言ってる。
事実、口先と格好ばっかでヘタレなヒュドラにとっては本当にピンチなんだけど。
これでせっかくカッコつけて助けに来たヒュドラの出番があっけなく終わる。
まあ、綾も沙紀もコイツには最初から期待してなかったから落胆はしなかった。
チンパンGが一斉にヒュドラめがけて飛び掛る。
「…日和!雑魚を片付けろ!」
ヒュドラが叫んだ瞬間、チンパンGが横から飛び出してきた何者かに吹っ飛ばされた。
「はい。分かりましたぁ♪」
そうして彼を庇うように立ちはだかったのは…どっかの高校のブレザーを着た、リバースドールだった。
「なっ!動くドール!?」
沙紀が思わず声を漏らす。
と、日和と呼ばれたリバースドールは頭を下げた。
「その節はど~も。あの後、私ぃバージョンアップして再生されたんです。で、リバースドールって怪人になったんですけど、今は新しいご主人様に日和って名前をいただいてますぅ。」
「リバースドール…?コノハが作り直したお前が何でここに…?」
ウェキスも意外そうな顔をしている。無理もない。
自分らが放った怪人がなぜかヒュドラに従っているのだ。
「ご主人様が替わったんですよ。今のご主人様は冥介様。だからこうして命令に従ってるってわけです♪」
笑顔で答えるリバースドール改め日和にヒュドラはどこから持ち出したか角材を手渡す。
「では日和、あいつの刀を破壊しろ。相手は武器を持っているが…これで五分だ。」
無茶なことを言う。
二刀流と角材のどこが五分なのだろうか?でも日和は微笑んだ。
「分かりましたぁ♪ではご主人様にいただいたこの武器で…、」
笑顔のままウェキスに向き直り、角材を構えた。
ブレザーを破って突き出してる背中の翼が軽く羽撃く。
「あなたの刀、壊しますぅ♪」
タッ!!
日和はその言葉と同時に地を蹴り、ウェキスに突っ込んだ。
顔立ちはけっこうカワイイ彼女が笑顔で角材を振り上げてる姿は何ともサイコっぽくて怖い。
ウェキスは小さく鼻で笑い、角材を刀で簡単に受け止める。
で、案の定、角材に刃が喰い込んだ。
硬度の違いはどうしようもないのだ。
「ポンコツ怪人が四天王の俺に敵うと思うのか?」
ヒュッ!!
攻撃を受け止めた刀とは別の刀を振り下ろし、ウェキスは日和の角材を叩き切った。
でも日和は構わず、笑顔のまま随分と短くなっちゃった角材を振るう。
ウェキスはその攻撃も軽くかわして刀を一閃、もう一段階角材を短くカットした。
「日和!距離を取れ!」
「はい、ご主人様♪」
ヒュドラの声で日和は後ろに跳んだ。
ウェキスとの間に5m程の間合いが開く。
角材はすっかり短くなり、もう手で握ってる部分をカウントしなければ10cm程度になってしまった。
「…俺と互角だった日和を相手にしてここまでやるとはな。流石は四天王、といったところか。」
マスクの下からでもニヒルに笑ってるって分かる声でヒュドラが言った。
同時に一生懸命短くされた服をどうにかしようとしていた綾と沙紀が落胆する。
ウゴクンジャーヒュドラと互角ってことは、ただの役立たずってことじゃん…。
なぜか仲間になってた動くドールに期待していた沙紀の落胆振りはもう、綾の比ではなかった。
頭痛っぽく頭を押えている。
「お前さ、変わったヤツだな。登場といい、根拠のないような自信と態度といい…。」
結局自分はカッコつけてるだけで何もしないヒュドラにウェキスが呆れたような声で言った。
仲間でさえ呆れるヒュドラだ。
その気持ちは分からんでもないが…。
「だがまァ、お前みたいなヤツも面白いからいいけどな。…じゃあ、今度はこっちから行くぜ?言っとくが俺は女を斬る趣味はねぇけど、人形を斬ることに関しては何とも思わねぇから。」
刀を構えて日和を見据えるウェキス。
敵意を向けられてるってのに、日和は相変わらず何考えてるのか分からない笑顔で突っ立ってる。
しかも敵を前にしてヒュドラの方に振り返った。
後ろ、ガラ空きである。
「それでご主人様、次は何をすればいいんですかぁ?」
…主人の命令がないと何もできない。
その性質は相変わらずのようだ。
ウェキスを倒せっていう最初の命令が距離を取れという命令で掻き消され、現在は指令待ちってことらしい。
ポンコツだ。
「ウェキスを倒せ!…転ばすんじゃなくて、戦ってKOするんだぞ?」
「はい、分かりましたぁ♪」
再びウェキスに向き直り、日和はもう役に立たないだろう角材を握る。
戦力としては役立たずな彼女だが刀に何の脅威も感じてないって面ではかなり使えるかも。
タッ!
またさっきと同じ攻めをする日和。
ウェキスは小さく息を吐くと、彼女の角材スラッシュを避け、刀を振り下ろした。
ザンッ!!
切断音と共に日和の右腕の肘から下が斬り飛ばされる。
でも流石は人形。
全く動じることなく、笑顔で左ストレートを放った。
「だから下っ端怪人じゃ俺には敵わねぇって。」
ザッ!ザンッ!!
ウェキスはその左腕も肩から斬り飛ばす。
ついでに右足も叩き切った。
「きゃっ!?」
可愛らしい声をあげて倒れる日和。
でもその声も笑いを含んでおり、両腕と片足をやられたってのに緊張感ゼロだ。
「日和、大丈夫か?」
ヒュドラが落ち着いた声で訊ねる。
彼女の体が木でできてるって知ってるから全然心配してないようだ。
その場を動きもしない。
日和は笑顔のまま彼の方を向いた。
「全然OKですぅ。でも、後から木工用ボンドで修理して下さいね。あ、それともう私戦闘不能なんで、さっきの命令は実行できなくなりましたぁ♪」
「悪ぃが修理はさせるわけにはいかねぇな。ダークキャン・Dから出した不始末はちゃんとつけねぇと。」
地面に転がってる日和の胸上にウェキスは刀を振り上げる。
コアを破壊する気だ。
「あ、ダメですって、そこをやられると私、壊れちゃうんですぅ~。」
それでもやっぱり笑顔は崩さない日和。
ご丁寧にピンチってことを中継した。
「ッ!!!」
これにはヒュドラも反応する。慌てて駆け出した。
「じゃあな、リバースドール。」
刀が日和の胸に真っ直ぐ突き降ろされた。




